[IT] Web 3.0へようこそ。データセンターが君のコンピュータだ

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Kindleのビジネス評価はウナギのぼり

本記事はsalesforce.comの社長兼CEOのMarc Benioffによるもの。彼は2007年のErnst & Young Entrepreneur of the Year、SDForum Visionary Award、南カリフォルニア大学のMarshall Schoool of BusinessのAlumni Entrepreneur of the Yearなどを受賞し、またeWeekの「Top 100 Most Influential People in IT」にて7位にランクされるなど、イノベーション分野のパイオニアとして広く認知されている。


この十年、我々はクライアントサーバモデルからSaaS(software as a service)モデルへの決定的な移行を目にしつつある。Google、eBayおよびAmazon.comは消費者向け市場におけるマルチテナントのあり方を確立した。またsalesforce.com、Googleその他はマルチテナントのモデルが企業向け分野でも有用であることを証明しつつある。

ウェブベースのアプリケーションへのシフトは、二つの力強い波を生み出してきた。我々は現在、第三の波を目にしつつある。Web 3.0と呼ばれるもので、もっとも重要で、従来のソフトウェア産業のあり方にとってはもっとも破壊的とも言えるものだ。

新たな宣伝用文句を掲げるわけではないが、従来のモデルでソフトウェア開発を行ってきたISV(独立系ソフトウェア会社)はもちろん、これからの時代の起業家や開発者もWeb 3.0の重要性と、それがもたらす可能性のある変化、混乱、チャンスについて十分認識する必要があると思われる。Web 3.0は従来のソフトウェアプラットフォームを、新たな時代の「サービスとしてのプラットフォーム」で置き換えるものだ。

Web 3.0がなにものであるかを見ていく前に、ウェブの歴史に現れた他の大きな波についても見ておく必要があるだろう。期間毎にきっちりと区切るのではなく、オーバーラップして訪れる波としてとらえるのが良いだろう。

Web 1.0: 誰も取り引きを行える時代

Web 1.0の時代というのはeBay、Amazon.com、およびGoogleなどの企業から「キラーアプリケーション」が登場した時代のこと。当初は「ウェブサイト」と認識されていたが、実際のところは機能レベルを備え、使い勝手が良く、これまで普通の消費者が目にすることのほとんどなかった規模を備えた驚くべき「アプリケーション」だった。取り引きの範囲は商品だけでなくナレッジにも広がり、ユビキタスが実現し、即決性も備わった。大規模金融取引の特徴であった効率性と透明性が、個人規模の消費者ないしビジネス分野にも浸透してきた。Web 1.0は現在でも広く使われており、しばらくの間はそれが続くだろう。

Web 2.0: 誰もが参加できる時代
Web 2.0とは、利用者の作成するコンテンツ、コラボレーション、およびコミュニティを備えたインターネット上の新世代アプリケーションのこと。誰もがコンテンツ制作に関わることができる。技術的な知識はなくとも、インターネットに繋がってさえいればYouTubeにバイラルビデオを投稿したり、Flickrの写真にタグを付けたり、Blogspotに政治のことを投稿することができる。コンテンツを外部にオープンにしておくことで、コンテンツ自体が変貌を遂げることもある。コンテンツは公開した時点で固定化されるものというわけでもなくなった。コンテンツは生き物なのだ。GoogleのAdSenseはとくにブロガー向けのわかりやすいビジネスモデルとなった。そして動画共有サイトはポップカルチャーやバイラル的なコンテンツに関するルールを改良していった。

Web 1.0ないし2.0関連の仕事を行う場合、セキュリティを完備し、信頼性が高く、稼働率の高い巨大データセンターを作るのには思い切りも資金も必要だ。これからのSaaS産業に参入する場合、多大な時間と資金力は潜在的なバリアとして存在する。さらに従来のクライアントサーバ型での開発は苦痛なほど複雑だ。また成功したアプリケーションの見返りも、面倒なソフトウェア環境のの設定やメンテナンスであったりすることもある。

Web 3.0: 誰もがイノベーションを実行できる

Web 3.0になると、従来のソフトウェア産業界に備わった技術や経済の仕組みをすべて破壊して上に述べたような枠組みをすべて変えてしまう。Web 3.0の分野から上がる鬨の声は「誰もがイノベーションを行える、どこででも」。プログラムはインターネットの雲の中で書かれ、組み合わされ、テストされ、配備される。時間とインフラにかかるコスト面の制約から解放されると、イノベーションはすぐに広がっていく。

ビジネス面で見ると、Web 3.0は従来のクライアントサーバ時代に比べると、はるかに素早く、費用対効果にも満足しつつSaaSアプリケーションの開発、配置、および発展を行うことができるということを意味する。経済面の問題が劇的に解決すれば、クライアントサーバ方式のアプリケーションにかかっていたコストおよび煩雑さからCIOを完全に解き放つことになる。

開発者にとってみると、自身の夢見るアプリケーションを制作するのに必要なのはアイデアとブラウザ、それからレッドブル(エナジードリンク)をいくつかと少量のホットポケット(サンドウィッチ)だけということになる。世界中の開発者がひとつのパワフルなネットインフラにアクセスすることができ、Web 3.0はグローバル経済を推進するものともなる。

ISVにとってみれば、動作環境に頭を悩ませるのではなく、顧客に提示したいコアバリューの部分に、一層注力することができるようになる。利用できるコードがネット内に存在し、また素晴らしい才能をもった世界中の人々が、それらのコードをサポートしている。そしてまた、作成するサービスはネットで提供することができるので、真にグローバルなマーケットを通じて提供することができる。

ヨーロッパで2番目に大きなERPベンダーであるCODAのCEOで、友人のJeremy Rocheにちょっと尋ねてみた。CODAはメインフレームからクライアントサーバモデルへの移行を無難にやり遂げたが、SaaSへの移行というより大きな変化に直面している。インフラを全面的に構築し直す(データセンターのみの話ではなく、ソフトウェアも全部準備し直す必要がある)となると$20M(2千万ドル)以上の資金と、何年かの期間が必要になる。しかしJeremyは我々のForce.comプラットフォームを使って、ジャンプスタートを遂げようとしている。CODAのエンジニアたちはホスト、ロードバランサ、ネットワークスイッチなどの組み合わせに悩む必要がなくなり、調整とメンテナンス要員を軽減することができるようになる。セキュリティを意識した共有モデル、データベースやワークフローのエンジンについて頭を悩ませる必要もなくなる。ただこちらのシステムを使えば良いだけだ。当面の間、Jeremyのチームはなすべきことに集中すれば良いことになる。すなわち経理向けのキラーアプリケーションを作ることだ。CODA2goはこの秋にリリースされ、競合の中でJeremyは大きくリードすることになる。

Amazon.com、Google、およびsalesforce.comはインフラの拡充のため、既に数億ドルを注ぎ込んでいる。またFacebook、MySpace、Ning、Rollbase、Longjump、Dabble db、Intuit、Cogheadなどもネット上で動作するある種のプラットフォームをサービスとして提供している。

価値の創造
Web 3.0はどれほどの混乱を巻き起こすだろうか。これまでの技術の流れをみておくのが参考になるだろう。

Googleの技術部門VPのVic Gundotraが、最近行われたsalesforce.comのイベントで興味深い観点を示してくれた。Vicはメインフレーム時代からのコンピューティングの歴史を、2つのグリッドを用いて振り返っている。メインフレームにおいては、巨大な計算パワーを持つがアクセシビリティは低く、資源展開は容易ながら機能性が低いという特徴を持つ。

クライアントサーバ時代においては、双方の点で正反対の特徴を持つ。資源へのアクセシビリティの面ではなかなかのものながらスコープの観点を欠いていた。また機能面は大幅に向上していながら、資源展開は悪夢のようなものだった。VicによればWeb 3.0の時代にはこのようなトレードオフ関係をなくしつつ、コンピューティングパワー、アクセシビリティを最大化し、資源配置の容易性、機能の大幅な拡充を果たす。VicによればGoogleやsalesforce.com、および他社が協力してネット環境のアクセシビリティを向上させ、プログラミングを可能とし、ネットへの接続環境を拡大し、クライアントの能力を向上させることがキーとなると言う。

我々の見るところ、メインフレームからクライアントサーバモデルへの移行はIBMやDECにとって痛手となり、マイクロソフト、オラクル、PeopleSoft、およびSAPなどの新世代企業に大金をもたらした。Web 3.0はマイクロソフトの.net、BEA、およびWebSphereにとって脅威となるだろう。一方でAmazon.com、Facebook、Google、およびsalesforce.comなどはうまく対応していくだろうと期待する。また、Web 3.0を活用する新しい、広範囲な広がりを持つ企業や起業家によって、より多くの富とイノベーションが生み出されることになるだろう。

我が社の開発者のラップトップコンピュータに貼り付けてあるステッカーが、Web 3.0というものをうまく表現している。すなわち「ぼくのコンピュータはデータセンター」というもの。いまや世界中の開発者が同じように主張し、実践することができる。そしてそれこそが訪れる革新の中身なのだ。

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(翻訳:Maeda, H)