ソーシャル・ネットワーク・サービスの本当の市場価値は?

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MySpaceの価値は$3B(30億ドル)なのか? それとも$20B(200億ドル)なのか? これはユーザーの価値をどう評価するかにかかっている。

われわれは世界的な巨大SNSの価値をページビューとユニーク訪問者だけで計ろうとするのをそろそろ止めるべきだと信ずる。SNSのメンバーの価値は、その居住国のユーザー1人当たりのインターネット広告費で計るのが効果的だと思う。1人当たり広告費が高ければ高いほど、SNSが広告費や商品の販売などで稼げる額も大きくなるはずだ。ということは、現在のところ、見込み収入の算定にあたって、1人当たり広告費が高い、いくつかの国が非常に重要な役割を果たすことになる。

そこでわれわれは、まず国/地域別のSNSのユーザー数とその地域でのインターネット広告費の総額のデータを収集して比較することにした。これによって、リンゴとオレンジをいきなり比較するのではなく、リンゴとリンゴを比較できるようになるはずだ。

一方で、あらゆる資産の最終的な経済的価値は、結局のところ、市場がそれに対して払おうとする価格だ。しかし、この点に関してわれわれはほとんど参考になる数字が得られない。FacebookBeboLinkedInは比較的最近、それぞれ$15B(150億ドル)$850M(8億5千万ドル)$1B (10億ドル)と評価された。(ただしBeboだけは、その価格で実際に買収されたが、FacebookとLinkedInの評価額は資金調達ラウンドの基礎となった推計に過ぎない)。MySpaceの最新の評価額は2005年にNews Corp.に買収された際の$580M(5億8千万ドル) でしかない。

これらの評価額のどれがいちばん正確なのか? 今のところ得られるデータといえば、comScoreその他のサービスから得られるページビューとユニーク訪問者の数だが、そのような統計だけを元に推測するのは非常に困難だ。たとえば、全世界ベースでのユニーク訪問者数では、Facebookは最近MySpaceを抜き、世界一となった。

世界でのユーザーの実数でいえば、最大のSNSはFacebookで、以下Myspace、Hi5、Friendster、Orkut、Beboの順となる。しかしわれわれが採用したユーザーの居住国を考慮して重みづけするモデル(下に示した)では、この順位は大きく変わってくる。このデータによるとMySpaceが群を抜いて価値のあるSNSということになる。OrkutはMySpaceの4分の1近いユーザー数だが、経済的価値20分の1しかない。

適切なSNSの順位づけ

われわれのモデルは、可能なかぎりの国/地域についてComscoreのデータを利用している。 26の有名SNSについてできるだけデータを収集し、グラフ化した。次にそれぞれの国/地域でのオンライン・ユーザー1人当たりの広告費を計算した。(元データはPriceWaterhouseCoopersの最新レポートを利用)。たとえば、アメリカでは2008年のインターネット広告費の総額は$25.2B(252億ドル)と推計されている。これをcomScoreによるアメリカの全オンライン・ユーザー数(1億9100万人)で割る。するとユーザー1人当たりの平均広告費は$132となる。統計の元数字と計算処理はこちらを参照

ちなみに、1ユーザー当たり広告費では、アメリカは世界で4位にすぎない。1位はイギリス($213)、続いてオーストラリア($148)、 デンマーク($144)の順となっている。

次に個々のSNSについて、それぞれの国/地域ごとのユニーク・ユーザー数にその国/地域の平均広告費を乗じた。つまり地域別の平均オンライン広告費によって重みづけしたSNSの価値を算出したわけである。アメリカ、日本、イギリス、オーストラリア、ドイツ、その他平均広告費が高い国に多くのユーザーがいるSNSはそれだけ高い評価額を得られることになる。

われわれはこの方法がさまざまなライバルSNSの経済的価値を適切に比較する方法だと考えている。これによればOrkutやFriendsterのように平均広告費がきわめて低い地域に何千万ものユーザーがいるSNSの価値は相対的に低くなり、逆に平均広告費が高い地域にユーザーを持つSNSの価値は高められる。

このモデルによると、MySpaceが群を抜いて高価値なSNSということになった。第2位はFacebookで、(ユーザー数ではすでにMySpaceを抜いているにもかかわらず)MySpaceの75%の価値だった。以下Bebo( MySpaceの26%)、Hi5、Amebioの順。LinkedInは第11位で、MySpaceの6%の価値だった。

評価額の幅

現在発表されている大規模SNSの現実の収入の順位はわれわれの評価モデルによる順位によく合致する。収益化の成功はユーザーの居住地域に直接の関係があることがはっきり分る。MySpaceは昨年$755M(7億5500万ドル)の収入を得ている。(今や)それより大きくなったFacebookはユーザーの多くが平均広告費の低い地域にいるため、今年の収入が$265Mと推計されている。

EMarketerの推定によると、MySpaceは2008年6月30日に終わる会計年度において$755(7億5500万ドル)の収入を得る。MySpaceはこの推定についてコメントを避けている。Googleとの広告提携による収入が約3分の1を占めるものと予想されている。今年のFacebookの収入は、広告料金による$265(2億6500万ドル)と推定される。

上で述べたように、最近のSNSの評価額として3例がある(Facebookが$15B、Beboが$850M、LinkedInが$1B)ので、われわれのモデルにこの評価額を当てはめてみよう。Facebookの評価額$15B(15億ドル)をわれわれのモデルによる重み付け評価点(valuepoint)、すなわち10.2M(1020万)で割ると、評価点あたり評価額は$1,467となる。同様に計算すると、LinkedInも似たような額で、$1,325となる。これに対してBeboは広告費の高い英国マーケットに多くのユーザーいるため、相当に割安に評価されており、$241となる。

公にされた3つの評価例を元に、他のトップ25のSNSの価値を評価してみた。ここには非常に大きなバラツキがあることが見てとれる。(たとえば、MySpaceは、どの評価例を採用するかによって、$3.3B(33億ドル)から$20B(200億ドル)までの幅がある)。しかし得られたデータはたいへん興味深い。たとえば、もしFacebookとLinkedInがBeboなみに評価されたとすると、それぞれ$2.5B(25億ドル)、$182M(1億8200万ドル)となり、最近投資家が株を取得したときのベースとなった評価額にくらべてはるかに低いことがわかる。

面白いことに、最近のポーランドのSNS、Nasza-klasaが$92M(9200万ドル)で買収されたのは、実はBeboベースの評価モデルにきわめて近い。Beboの評価をベースにわれわれのモデルで評価額を計算すると、$91M(9100万ドル)となり、実質的に同額といってよいほど近い。

ただしわれわれの分析とモデルにも、現状では、まだ大きな欠陥がある。第1に、LinkedInの場合、ユーザーは全てビジネス・プロフェッショナルなので、他のSNSとはまったく異なるジャンルと考えるべきだろう(Facebook名物の「poke」などでふざけて遊ぶユーザーはいない)。その結果、ユーザーがどの国の居住者であるにせよ、ライバルのSNSにくらべてはるかに大きな購買力が想定される。しかし、そういった問題点に留意はするものの、われわれはやはりLinkedInの評価額もデータポイントの一つとして採用することにした。

このモデルにはもっとデータが必要である。ユーザー数は4月のComscoreの発表に基づいている。われわれは近くこれを5月のデータにアップデートするつもりだ。しかしおそらく絶対的な順位には変更が出ないだろう。さらに重要な点はいくつかの大きなマーケットの情報が含まれていないことだ。たとえば、中国の2008年のインターネット広告費は、$2B(20億ドル)と推定されているが、これはわれわれのモデルに含まれていない。(主な理由は中国における各SNSユーザーの数が判明しなかったからだが)。またフィリピンも信頼できるデータが不足していたためモデルに算入されていない。(ただし、フィリピンのネット広告費の総額はわずか$3M(300万ドル)なので、いくらFriendsterが当地で強いといっても実質的な順位に影響はないはず)。最後にロシアだが、現在は「その他のヨーロッパ」に一括されている。これも別途にカウントされる必要があろう。最近、オンライン広告マーケットもユーザー数も急増しているので、ロシアのデータをアップデートすると、中位のSNSの順位に変動が出る可能性はある。

われわれが用いた広告費ベースのモデルは、やはり一つのモデルであり、ベースとなる広告費のデータも単一の情報源にたよっている。もし広告費の推計が非常に正確であれば、ユーザー数のデータはモデルにそれほど大きな影響を与えないとして安心できる。しかし逆に国別広告費のデータが誤っているようだとこのモデルは崩壊してしまう。さらに正確な国/地域別の平均広告費のデータが得られ次第モデルをアップデートするつもりだ。しかし当面、PriceWaterhouseCoopersのデータは十分役立つのではないかと考えている。

最後に、このモデルは個別の企業努力を計算に入れていない。他の面でほとんどそっくりな2つのSNSが、広告戦略の違い、あるいはもっと単純に営業マンの熱意の差で、売り上げがまったく違う結果になることは十分あり得る。もちろんこのモデルではそういった点はまったく考慮に入っていない。

最後に、先週発表されたAndrew Chenの分析についても触れておきたい。この分析ではComscoreデータの代わりにGoogle Trendsのデータが用いられているが、分析の手法はわれわれのものに似ている。しかしGoogleのデータはSNSの相対的価値を決定するのに使うには肌理がが荒すぎると思われる。またChenはインターネット広告費に関する詳細な情報が利用できなかったようだ。それでも彼の方法論には基本的に賛成だ。

私がこの記事の最後で書いたように、今やSNSの相対的価値を判断するには現在のユーザーの相対的な財政価値を考慮に入れる必要がある。単にユーザー数だけを比較しても無意味だという点に注意すべきだろう。

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(翻訳:Namekawa, U)