インドの極小ローカルニュースサービスSMSONEはシリコンバレーがうらやむ成功ぶり

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[jp] 米国のソフトウェアビジネス事情

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訪れる一つの国で何百もの企業に会うが、本誌などの記事に取り上げるのはほんの数社だ。取り上げるのはたとえば、合衆国のアイデアのコピーのように見えるけど、実はよく見るとたいへんユニークで、往々にして収益性も合衆国のものより良い企業だ。また、いわゆる途上国の市場にはぴったりだけど、合衆国ではまずだめ、というタイプのアイデアも魅力的だ。

しかし、ときには三連単の大穴を当てることもある。それは、1)地域の大きな問題を対象にしている、2)合衆国にはまだないと思う、そして、3)合衆国にもあってほしい!、という三拍子揃った企業だ。そして、未開の地インドの混乱と無秩序の中に、シリコンバレーをうらやましがらせるような製品を見つけたときには、同時にインドの起業家の優秀さも思い知らされるのだ。

1週間ほど前にプーナ(Pune)で会ったSMSONE Mediaも、そんな企業の一つだ。インドで感銘を受けた企業の多くがそうであるように、同社も社会のピラミッドの最下層にしっかりと焦点を当て、ごくベーシックなSMSを使ってインドのへき地の人たちにサービスを提供している。創業者のRavi Ghateは、うちのチームにはIIT〔インド工科大学〕やIIM〔インド経営大学〕を出た人はおろか、高卒すら一人もいない、と誇らしげに語る(ふつうインドで人に自慢げに話すことではない)。

SMSONEは要するに、ものすごくローカルなニューズレターだ。Ghateはプーナ周辺の村に出かけて職のない若者をスカウトする。なるべく、道端で物を売ったり、家々を戸別訪問して地元政治家のための寄付集めをする、などの経験のある子がいい。スカウトされた子はGhateにフランチャイズ料として1000ルピー(約20ドル)払い、その村を担当する記者になる。彼は家々を一軒々々尋ねて、1000軒あるいはそれ以上の氏名・住所・電話番号を集め、Ghateに送る。Ghateはそのデータをデータベースに入れ、その子を村の記者として紹介するテキストを彼らに送る。インドではテキストの受信は無料なので、送っても文句は言われない。

しかしこのショートテキストこそが、インドの村々では強力な役割を発揮する。それまでの村には、情報が人びとに直接伝わる手段がない。インターネットへのアクセスも、テレビも、新聞もない。往々にして電気もない。唯一あるのが、各家のごくふつうの携帯電話だ。SMSONEのサービスで農家は農作物の市況を知り、遠方の町における種子や肥料などの入荷状況を知る。そうすると、何日も旅をして町へ出かけたが、店に肥料が入荷してなかった、なんていう無駄足がなくなる(出かける前から、どの町のどの店に品物があることが分かる)。

もっと基本的な問題もある。水だ。村には政府が管理する水道が来ていて、1日に1時間、場所によっては1週間に一度だけ、給水がある。全員が桶や水差しや空の石油缶などを持って給水栓に集まり、なるべく多くの水を汲もうとする。しかし給水のスケジュールがいいかげんなので、その日またはその週、水を汲めなかった人もでてくる。しかし今では、SMSONEが給水の正確な時間を教えてくれる。

これは確かにとても地味なサービスだが、でもたとえばサンフランシスコの私が今住んでるところ近辺の最新ニュースを一編160文字のSMS(またはそれふう)で知らせてくれるサービスがあったら、お金を払ってもいいね。近く停電やケーブルの配信休止はあるのか、どこで交通渋滞を起こすほどの工事をしているか、さっき報道された銃撃事件はその後どうなったか、そういう、完全に地元密着型の細かいニュースが貴重だ。どこにどんなレストランが開店したか、2ブロック先のブティックで今セールをやってるなど、広告による情報も大歓迎だ。メディアの過剰の中で生きている現代人は、“ローカルニュース”というと市や地方レベルのニュースをイメージしがちだから、ローカルニュースにあまり関心を持たなくなっている。しかし逆に人びとは、もっと微小なレベルでの「ローカル」に関心を持つようになっているからこそ、FoursquareやCitySourcedのような位置対応型のiPhoneアプリケーションがシリコンバレーでも、もてはやされるようになっているのだ。〔また、今年のTechCrunch50の優勝者RedBeaconや、その改良版のようなThumbtack本誌記事…などは、ローカルな各種サービスの利用インタフェイス。〕

しかしGhateがやってることは、すごくシンプルだ。300ドルのスマートフォンもGPSも、プラットホームとしてのTwitterも要らない。強力なイノベーションが、このように極端な制約の中でこそ生まれることがある。

Ghateが作ったものに感銘を受けた人間は私が初めてだと思ったら、とんでもない。彼はClinton Global InitiativeのYES財団賞を2008年に受賞したほか、数々の賞をもらっている。そして類似のモデルが、やはり携帯電話は普及しているがほかにコミュニケーションの手段がほとんどないアフリカで、いくつか構築されている。

SMSONEは、村人の生活を変えただけでなく、職のなかった子どもが一躍、村の重要人物になったことの意義も大きい。一編160文字の記事を書くだけでなく、広告のセールスもする。しかしGhateは、新聞と同じように記事と広告の比率を決めているので、ニュースが広告に圧倒されることはない。

広告一つの料金1000ルピーのうち、300が記者に行く。また、記事一編につきGhateは50ルピーを払う。村の子どもにしてはかなりの収入になるが、荷物をまとめて大都市に移住できるほどではない。フランチャイジーである記者が、さらに記者を雇い、部数を増やして収入を増すこともできる。

今、Ghateがサービスを提供している村が400あり、読者数はおよそ40万だ。彼は最近バンガロール市からの投資を受けたので、それにより4か月後には読者を500万に増やしたいと考えている。

Ghateは、金は読者を増やすためにだけ使う、と決めている。会社はすでに採算に乗り、Ghateの生活も支えている。ただし彼は車や服などには興味がない。ほんの少し前は、彼も、同じような村のガキだった。道端に立って旗やイチゴを売っていると、あっちへ行け!と言われた。彼は今でも村々を訪れるときはバスを使い、一泊5ドルのホテルに泊まる。今度インドに来たときは、その旅に同行させてあげよう、と言われた。サービスの現場を直に見て、彼の若い“記者たち”に会わせてあげる、と。

“2月にまた来るわ”と私は言った。“そのときまでに、読者数が500万になってるかしら?”。

“無理だね”、彼は部屋の天井を見つめ、頭の中で計算をしている様子で言った。それから再び視線を私に向けて、ほほえみながら言った。“4月に来てよ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

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