[jp] レポート:第一回ウェブ学会シンポジウム・前半

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12月7日に開催された第一回ウェブ学会シンポジウムに参加してきた。月曜日の朝9時からという日程にもかかわらず1,100人を超える参加者、さらに会場に駆けつけられないユーザーがTwitter、Ustream上にも多数あつまり、大変な成功に終わった。

「安田講堂をウェブに携わる人で満場にする。」

シンポジウム主催の中心にいた松尾氏、大向氏からこの企画を聞いたとき大変スリリングであると同時に、一体どのような集まりになるのか興味深かった。本稿では全体の雰囲気を伝えると共に、スタートアップ・ビジネスの視点から興味深い話題を中心に前半・後半に分けてレポートしたい。ありがたいことに Ustreamに全編が録画されているそうなので、興味のある向きは是非各スピーカーの話題に耳を傾けて欲しい。

第1回ウェブ学会シンポジウム [午前]
第1回ウェブ学会シンポジウム[午後-1]
第1回ウェブ学会シンポジウム[午後-2]
第1回ウェブ学会シンポジウム[午後-3]
(Ustream by @ksorano

オープニングでは松尾 豊氏がシンポジウムの開催経緯と意図を説明。「ウェブが出来て15年、国内から世界に革新的な技術、ビジネスが生まれていない状況。」ウェブにおける日本の立ち位置に言及。「シリコンバレーの仕組みを日本に作ることは難しいが、できることはあると考えている。」同氏は語る。

オープニングの終わりは「世界に影響を与えるウェブ研究・ウェブビジネスを継続的に生み出す場を提供する」とウェブコミュニティの立ち上げと新たな「生態系」を生み出すことが狙いであることを来場者に告げた。

セッション1:ウェブとコラボレーション

「コラボレーション」をテーマに最初のセッションが始まる。橋本 大也氏はウェブコラボレーションの先端事例をスライドで数多く紹介。「Innocentiveは企業が解けない問題を解決するための研究者のクラウド。最も有名な事例はP&Gのプリングルス。」食べられる色素をInnocentiveに投げたところ、イタリアのボローニャで小さなパン屋を経営していた元大学教授がその特許を持っていて、製品化が実現したそうだ。

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国立情報学研究所の准教授で弁護士でもある野口 祐子氏はウェブコラボレーション時代の法的観点を解説した。「元々の著作権は活版印刷をもとにしていた。しかしパッケージ流通がウェブ流通へ移り、アウトプットすることがイコール広く世界に発信される時代になってしまった。」270ヶ国が加盟するベルヌ条約により短期的に改正できない著作権法と変容し続ける著作物そのもの間にギャップができつつあるそうだ。

一部例外規定で注目されるフェアユースについても「量や質、目的を判断して除外する米国状況と比べ、日本は都度特別立法で対処するので難解でパッチワーク状態になっている。制度疲労を起こしているのではないだろうか。」とその課題を指摘する。

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「著作権はコラボレーションをしようとするとコストの高い精度。同時にハリウッドでは重要なツールでもある。いろいろな生態系で適用しようとすると柔軟性が重要で例外規定などのフレキシブルにつかえるツールが必要と考えている。」と締めくくった。

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(写真は左から中山 浩太郎氏、野口 祐子氏)

最後のパネルでは「企業なクローズドな知識に対してどうアクセスするか」という質問が興味深かった。野口氏は、ソースコードをオープンにするかどうかという視点をつくりつつ、「コラボレーションする生態系をつくることで製品が売れる、プラットホームが強化される、という営業的戦略に裏付けられている場合にのみ実施されるのではないか。」と回答。

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基調講演で壇上に上がったのは長尾 真氏(国立国会図書館 館長)。「全文検索で10万件もヒットしているようであれば検索の意味がない。検索にはグーグル検索が圧倒的に便利という時代から新しい観点、絞り込みのできる技術が必要だと考える。ランキングが高い情報が必ずしも信頼にたる情報でない。」日々成長し続ける莫大なウェブアーカイブと現在の検索事情に課題を投げかける。

電子出版物に話題が及んだ際には「Googleのブックスキャンが米国著作物以外は拒否された。これは日本の著作権者にとってはよかったのかもしれないが、世界からみると日本が無視されていることになっている。」と警鐘を鳴らした。

「一般のウェブユーザーに対して何を期待するか」という質問には「すべての人が情報のクリエイターであり、利用者である。この時代は良い。協力しあって情報を知識化し、安全を高め、的確な情報を得られるような検索をつくることを期待する。」と参加者にエールを送った。

後半へつづく