Hulu、プライベート・ベータ開始―第一印象は良好

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去る3月、NBC UniversalとNews Corporationがジョイントベンチャーを発表した際に、われわれはYouTubeのライバルを作るつもりなのかと思った。しかし詳しい情報が出てくると、YouTubeのようなウェブ上のユーザー生成ビデオ共有サイトを作る意図はなく、2つの巨大メディア・コングロマリットの目的ははテレビ番組、映画、その他プレミアム・コンテンツをオンラインで配信するチャンネルづくりだと判明した。

最初のプレスリリースから数ヶ月、われわれはプロジェクトが名無しのままでいることについてだいぶ文句を言った。最後に名前がHuluに落ち着いたが、これはスワヒリ語で「差し止める」という意味だったり、会社の目的をGoogleからコピーしたり、NBC Universalのデジタル担当役員からかんばしくない評価が出たりと散々だった。

こういう批判が出た背景には、そもそも NBCとNews Corp.が諸般の情勢からみて手遅れにならないうちにHuluを船出させることができるのかどうかについての強い疑いがあった。9月になると、NBCはビデオダウンロード・サービスの開始を発表、News Corp.とのジョイントベンチャーと共食いになるのではと疑わせた。しかし先週、自分で決めた10月という締め切りを守って、プライベート・ベータ版を10月29日月曜日にスタートさせることを確認された。そしてこの金曜、CEOのJason Kilar他、Huluチームが新サービスをわれわれにデモした。

残念ながらまだわれわれ自身で直接ベータ版を試してはいないが、プレビューを見た限りでは、私はHuluのインタフェースとさまざまな機能に強い印象を受けた。しかし、私の感想を述べる前に、当初の発表から何ヶ月もたっていることでもあり、まずHuluについて詳細をおさらいしておこう。

Huluは依然としてNBC UniversalとNews Corporation2社のみによる事業である。サービスの本体はウェブサイトだ。ユーザーはテレビ番組、映画、ビデオクリップをオンデマンドでストリーム視聴することができる。サービスは無料で、視聴回数にも一切制限はない。Huluはこのほかに、AOL、MSN、MySpace、Comcast、Yahooという大手ネットワークと提携してプレミアム・コンテンツを配信するサービスも提供する。これも無料で視聴できるが、それぞれの提携先ブランドのプレイヤー内で再生される。この提携に加えて、Huluのビデオはどんなウェブサイトにもエンベッドできるし、リンクをメールで送ることもできるので、ユーザーのクチコミによるバイラルなプロモーションが期待できる。Huluのビジネスモデルは全面的に広告に頼っており、ビデオ中、あるいはその周りに広告が表示される。エンベッドと広告についてはさらに詳しく後述。

ここでHuluに「ない」ものをリストしておこう。HuluはYouTubeのようなユーザー生成ビデオの保管庫ではない。またiTunesストアのようにダウンロード販売も行なわない。Huluはプレミアム・コンテンツのみ扱う。ユーザーがビデオをアップロードする機能はない。テレビ番組や映画はHuluないし提携先のFlashプレイヤーでストリーム配信される。デスクトップやポータブル機器などにダウンロードすることはできない。NBCとNewsCorp.がプレミアム・コンテンツのみに集中しようとするのは理解できるが、(広告入りにせよ、有料にせよ)ビデオを(まだ)ダウンロードできないのは残念だ。この点については将来に期待できるかもしれない。もっともHuluチームはそういう計画についてはいっさい口をつぐんでいたが。

Huluのコンテンツだが、TV番組はFoxとNBCに加えて、Bravo、E!、FX、SciFi、Sundanceなど15以上のケーブル局から提供される。米国の映画についてはFox、Universalに加えて、金曜日に契約が調印されたSonyとMGMが近く加わる。Huluでは、独立のコンテンツ制作者から多数の短いビデオ・クリップの提供を受けていくとしている。またスミソニアン協会やプロレスのWWEなどとも提携している。全体としてHuluのコンテンツのラインナップは強力であり、ここ数ヶ月でさらに拡大が見込まれる。Huluチームは「視聴者の声を参考にどんな番組や映画を追加していくかを考えたい」としている。現在Huluで提供されている全コンテンツのリストはここをクリック

サービスの提供スケジュールについては、Huluウェブサイトが一般公開されるのは数ヶ月先になるようだ。ただし、コンテンツ自体は今週から提携サイトで公開が始るので、近々、コレクションの全部とはいかなくてもかなりの部分をAOL、MSN、MySpace、Comcast、Yahooで見ることができると期待できる。特定のビデオがいつHuluで公開されるか―またビデオの公開期間がどの程度になるか―それぞれのビデオによってまちまちとなる。ただし、一般的なルールとしてテレビ番組の場合は、通常のテレビ放映後、ハワイ時間の午前零時をもってHuluで公開される。あと一つの一般的なルールは、Huluはテレビ番組を5週間分放映するまで配信を続ける。その後は一番古い回から順次削除されることになるようだ。

この点がHuluの最大の弱点だ。努力はしているのだろうが、いまだに「テレビ放送」の精神から抜け出せていない。Hulu
ウェブのユーザーにいまだに「放送スケジュール」を押し付けようとしている。たしかに5週間という柔軟性は与えられているものの、Webの常識からすると、5週間は十分な期間とはいえない。放送時間というコンセプトそのものが存在せず、利用可能なビデオの数が百万単位となっているウェブというメディアの世界では時間に縛られたテレビというのはまったくのナンセンスだ。Huluはビデオの公開期間を制限することでみすみす魅力を減らしている。(あるビデオクリップがいつなんどきバイラルな大ヒットになるか誰にも予想はつかないのだ)。またこのためエンベッドされたテレビ番組は、ある期間がたつと機能しなくなってしまう。同様に映画や短いビデオクリップも一定期間(そのスケジュールは予測できない)のみ公開されることになるようだ。Huluチームは要望の多い映画を随時追加していくよう試みるとしている。Huluでは新作だけなく旧作も公開するが、スタート当初提供されるのは10本のみ。

さて、次にいよいよ、Hulu.com自身のデザインと機能を説明しよう。第一に、機能の提供は完全にブラウザ・ベースだ。つまりFlashプレイヤー(これは多くのユーザーがすでにインストールずみだろう)以外、一切追加ソフトウェアのインストールは必要ない。Huluは実際のコンテンツに注意が集中できるシンプルな優れたユーザー・インタフェース・デザインの開発に成功している。トップページには力を入れている番組の特集、人気番組、人気クリップ、最近追加されたビデオなどが掲載される。ユーザーはトップページからHuluの全コンテンツを検索できる。サイトの別のページでは、公開されている番組のリストが提供され、番組シリーズ、局、映画会社、アルファベット順、人気順などさまざまな切り口でビデオを一覧できる。登録ユーザーは自分のプロフィール・ページにビデオのプレイリストを作ることができ、視聴履歴をチェックすることもできる。プレイリストと視聴履歴はRSSを通じて公開、配信することも可能。これに加えて、 Hulu.comとしては目一杯のソーシャル機能ということなるが、ユーザーレビューをビデオページの下部に投稿することもできる。

ビデオはユーザーの接続環境によって480kbpsか700kbpsで配信される。Huluは年末にリリースされるAdobeのFlash Player9.2に対応した、より高画質な配信を行なう準備を進めている。Huluのビデオプレイヤーは最近エンベッド可能なプレイヤーの基本的な機能を一通り備えている。メールによる共有、エンベッド用HTMLコード、ビデオの詳細情報、フルスクリーン・モード、シークバー、音声ボリュームなどだ。さらに、Huluに直接フィードバックを送信できるボタン、ビデオを独自のウィンドウに入れるボタン、再生しているビデオ以外の画面を暗くして見やすくするボタンなどが装備されている。しかしこのプレイヤーでいちばん便利な機能は、ユーザーがビデオの好きな部分を選択して友達と共有したり自分のサイトにエンベッドできたりする点だろう。エンベッドされたビデオはオリジナルに比べて多少機能は制限されているが、そいれでもユーザーはエンベッドされたビデオからさらにエンベッドを繰り返すことができる。これはクチコミによるバイラルな拡散にきわめて効果的だ。(ついでに低画質のYouTubeでの共有、視聴を防止する意味もある)。しかしエンベッドされたビデオが削除されたり、勝手に他の内容に置き換えられたりした場合、抗議がHuluに舞い戻ってくることになるにちがいない。

最後に、Huluの広告計画についていくつか重要な情報がある。われわれ自身で試していないので、広告がどの程度うるさいものになるか直接証言はできないのだが、Hulu側では今のテレビCMよりずっと控えめなものになるとしている。広告の表示方法は、ビデオの周囲に表示されるバナー広告、ビデオ画面の下部にスーパーされるテキスト広告、ビデオの冒頭、再生中、最後に挿入されるビデオ広告などいくつか用意されている。短いビデオの場合オーバーレイとバナーが主力となり、長い本編作品などの場合はビデオ中のCMが主力となるようだ。Huluによると長い作品の場合、ビデオ表示時間はテレビ放送の場合に比べて大幅に減る、おそらく25%程度の時間になるとしている。つまり30分についてCMの放映時間は、テレビの場合8分なのが、わずか2分ということになる。これが事実ならHuluは視聴者にとってTVよりずっと快適になる。とはいえ、従来Webでビデオを見慣れていたユーザーにとってはこれでもCMが多すぎると感じられるかもしれない。どの程度わずらわしく感じられるか、われわが番組や映画を再生して直接体験してみないと判断はできない。広告はビデオがHulu.co内か否かを問わず、どこで視聴しても表示される。広告はHuluから提供され、提携サイトは収入の分配を受ける。

下にさらにいくつかHuluのスクリーンショットを掲載した。Webexでのキャプチャーなので画質はあまり良くない。

アップデート:Huluのビデオは少なくとも一つの提携先、AOLですでに提供されているここをチェック。ただしアメリカ以外の地域の居住者は視聴できないらしい。われわれのライター、Duncan Rileyはオーストラリアに住んでいるが、AOLでHuluビデオを見ようとしたらこのエラーメッセージが出た。〔訳注:日本でも同様のエラー・メッセージが出て視聴できない。〕

Crunchbase hulu

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