HuluはYouTubeを超えるビジネスになれるか?

次の記事

企業内Twitter, YammerがTC50でロンチ

Googlが オンラインビデオマーケットに参入したことへの疑問の声が絶えない。一部ではYouTubeの買収はGoogleの決定の中で最悪の失敗だと考えられている。膨大な著作権侵害のケースとGoogleの財政的支援により、著作権保有者が人気ビデオサイトを訴えるきっかけを作ったとも考えられる。またGoogleがオンライン・ビデオ市場に参入して、准コンテンツ企業化したことは、せっかくブームが起きているビデオ広告市場で金を稼ぐのによい方法ではないと見方も強い。どちらにしてもGoogleは全力でオンラインビデオ市場に投資しており、その中心はYouTubeだ。

YouTubeの気の毒な事情

YouTubeはものすごく人気のあるサイトだが、Googleはここで利益を上げるのに失敗している。Googleは$1.65B(16億5千万ドル)をYouTube買収に使ったが、効果的な収益を上げることができず、投資の回収は困難な状況だ。

YouTubeの収入の現状についてはインターネット上のあちこちで推定が行われている。Forbesの推定ではYouTubeの収入は全世界で今年$200M(2億ドル)、来年は$350M(3億5千万ドル)に上る。Citiグループのアナリスト、MarkMahaneyは、Googleがバナー広告にもっと力を入れれば、来年の収入は$500M(5億ドル)に達するとみている。

しかし、YouTubeが5億ドルの収入を得る可能性がある からといって、そうなるという保証はない。それだけ稼ぐためには、YouTubeはもっと広告営業に力を入れる必要があるだろう。著作権問題などでYouTubeに掲載されるコンテンツに関して広告主が感じている不安を解消するための努力が不足している。Video IDプログラムの成功も部分的なものにとどまっている。YouTubeはサイトとしては大成功でもビジネスとして成功できるかどうかは大きに疑問符がついたままだ。

そういうビジネス上の問題点を多数抱えているものの、YouTubeは依然ウェブ上でもっとも人気のあるビデオサイトではある。アメリカでストリーミングされるビデオの34%を占めてダントツの首位だ。2位のMySpaceTVはわずか6.4%、Huluは0.7%にすぎない。(2008年5月のcomScore VideoMetrixのデータによる)。

Huluと正面対決

Huluはトラフィックの規模からいえばYouTubeの敵ではない。2008年5月にHuluが8800万回ビデオを配信したのに対してYouTubeは42億回の配信を記録している。しかしHuluはほとんどのコンテンツから収益を上げているのに対して、YouTubeが広告を売ることができたのは全体のわずか3%にとにどまる。42億の3%といえば1億2600万にすぎない。これだけが広告付で再生されているのだとすると、Huluとさして変わらない月間再生回数となってしまう。

そうであれば、HuluとYouTubeの売り上げおよび利益のポテンシャルもあまり差はないと考えてよいだろう。ある推計によると、Huluは最初の1年で$90M(9千万ドル)の収入となる。この額自体はYouTubeの今年の全世界での売り上げとして予想されている$200M(2億ドル)に及ばないが、Bear StearnsがYouTubeのアメリカ国内市場 での2008年の予想($90M(9千万ドル))とは等しい。Huluがほぼアメリカ市場のみを対象としていることを考えるとYouTubeとHuluは今年アメリカ市場でほぼ同額の売り上げを達成することになるかもしれない。

YouTubeとは違って、Huluは著作権問題のトラブルに巻き込まれる恐れがない。またユーザーが不適切なコンテンツを投稿する心配もない。つまり、これが重要な点だが、Huluのすべてのコンテンツは広告主にとってYouTubeのものより魅力があることになる。

Starcomのビデオ・イノベーションの責任者、Chris B. AllenがForbesのインタビューで語ったように、“現在もっとも勢いのあるビデオ広告の出稿先は、NBCとFoxのHulu、ABC.com、CBS.comといったネットワーク局が配信する人気番組の完全版だ。これは大手広告主が慣れ親しんでよく理解できるフォーマットだからでもあるだろう。

しかしフォーマットが親しみやすいというのは、HuluがYouTubeに対して有する利点のごく一部にすぎない。YouTubeのビデオの多くと異なり、Huluのコンテンツには、内容が穏健であり、また視聴者に関するデータが即座に広告主に提供される。(ただし、Googeも視聴者情報の提供のために、Insightというビデオ統計サービスをローンチしている)。

YouTubeが証明したことといえば、ユーザー生成コンテンツに膨大なマーケットがあることだけだ。しかしビジネスの観点からいえば、プロの制作したコンテンツこそ広告主が金を出そうとしており、ビデオサイトが経営的基盤を固めるのに重要な分野である。Huluはサイズの点ではYouTubeほど大きくなることはあるまい。Googleは巨大なトラフィックを利用することはできる。しかしHuluの強みは広告主が訴えたい視聴者の直接に訴求できるコンテンツを有している点にある。

問題の核心にはメインストリーム対ニッチの価値の比較がある。広告主は対象とする視聴者が見ていることが確実に分っている場所に広告を出そうととする。YouTubeは最近になって Family Guyの制作者Seth MacFarlaneとの提携を始め、プロの制作したコンテンツの提供にも力を入れ始めている。しかしYouTubeの場合、一部のコンテンツは広告主が決してつきそうになことを考えると、それ以外の高価なユーザー生成ビデオからどうやって収益を上げるか、YouTubeはもっと努力しなければならないだろう。

これに対してHuluはユーザーがよく知っており、全員が楽しめるコンテンツを提供することによりストリーミングビデオに流れを向かせること成功し、その勢いでビデオサイト・ビジネスとして記念碑的な成果を上げつつある。Huluのサービスは事実上あらゆる広告主に魅力的だろう。

広告主はウェブ・ビデオに大金を投じている。しかしこの急成長の成果を享受するのは誰になるだろう? eMarketerによると、オンライン・ビデオ広告市場は今年、$1.35B(13億5千万ドル)に達するが、アメリカ市場の30%を占めるGoogleは、今年はオンライン・ビデオ広告費の15%しか集めることができないだろうという。広告主が信頼できる視聴者データが得られるプロの制作したコンテンツによりいっそう多くの金を投じるようになるにつれて、Huluがますます好まれるようになっていくはずだ。

もちろん、われわれはHuluがまだ生まれたばかりだということを忘れるわけにはいかない。現状からさらに強力なブランドに成長していくためにはいろいろな障害を乗り越えていく必要があるかもしれない。しかし同時にネットワーク・テレビ局と大手ハリウッド・スタジオ―伝統的にウェブ嫌いだった組織―がHuluを通じてコンテンツをインターネットで無料で公開するようになったこと忘れるわけにはいかない。またさらに、YouTubeは著作権侵害の温床としてこうした映画スタジオなどのコンテンツ制作者にとって「公衆の敵ナンバーワン」だった(ある程度まで現在でもそうである)ことも忘れてはならないだろう。

GoogleがHuluの脅威をはねのけるためには、コンテンツを広告主にとってもっと魅力のあるものにする努力が必要だ。すべてでなくてもいいだろうが、10%のコンテンツをそうする必要があるだろう。

しかしGoogleが可能な限り速やかにプロの制作したコンテンツを強化し、ユーザー生成コンテンツの収益化についても大幅な改善を行わなければ、Huluが業界の稼ぎ頭となるための財政的基盤が確立してしまうだろう。もしかするとYouTubeより大きくなるかもしれない。すでにNBCその他は大喜びで売り上げを銀行に運んでいるというのに、Googleは四半期ごとに何百万ドルもYouTubeにつぎ込みながら、黒字化できるようなビジネス・モデルの確立に向けて苦闘しているのが現状だ。

[原文へ]

(翻訳:Namekawa, U)