Webビジネスの長期的な成長を支えるのは完璧な顧客サービスのみ–それさえあれば誰にも負けない

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このゲスト記事を書いたAndrew Scottは、ロンドンの連続射殺魔、じゃなかった連続起業家で、RummbleのCEO、UnLtdWorld.comの相談役、m.Loveの設立者の一人、そして“モバイルに関するものなら何でも好き”という人だ。

1901年にアメリカに移民したスウェーデン人Johan Nordströmが、Nordström百貨店を創設した。その後店舗は全国に展開したが、1975年にある店を訪れた顧客が、前に買ったタイヤを返品したいと言った。店員は快くそのタイヤを受け取り、代金をお返しした。この、当たり前のような話のどこがおもしろいのか? 実は、Nordströmはタイヤを売っていなかった。

この話を知っている人は、多いと思う。Nordströmの顧客サービスのすごさを物語る伝説のようなお話は、ほかにもいろいろある。もっとすごいのは、それらがすべて事実であることだ。

Efraim Turbanの本に、こんな一節がある: “顧客サービス…カスタマサービス…は、顧客の満足度を高めるための一連の活動である。製品やサービスが顧客の期待を満たしていると感じていただくことが、その目的である”。

大企業の顧客サービスはなってない、という話はよく聞く。ぼくも、アタマにくるような経験を何度もした。これまでの最悪第一位は銀行だと思うが、モバイル時代の今日では、モバイルネットワークのオペレータ企業(キャリア企業)が第一位の座を奪ったようだ。彼らはインフラの費用を言い訳にしながら、ローミングやデータ料金で暴利をむさぼっている。それでいて顧客サービスが支離滅裂だから、ふだんおとなしい人でもキレそうになってしまうのだ。ぼくも、その一人だけど。

そこでぼくは考え込んでしまう。インターネットが全世界に普及して行くにつれて、オンライン企業の最大の課題が、今の銀行やケータイキャリア企業のような、劣悪な顧客サービスの常習犯にならないことではないだろうか。

インターネットの上の情報は“無料”がふつうだから、ともすれば企業は、お金を払っていないユーザには顧客サービスを受ける権利がない、企業は彼らに顧客サービスを提供する義務がない、と考えがちだ。

しかしその考え方は二つの点で短絡的すぎる。まず第一に、今日の無料ユーザは明日の有料ユーザだ。そして第二に、無料ユーザもすでにいろんなものを“払って”いるのだ。MyFaceなどに登録するとき、グループに参加するとき、メールを送るとき、チャットをするとき、Facebookなどでステータスをアップデートするとき…どんなときでも、ユーザは自分の個人情報を“払って”いる。その“支払い”と引き換えにユーザは価値ある情報を得る。情報ばかりでなく、ACME Inc.のようにユーザに広告を押しつけるサイトもある(広告も個人情報によって差別化される)。

個人情報と引き換えに価値ある情報を与えるという、このオンラインビジネスの世界に、Nordströmのタイヤの返品に匹敵するほどの優れた顧客サービスがあるだろうか?(友人のJMacsのブログなんか、こういうことを考えるための良いとっかかりになりそうだが)。

オンラインサービスでは、ユーザ数が多くなると親切な顧客サービスは難しくなる。しかしオンラインであろうとなかろうと、良質な顧客サービスは企業が生き残るための鍵だ。だからそれは、企業の大目標の一つとして最初から明記されていなければならない。

37 Signalsには熱心なファンが多いが、ユーザに対してお高くとまっているような態度で悪名も高い。これと対照的にJeff Bezosは、きわめて単純に、“何よりもまず顧客のことをつねに考えるということをしなかったら、Amazonはとっくに存在していないだろう”と言っている。

それでは、顧客サービスの質の高いオンラインサービスは、どことどこだろう?

ユーザがたまたまTwitterを使ったために、非常に迅速な顧客サービスが得られた例が最近ある。友人のガールフレンドが、航空会社のサイトでボタンのクリックを間違えて、二人分でいいところを四人分の座席を予約してしまった。友人(その名はAlex)は、この一件をTwitterでつぶやいた。するとその航空会社@easyjetは、まるで奇蹟のように、すぐに予約変更をしてくれたのだ。

Alexが“ふつうの”チャネルを使っていたら、まずその航空会社のWebサイトにアクセスして、適切な電話番号を探し、長時間待たされ(もちろん電話代はAlexもち)、予約変更も返金もできません、なんて言われただろう。今は、ごく一時的にだが、“Twitter上の顧客サービスの黄金時代”ではないだろうか。それが続くかぎりは使うべきだが、残念ながら大人数の顧客サービスには対応できない。

Saatchi & SaatchiのCEO Kevin Robertsは、“今はどのブランドもガス欠だ”と言っている。彼によれば、ブランドを救うものは“愛”だそうだ。彼曰く“理屈ではなく、単純な「好感」がブランドロイヤリティを築く”。そして、企業や製品が好感度ナンバーワンのブランドになるためには、顧客サービスが何よりも重要だ。Robertsは、ブランドは単なる名前や商標であることを超えて、消費者の“愛好物(Lovemark, お宝)“になるべきだと言う。言い換えると、理屈や理性を超えて、単純に“好きよ”という気持ちにさせるブランドであること。

自分のお宝になってしまってるようなブランドが、あなたにはいくつあるかな? ぼくの場合は、Virgin Atlanticと、愛用のBlackberryと、そしてサンドウィッチショップのPretだ。どれも、過去にいくつかトラブルを経験したが、そのたびに、顧客サービスの対応がすばらしかった。企業とお客という関係を超えて、人間的な好感や親しみを、当然のように持ってしまうのだ。オンラインでは、Kayak.comがそれに近いと思う。Facebookはだめだね。

* たとえばVirgin Atlanticでは過去に3回、エンタテイメントシステムの不具合を経験した。Blackberry Boldは何度もハングした。Pretは、不具合云々よりも、いつ何を食べてもおいしい…製品に当たり外れがないことは顧客サービスの重要な要素だ。

企業や製品に、好感ではなく反感を持つこともある。昨年買ったノートパソコンでは、MicrosoftのVistaにいらいらしっぱなし。Googleで”I hate vista”を検索してみると、その結果は3,310,000項目もあった。おもしろいから、Googleの上で”I hate ##”と”I love ##”をいろいろやってみたら、下のような結果になった。かっこ内は、GoogleではなくBingの結果だ。

I hate ##

I love ##

love/hateの比率
37 Signals 2 1,070 535
Amazon 2,470 20,700 8.3
Apple 27,800 133,000 4.7
Google

(Bing)

16,800

(72,900,000)

132,000

(182,000,000)

7.8

(2.4)

Microsoft

(Bing)

37,200

(73,000,000)

48,900

(227,000,000)

1.3

(3.1)

Starbucks 10,800 53,000 4.9
Virgin Atlantic 4,700 261 0.05
Vista 37,600 21,300 0.56

以上はもちろん、たまたまこうなったというだけで、まったく科学的な結果ではない。Virgin Atlanticを好きなぼくは、少数派かな。

** ところで、白状すると”I hate Rummble”の結果は1だった。Twitter上で、Rummbleはフレンドの接続処理がまずいと言われている。それは正しい。今週中に直す。”I love Rummble”の結果もそんなに多くないから、真剣に考え直さないとだめみたいだね。

これまでの企業は、衝突を避けようとする。ある会社の重役が最近、“何を言っても文句が返ってくるよ。Twitterは地雷原だね”とぼくに言った。こんな態度は、いじめっ子を公園にそのまま放置することに等しい。企業は、どんな顧客にもきちんと人間的に対応しないとだめだ。謝るべきは謝る。顧客のほうが間違ってると思ったら、口論ではなく対話を開始する。忍耐と慎重な対応が鍵だ。

ただし、誠意の伴わない対話は事態を悪化させる。最近、Facebookのプライバシーについて質問したら、こんな答えが来た: “ご提案を感謝します。お言葉を念頭に置きつつサイトの改善を続けて参りたいと思います。Facebookへのご連絡を感謝申し上げます”。ぼくはロボットかっ? これを書いたカスタマサポートの人間(?)は”Craig”だが、彼はユーザからの質問にまったく答えていないじゃないか。

ご存じのように、顧客サービスに関する本はたくさんある。ブログやポッドキャストや資格試験、教育訓練、方法論、それに政府公認の規格すらある。イギリスでは、”TICSS”や”ISO 10002:2004″などだ。

でも、企業の顧客サービス担当の多くが、ぼくの個人情報はすべて持っていながら、自分のフルネームや内線電話番号やメールアドレスをぼくに教えてくれないのはなぜだ? データの保護とかわめくな。あんたがぼくを信用しないのなら、どうやってぼくはあんたを信用できるのさ? 顧客サービスが質問者を認証するなんて、ばかなことはやめてほしい。Johanを見習え。良質な顧客サービスは、とてもシンプルであるべき、と彼は主張しているのだぞ。

つい最近まで、Nordströmの新入社員は、山のようなマニュアルでなく、たった1枚のカードを入社時にもらった。そのカードには、わずか75語で、(要約すると)次のことが書かれていた:

“わが社の第一の目標は、すぐれた顧客サービスを提供することである。Nordström社の社則: 規則#1: すべての状況において良い判断をせよ。これ以外の規則は存在しない。”

今日では、健康や安全性をめぐって、訴訟で脅すクレーマーのような人も増えているので、新入社員にはカードのほかに薄いガイドブックも手渡される。しかし社員一人々々の力量と自主性と良識を信ずるという社風は、まったく薄れていない。

自分の会社を作るときにも、これまでTwitterやメールなどでいろんな人と熱心に対話してきた「個人としての自分、人間としての自分」を、永遠に忘れてはならない。会社が大きくなれば当然、困難も増える。ACME Inc.が今どうなっているか、Facebookも今では、顧客サービスの面で深刻な問題を抱えている。Facebookでは、顧客サービスの担当窓口を見つけるのに25回もクリックしたあげく、あきらめなければならない。電話番号もないし、Facebook Helpの検索最上位が”担当者や受付窓口を見つけること”だから、問題は相当深刻な状態のまま放置されていると見てよいだろう。

UserVoice、GetSatisfaction、それにTwitterなどのサービスを使えば、ユーザはそこに企業に対するフィードバックを簡単に書ける。でも、それだけではだめだ。企業に対するぼくからのささやかなアドバイスは、さっきのNordströmのカードの文面の”Nordström”を自分の会社の名前に書き換えて、それを今日から、壁に張り出すことだ。トイレのドアにも張ろう。そしてFacebookのように大きくなる前に(つまり手遅れになる前に)、ユーザが年々どれだけ増えても、Nordströmの教えを毎日守る努力を続けよう。

顧客というものは、有料だろうが無料だろうが一人々々が、けっしておろそかにできない立派な顧客だ。差別のある誠意は誠意ではない。有料顧客なら、それは会社を支えている柱だから、Johan Nordströmが深く理解していたように、神様以上にだいじにしなければならない。

この前のぼくの記事では、最後に、今度はデータの重要性について書くと宣言した。これからは、機能性がどんなにすばらしくても、そこから提供されるデータの質がお粗末ならなんにもならない。そして、ブランドとしての企業や製品/サービスの成功という点では、重要なものはただ一つ、「顧客」だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))