カラカニスは正論だ。スタートアップは正しい人材を雇え―最後の1セントまできっちり眼を光らせろ

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昨日(米国時間3/7)、Mahaloのファウンダー、Jason Calacanis(情報開示:TechCrunch40のパートナー)が「スタートアップ経営で金を節約する方法」という記事をブログに書いた。まあ叩かれたのなんの。ブロガーたちが彼を一斉射撃だ。たとえばここここここ、それから特にこれだ。

わがDuncan RileyもCalacanisを批判した記事を書いて、そこにもコメントの嵐が吹きつけてきた。彼は他の記事とは違ってユーモアをまじえながら穏やかに主張を述べたが、この問題での彼の見解がCalacanisに批判的であるのははっきりしている。

しかし、私はDuncanやCalacanisを批判する記事を書いた人たちには同意できない。TechCrunchのライターはそれぞれ完全な論説上の自由裁量を持っており、私がDuncanに全体のトーンや内容を変えるように依頼することはない。それでも、これはベンチャービジネスというカルチャーにとって重要な問題で、さらに議論を発展させる必要があると思うので、私はあえて自分自身の考えを明らかにしておきたい。

どうやらCalacanisの主張のいくつかは、急いで書き飛ばしたものだったようだ。例えば「仕事中毒者以外はクビにしろ」(彼はあとで「自分の仕事が好きでない人間はクビにしろ」に変更している。)などがそうだ。「テーブルは安いのを、椅子は高いのを買え」というアドバイスなど特に物議を呼ぶようなものではない部分も多い。全体として、もし彼が自分の書いたものを投稿前にほんの数分でもチェックしていたら、読者の反応は100%違ったものとなっただろう、という印象を私は受けた。

彼の17箇条の主張をいちいち吟味するつもりはない。同意できるものもあり、できないものもある。それでも、彼のメッセージの真意(あるいはそうであるべき)については意見を述べておきたい。

スタートアップはそれに向いた正しい人材を雇わねばならない

適切な人間を雇えなかったらスタートアップは失敗する。たぶん失敗するとか、失敗するかもしれない、などというものではない。必ず失敗する以外ないのだ。

スタートアップに向いた正しい人材を選ばねばならない。特に最初の何人かは完璧な選択でなくてはいけない。これこそ一番大事なことだ。開発しようとしているサービスそれ自体、ビジネスモデル、その他あらゆることより大切だ。完璧なチームなら、少々間違った製品、マーケティング戦略、競争戦略などから出発しても立て直すことができる。だから一流のチームというのは何度も何度も同じメンバーで仕事をする傾向がある。ある場合にはまだ実際に何をやるか決まっていなくても会社を立ち上げてしまうことさえある。

正しい相手を雇い入れを行う上で一番重要なのは、ダメな人間を雇わないことだ。正しい相手を探して雇うことはその次、2番目に来る。つまりどういうことかというと、正しい人間を見つけられなかったら、人を雇うなということだ。福利厚生やら休憩時間やらその他従業員をちやほやする施策をいくら並べてもスタートアップ自体が失敗しては何にもならない。

ではどんな人間が適性のある相手で、どんな人間がダメな相手なのか? 見分けるのは別に難しくない。正しい相手は本当に働きたくてたまらない人々だ。チームに加われることで興奮している様子を見るだけでも判断がつく。 こういう人々は積極的に問題を探し出し、解決する。こういうのは持って生まれたパーソナリティーのタイプだから、ひとたび探す気になりさえすれば、そういう相手が存在すればすぐにそれと分かる。彼らは眼にぎらぎらした光をたたえた「戦士」である。

私はいつだって経験を積んでいるが温和は候補者よりこうした眼のぎらぎらした戦士を取る。技術というのはすぐに覚えることができる(いくつかの特殊技能が必要なポジションではそうもいかないが。若いスタートアップにとってはこの種の相手は開発エンジニアということになるだろう)。しかし何があろうと断固として仕事をやりぬく気構え、性格というのは後付けでなかなか注入できるものではない。

採用面接のときに警戒すべき兆候には次のようなものがある。肩書きのようなステータス・シンボルに無闇にこだわる人間、他人の成功をねたむ人間、話し合ってやっているのを恩に着せるような態度の人間。サラリーについては際限なく注文をつけるが、ストックオプションにはあまり興味を示さない人間。

ダメ社員を雇ってしまうと、単にその社員が働かないだけではすまない。会社全体が毒されてしまう。誰もがプロジェクトを期日に間に合わせようと必死になっているときに、ふてくされた人間が1人でもいて、夜遅くまで働くことを頑なにこばめば、全社員の士気が下がる。こういう空気はガンのように全社に広がっていく。

なにも私は従業員を鎖でデスクに縛っておけというのではないし、24時間ぶっ通しで働かせろとも言っていない。私が言いたいのは、スタートアップを成功させるためには、言われなくてもそれが好きだから24時間働くというタイプの人間を雇わなくてはダメだということだ。もし新しい製品をローンチしたくて、しかも最終的には資金豊富な大企業を打ち負かしたいというのであれば、開発チームには超人的な努力が必要になる。Googleの初期の社員が残業が多いなどと文句を言ったとは思えない。(そもそもなぜGoogleが従業員のために無料のランチ、無料の夕食を提供しているのか?)

読者がこういう話が腑に落ちないとしてもそれはそれでかまわない。単に私生活と仕事の適切なバランスを心得た、圧倒的多数派の市民に属するというだけのことだ。それが悪いわけではない。ただ限られた資源を利用して、無我夢中で働くオールスター軍団によってひたすら成功を目指すスタートア
ップのような職には不向きだというだけだ。

簡単に言えばこうだ。スタートアップにとって、居心地よくぬくぬくしてもらいたいのはユーザーと顧客だけで、従業員にぬくぬくとしていてもらっては困る。従業員は勝つ意思に燃えていてもらわなくてはならない。彼らが戦士であれば、ファウンダーを尊敬し、理解し、深夜であろうと明け方であろうと、ついてくるだろう―歴史の一ページに名を刻み、ストックオプションで大金を儲けるために。

一文もムダ使いするな

スタートアップには金をムダにする余裕はない。ムダ使いしているようでは、失敗する。上で言ったように、たぶんでもかもしれないでもなく、必ず失敗する。

まず第一に、絶対にオフィスに金をかけてはならない。秘書とかアシスタントとかを雇おうなどとは考えるのもいけない。ビジネスクラスで飛ぶのもご法度だ。ホテルでは相部屋にしろ。電話なんてものも要らない。皆どうせ携帯を持っているんだし、Skypeだってある。401kプラン? ハァ? 冗談じゃない。3週間の夏休みなんてのもナシだ。なぜ金をムダ使いできないかといえば、1ドル1ドルが会社をやっていく時間を買ってくれるからだ。会社を黒字化するか投資家にさらに金を出資するよう説得するのに成功する前に金を使い果たしてしまえば、それで一巻の終わりだ。

もちろん「安物買いの銭失い」になってはならない。エンジニアのために必要なハードとソフトはきちんと揃えなければならない。従業員の携帯電話料金を肩代わりするのもいい考えだ。(経費の償還は会社の税金にも従業員の所得税にもメリットがある)。ビジネスチャンスを広げるようなカンファレンスには出席しなければならない。(しかしできればタダで入れる方法を探せ)(…TechCrunch40以外、という意味だが)

もう一つ。会計士と弁護士に1ドル1ドル細かく見ていることをいつも知らせておくように。電話をかけるときには必ず費用の話をするのを忘れるな。そうしておけば連中が請求を水増ししてくる可能性が大いに減る。しかし同時に彼らに自分たちが成功すれば、ベンチャーキャピタルから資金を導入したり、買収されたり、その他多くの契約を結ぶようになったり、結局多額の手数料が取れる存在になるということを思い起こさせておくことも重要だ。自分たちはパートナーであって、便利なATMではないのだと印象づけておく必要がある。

いまひとつ、経験からの忠告がある。スタートアップが最初の大型ラウンドに成功して資金を調達したときが、実はスタートアップが一番危ない瞬間なのだ。新しい投資家は結果を求める。事業を拡大しろ、マーケットを独占しろ云々と言ってくる。

たいへん多くのスタートアップが、調達した資金をあまりにもくだらないことに使ってしまう。必要もないのに人を雇ったり、広いオフィスに移ったり、そういった諸々だ。信じがたいことだが、わずか20万ドルでローンチした会社が、500万ドルの資金を調達したとなると、なんと毎月20万ドルを使い始める。そして不適当な人間を雇ってしまい、結果、チーム全員の士気をめちゃくちゃにしてしまう。大金を調達したら、ますます金の使い方に細心の注意を払わなければならない。

なにもかも限界まで押し進めてみることだ。金はできるかぎりゆっくり使うこと。売り上げはすばやく、断固として回収すること。絶対に給料を遅配させないこと。

これらのことを全部守れたら、成功の確率は大いに上がる―そこそこの成功なら10に2つくらいは期待できるだろう。そして10に1つは本物の成功を収められるかもしれない。何度も言うが、こういったことが守れなければ、必ず失敗する。

〔注:原文には現在180以上のコメントがついている。ほとんどがArringtonの意見に賛同している。#157にMahaloの従業員から「実に働きやすい会社で待遇もよい。家族と過ごす時間も十分配慮されている」との長文コメントあり。〕

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(翻訳:Namekawa, U)