Apple、レコード・レーベルと新プロジェクト “Cocktail” を準備中― クリスマスにタブレットに載せてリリースという報道の真偽は?

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439039873_e8ff5f0e41今日(米国時間7/26)、おもしろい記事がFinancial Timesに載った。Appleが主要レコード・レーベル全社と協力してアルバムの売上を促進するような新たなプロジェクトを準備しているというのだ。この記事にはさらに、Appleは大型のiPod touch、あるいは「タブレット」(まだ誰も見たことはないが、その存在はますます確からしくなっている)をクリスマス―今年のクリスマス商戦に間に合うように発表するという新たな噂も伝えている。しかしこの記事にはいろいろと矛盾が含まれている。

まずはFinacial Timesの記事を検討してみよう。記事はAppleと音楽レーベルが準備しているプロジェクト(“Cocktail”というコードネームだそうだ)と新しいタブレットを関連づけるべく行きつ戻りつしている。記事の初めの方では別々に扱っている(強調は私。以下同様)。

Appleは今年のクリスマス商戦での発売を目指して、ポータブルなフル機能のタブレット・コンピュータを開発中らしい。エンタテインメント業界はこのデバイスが彼らのビジネスに革命をもたらすものと大いに期待をかけている。

しかしその先でこう書いている。

このデバイスでは、音楽レーベルとの新しい契約に基づいたコンテンツが利用できる。説明を受けた関係者によれば、アルバムCDの長さの楽曲の販売を促進する新しいプロジェクトが進行中だという。

そこまではいい。しかし次に、こうも書いている。

レーベルとAppleは、このプロジェクトを9月中にローンチすべく交渉中だ。 このプロジェクトでは、アルバムセールスを促進すべく、楽曲にライナーノートやビデオ・クリップが付加されるようだ。

つまりFinancial TimesはAppleのタブレットは、Appleがレコードレーベルと進めているCocktailプロジェクトと密接に関連している、そしてCoctailは9月にローンチされるとしている。ところがこの記事はまたタブレットは別個のプロジェクトで、クリスマス商戦に出荷される(通常、11月下旬を意味する)としている。一方、われわれは先週、Appleはタブレットを2010年の第1四半期に出荷する準備をしているという情報をつかんだ。それで、結局どういうことになっているのか?

FTによると、プロジェクトの内容はこういうものらしい。FTが取材した音楽レーベル関係者はAppleとの新しいプロジェクトに大いに期待を寄せていたようだ。私が読んだかぎりでは、Cocktailの内容はいまいちぴんとこない(ライナーノーツがオマケについたぐらいでどれぐらい売上が伸びるのか?)が、ポイントはこういうことらしい。

「消費者はiTunesサイトを訪問しなくても、タブレット・コンピュータから直接、再生が行える」とレコード業界の幹部は語った。

picture-1210ということは、Cocktailプロジェクトはタブレット専用の機能(もしかすると iPhoneとiPodでも利用できるかもしれないが)を備えていることになる。このタブレットについてはまだ誰も見たことはなく、FTにしてもスクリーンのサイズさえ知らないのだが。

もうひとつ興味深いのは、 Appleとレコード業界は、今まで散々衝突してきた間柄だったのに、今回はえらく密接に協力しているらしいことだ。しかも、プロジェクトは―個々の曲ではなく―アルバムのセールスを促進するためだという。ところが、アルバムのセールス減少の元凶としてレコード業界が批難してきたのが、まさにiTunesの楽曲バラ売り方式だった。

しかし最近レーベル側はAppleに圧力をかけて多くの曲を値上げさせることに成功した。しかしアルバムの価格はおおむねそのまま据え置かれた。そこでレーベルは今度はアルバムからもっと金を稼ぐ方法を考えついたのだろう。Cocktailプロジェクトのアルバムには付加価値をつけて、プレミアム価格をつけるつもりなのかもしれない。

しかし、このプロジェクト、うまくいくだろうか? 読者はどうか知らないが、私だったらライナーノーツのおまけなどいらない。音楽ライブラリーのゴミが増えるだけだ。それにiTunesにはすでにボーナストラックやビデオ・クリップなどが入ったスペシャル版のアルバムが多数登録されている。それやこれや考えると、FTの記事がCocktailの全貌を伝えているようには思えない―もちろん、このプロジェクト自体がつまらないものだというなら別だが。

しかし、FTの記事はここでタブレットに話を戻す。ところが、このデバイスは音楽よりも映画に関係ありそうな書きぶりだ。

エンタテインメント業界は、AppleがiPodとiPhoneで音楽プレイヤーと携帯電話に起こしたような革命をタブレットによってもう一度起こしてくれるよう期待している。

「映画を見るのに理想的なデバイスだ」と業界の幹部は語った。

それに書籍だ。

出版社もすでにAppleと交渉を始めており、新しいコンピュータでのコンテンツ提供の先行きに大いに期待をかけている。AppleタブレットはAmazonのKindleの有力なライバルになるかもしれない。

たぶん、Appleのことだから、3分野(音楽、映画、書籍)すべてをターゲットとしているのだろう。しかしそれ以上の推測するには情報が不足している。

いちばん重要な点だが、タブレットがあと数か月で発売される可能性が本当にあるのだろうか? 私にはどうもそうは思えないのだが。

[photos: flickr/ginsnob and TECHcocktail]

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01