帝国の逆襲―Microsoft Live Searchのキャッシュバック・プログラムを分析する

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今日(米国時間5/22)、Microsoftは検索広告の課金モデルを「クリックあたり単価 cost-per-click (CPC)」から「成果あたり単価cost-per-action (CPA)」に変えたうえに、その広告をクリックした購入者にもキャッシュ・バックするという新しいLive Search Cashback プログラムを発表した。反響はさまざまだが、その多く否定的で、中には必要以上に攻撃的な論調もみられた。私はBill Gatesの発表を聞いた後、自分でこのサービスを使って何回か買物を試してみた。その結果、私の意見はこうなった―これはまさしくGoogleののど笛に食らいつくような大胆なアプローチであり、マイクロソフトの検索市場シェアを大きく改善する可能性が十分ある。

以下に詳しく分析を述べる。まずキーポイントから。今までGoogleの検索市場での優位は拡大するばかりで、過去にMicrosoftが実施してきたさまざまな策はGoogleの成長を妨げるためにどれひとつとして功を奏さなかった。これに対して今回の新しいアプローチは、捨て身の戦術ともいえるが、画期的である。捨て身、というのはMicrosoftは検索広告の市場シェアを獲得するために、そこからあがる収入の大部分を犠牲にするつもりだからだ。画期的というのは、もともとMicrosoftの検索広告の売り上げ自体がごく小さいので、それを失ったところでさしたる損害ではないのに対して、Googleの事業の核心に大きな打撃を与えるものになっているからだ。

いくつかの数字

Microsoftはそもそも、かなりドラスティックな手段を取らないかぎり検索マーケットでシェアを奪回することは難しかった。 アメリカで3位とはいえ、シェアは全体の9.1%に過ぎない。6ヶ月前には約9.8%だった。これに対してGoogleは61.6%で、かつ成長を続けている。

まず検索マーケットのシェアを得ないかぎり、Microsoftが検索による収入のシェアを得られないことは明らかだ。さらにこれはパイを仲良く分け合うような話ではない。このマーケットは勝者独り占めのゲームなのだ。検索で9%のシェアがあることは検索収入でMicrosoftが9%を得られることを意味しない。とうてい、それどころではない―ほとんどのウェブサイト運営者は皆最初に広告ではGoogleと提携する。したがって広告主は望ましい広告スペースを得るためにはGoogleを使わざるを得ない。そこでGoogleの検索キーワード・オークション・システムを通じて、きわめて健全な競争原理が働き、Googleの広告料金は押し上げられる。Microsoft(に限らず、Yahooその他全員)は単にGoogleより検索される回数が少ないだけでなく、検索1回ごとに得られる収入もはるかに少ない。

ではこの広告収入の額はどれくらいなのか? 現在、全世界でのオンライン広告市場はおよそ$40B(400億ドル)台だ。これが2010年までに$80B(800億ドル)に成長するという予測が出ている。このうち検索広告の比率は大きい―約40%だ。つまり今日は$16B(160億ドル)だが、2010年までに、$33B(330億ドル)に成長することになる。この検索収入の分野で現在Googleが圧倒的に巨大な部分を押さえている。

現在のMicrosoftの収入の中核はWindowsとOfficeだが、こういったデスクトップ・ソフトウェア製品の今後の売り上げの見通しは明るくない。Googleの売り上げは現在、年間$20B(200億ドル)だが、このままの勢いなら、近くMicrosofの売り上げ(現在、年間$50B(500億ドル))を抜く だろう。

90年代末ごろ、MicrosoftのOSとOfficeによるマーケットの独占がどれほど恐れられていたか、読者は覚えているだろうか? 長期的に見るとはるかに巨大な検索広告というマーケットで、現在Googleがまさにそういう地位を築いている。

どうやってGoogleに対抗するか

テクノロジーの改良だけでGoogleの優位を揺るがすことはできない。Microsoftは2006年にAdCenterの改良で 、Yahooは昨年のPanamaでそれを試みた。しかしGoogleの支配は強化される一方に終わった。

つまりMicrosoftは新しいソフトウェアを開発し、クリック単価(CPC)モデルを改良するだけではすまない。CPCモデルをCPAモデルに変えるだけでも十分ではない。Googleやライバルもそれはすでに実験中だ。そこでMicrosoftは広告主にとってリスクの低いCPAモデルを採用するのに加えて、ユーザーにキャッシュバックするという大胆な直接的アプローチを採用した。

現在このプログラムはオンライン通販(eコマース)だけに適用される。しかしはっきり言って、これがいちばん重要な部分なのだ。通販関係は検索全体の3分の1を占めるだけだが、この3分の1が全検索売り上げの80%を生んでいる。通販検索のシェアを押さえれば、売り上げのシェアも獲得することができるのだ。さらに興味深い数字がある。オンラインでの商品購入の68%は検索エンジンか商品比較などのショッピング・サイトから始まる。通販サイトそのものへの訪問から始まる購入は30%に過ぎない。

うまく行くか?

答えはイェスだ。もちろんうまくいくだろう。そしてほぼ間違いなくMicrosoftの検索シェアを拡大する、特に通販関係のシェアを伸ばすだろう。問題は、それでどれぐらいうまくいくのか、という点にかかってくる。

1年前にMicrosoftは実質的にこの「Live Search CashBack」の実験を「Live Search Club」という名前で行っている。これは懸賞を出すことで検索をMicrosoftのLiveSearchに呼び込もうとするものだった。このときMicrosoftの検索シェアは1ヶ月で10.3%から13.2%へと、ほとんど30%もアップした。今回のLive Search CashBackはユーザーにキャッシュバックするという、はるかにストレートはアプローチなので、これより好結果が期待できるだろう。

それに加
えて、Microsoftにはこの戦略で失うものはほとんどない。Microsoftの検索広告からの収入は言うに足りない額にしかなっていない。それどころか、DiggやFacebookに対する広告料金保証の広告受託契約は巨額の赤字になっている。その結果オンライン部門は全体で$2.4B(24億ドル)の収入に対して、驚くなかれ$1B(10億ドル)の損失を出しているのだ。新しいモデルはたいして収入をもたらさないかもしれないが、赤字も出さない。状況が最悪だと、かえって捨て身の作戦が取れるようになる、ということもあるのだ。

私は今日さっそくLive Search Cashbackを使って買物をしてみた。Microsoftのシステムは、検索結果に価格とキャッシュバックの額を含めてきちんと表示した。実際に購入すると私のキャッシュバックアカウントに約束の額が即座に加算された。たいへんスムーズなオペレーションで、使い勝手は最高だった。そういう次第で、私は他の専門家とまったく違う結論に達した。


Google vs. Microsoft

Live Search CashBackプログラムを見たとき最初に思ったのは、これはMicrosoftがGoogleの痛いところを突いたな、というものだった。つまりGoogleが無料のオンラインOfficeドキュメントを提供することでMicrosoftの痛いところをついているのとちょうど逆の関係になる。GoogleはGoogleドキュメントで大して金を稼いでいない。しかしこれがMicrosoft要塞の収益事業の中核を脅かしていることは間違いない。

似たようにMicrosoftはLive Search Cashbackプログラムでは、収入の大部分をユーザーに還元してしまうので、大金を儲けることはできないだろうが、それでもGoogleの急所―通販関連検索―にしっかり打撃を与えるものになっている。しかもこの影響は世間が考えるより大きく、速く現れる可能性がある。GoogleドキュメントはOffice製品に対して将来の潜在的脅威に過ぎないのに対して、LiveSearch Cashbackは、今日ただちにGoogleのポケットからなにがしかの売り上げを奪うものだからだ。

そこで疑問は、先ほど私が指摘したように、Googleのポケットからいったいどれほどの額の金を奪えるのかということになる。これは正直まだ分からない。しかしMicrosoftはこれは来るべき「検索戦争」の第一段階だと明言している。近い将来、この戦争が激烈なものに発展していくことは間違いなさそうだ。

[原文へ]

(翻訳:Namekawa、U)

“帝国の逆襲―Microsoft Live Searchのキャッシュバック・プログラムを分析する” への10件のフィードバック

  1. pligg.com より:

    TechCrunch Japanese アーカイブ » 帝国の逆襲―Microsoft Live Searchのキャッシュバック・プログラムを分析する…

    うまく行くか?答えはイェスだ。もちろんうまくいくだろう。そしてほぼ間違いなくMicrosoftの検索シェアを拡大する、特に通販関係のシェアを伸ばすだろう。問題は、それでどれぐらいう…

  2. […] サーチ界の教祖的存在Danny Sullivanが、Gillmor Gangの長時間に渡る昨日のMicrosoftによる新たなる検索の第一歩「Live Search Cashback」に関するディベートに参加した。今週はじめのプロダクトの始動を見て、且つ直接テストした後で、私はこのプロダクトに対してほぼ好意的な立場だ。Sullivanは それほど好意的ではない。 […]

  3. […] 帝国の逆襲―Microsoft Live Searchのキャッシュバック・プログラムを分析する […]

  4. it-bookmark.net より:

    TechCrunch Japanese アーカイブ » 帝国の逆襲―Microsoft Live Searchのキャッシュバック・プログラムを分析する…

    今日(米国時間5/22)、Microsoftは検索広告の課金モデルを「クリックあたり単価 cost-per-click (CPC)」から「成果あたり単価cost-per-action (CPA)」に変えたうえに、その広告をクリックした購入者…

  5. […] 利用者のプライバシー情報に対して対価を支払うと彼が言うのは、文字通りの意味だ。プライバシーに関してGoogleとマイクロソフトのどちらを信用すべきだろう。個人的にはどちらかを信頼すべきなのかもわからない。 […]

  6. […] 失笑を買ったりもしたマイクロソフトのLive Cashback検索のことを、勝者であると宣言するにはデータが足りない。しかしComScoreのデータによると、サービス開始後の丸一ヶ月(6月)で前月比15%増の検索ボリュームとなった。これで先月の減少分を補うこととなり、マイクロソフトの検索市場シェアは全体の9.2%となった。 […]

  7. […] SearchPerksはマイクロソフトが前に発表したLive Search Cashback(キャッシュ還元)プログラムとでは検索利用確保のアプローチが全然違う。前のCashbackは同社の取り組みの重点をクリック単価モデルからアクション単価モデルに移行し、広告主からユーザーにお金の一部を届ける試みだった。 […]

  8. […] マイクロソフトが何かと話題のLive Searchキャッシュバックプログラムについて最新のデータを公開した。このプログラムは、掲載される広告をクリックして商品を購買した場合にキャッシュバックするというもの。ROIの観点からすると効果が上がっているようだ。他の検索エンジンと比較して広告に対するレスポンスは向上している(キャッシュバックしているのだから当たり前とも言える)。より重要なのは、マイクロソフトの広告分野における相対的に低いシェア(この新プログラムにも関わらずシェア自体は大いに低下している)にも関わらず、広告費用面でのシェアが向上しているということだ。 […]

  9. […] 尚、Live Cashbackは2008年5月にスタートした、購買者にキャッシュバックを行うというサービスだ。 CrunchBase Information Microsoft Information provided by CrunchBase […]

  10. […] 昨年、マイクロソフトはLive Searchキャッシュバックプログラムをスタートさせ、表示している広告をクリックして製品を購入することに金銭的なインセンティブを与えた。Googleからシェアを奪い取るための捨て身の攻勢とも見えるもので議論を呼んだ。 […]

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