手作りコンテンツの終焉―否応なくジャンクフード・コンテンツの時代が来る

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[jp] 2009年の究極のウェブは「モバツイッター」。忘年会議2009で究極のウェブトップ10が発表に。

旧メディアは迫りくる自分たちの終焉について書くのが何より好きだ。そのたびにわれわれも「AP通信はYouTubeが何なのか知らない」とか「New York Timesの記者諸君は毎日TechCrunchを読んでいる」などとコメントしてお付き合いしてきた。

全体としてみれば、私は「メディア産業は危機に瀕しており、勇敢な革新者だけが救われる」というReutersRupert MurdochEric Schmidtらの説は正しいと思っている。個人的には、優秀なジャーナリストにとって最良の道は(勤め先のメディアにとって最良の道ではないが)、さっさと独立して自分自身の名前を新たなニュース・ブランドにしてすることだと思っている。.

しかしイノベーションの一翼をになうニューメディアの人間としては、いずれにしても滅びるべき運命の旧メディアが滅びるというなどということよりずっと重大な問題が水平線に頭をもたげていることを懸念せざるをえない。つまり、ジャンクフード的コンテンツが急速に増えており、その質がますます悪くなっているという問題だ。

旧メディアはブログやニュース・アグレゲータ・サービスがコンテンツを要約し、元記事にリンクバックすることを気に病んできた。旧メディアは「そういう仕組みでは事業が成り立たない」としてコンテンツを保護し、課金する方策を探り始めている。

人類の先祖が火を発見したときでも、危険だとかハイテク過ぎて理解できないとかいって火を使おうとしなかった層があったに違いない。しかし頭の良い連中は火で肉を料理したり暖を取ったりしてどんどん繁栄していった。

TechCrunchでは誰かがわれわれのコンテンツを「盗んで」リンクを返してくれたらお祝いのパーティーを開く―まあ少なくとも喜ぶ。誰かがわれわれの記事に興味を示してくれた証拠だからだ。TechMemeのようなニュース・アグレゲータは誰が最初にそのニュースを発表したのか跡づけてくれる。たとえページビューが少々減ろうと、良い評判が得られる方がよい

しかしリンクバック1つに対して何のリンクも返さず単に剽窃しているサイトが何十もあると考えなければいけない。スパムブログだけの話ではない。たまにはNew York Timesでさえそういうことをすることがある。といって、私は著作権を問題にしているのではない。実際そういう剽窃記事は単なるコピーではなく人間が書いている。しかしウェブからニュースを仕入れて適当に書き直させて済ませられるものなら、独自に取材して記事を書く人間を雇うよりはるかに安くつく。

それでもTechCrunchのような会社はなんとか生き延びていく方法を考え出せるだろう。

私が本当に何を恐れているのは何か? 巨大検索エンジンや大手ポータルによって無理やりわれわれの喉に押し込まれる安価な使い捨てのジャンクフード・コンテンツの奔流によって、現在の小規模な手作りのコンテンツの発信者たちが絶滅させられてしまうのではないかという展望だ。

たとえば、一つの端にはAOLのトヨタ自動車方式の戦略がある。AOLはオールドメディアで首になったライターをかき集めて何千というニッチなコンテンツのラインアップを作り上げている。その結果、質として最低の記事のリードが膨大なトラフィックを呼び込むAOLのトップページに掲載されることになる。たとえばこの記事などお粗末極まりないものだ。AOL自身のブログの一つがAOLの独立と上場をけなし、意味の分からない不満を延々述べたた後、ひどい事実誤認を披露している(AOLは赤字を出している)。旧メディアから真っ先にクビになり、自分自身のブランドを立ち上げるガッツもないような三流ジャーナリストを大量に雇い入れ、ろくに監督もせずに勝手にやらせておけば、その結果は見えている。安っぽい屑のような記事の山がAOLの膨大なユーザーの前に運ばれてくるのだ。

そしてもう一方の端にはWiredが使い捨ての即席ハウツービデオで大儲けを目指すDemand Mediaという記事でレポートしているようなビジネスモデルがある。Demand Mediaは1本20ドルかそこらの最低の下請け賃金で毎日なんと4000本ものハウツービデオをアップロードし続けているのだ。その目的はただ一つ―検索エンジンの上位に掲示されることだ。検索エンジンにヒットしそうなテーマについてのビデオをひたすら大急ぎでひたすら最低の値段で作り続ける。そしてトラフィックで広告収入を稼ぐ。要するにSEO(検索エンジン最適化)ビジネスの極端な例だが、これが嘘のように儲かっているらしい。

安かろう悪かろうを極限まで推し進めるレースが始まっている。ここではコンテンツの品質に少しでもこだわる者は敗者となる。

なるほどまだ全面的にそうはなっていない。しかし結局そうなるはずだと私には分かっている。旧メディアはこのところずっとわれわれブロガーに文句を言ってきたが、近くわれわれはこの新たな屑メディアに文句を言い始めることになるだろう。

読者へのアドバイスは「近々マクドナルドを毎日5回食う覚悟をした方がいい」というものだ。メディアに対するアドバイスとなるともっと微妙なものになる。いちばん破壊的なイノベーションを思いついたものだけが生き残るだろう。あるいはコンテンツを作ることで金儲けをするのを諦めるべきかもしれない。やむにやまれず書きたいことがあるから書くのであれば金が儲からなくても書けばよい。しかし書いたものは片っ端からリンクバックもなしに剽窃され、検索エンジンにも無視されるということになるかもしれない。昼の勤めを終えた後で夜に趣味で書くことになるかもしれない。しかしそれが現実なのだ。

それが良いか悪いか、公平か不公平かを論じても仕方がない。とにかくそういう方向に動い
ているのだ。旧秩序の破壊者自身が破壊されようとしている。起きている事態を無いものにしようとしても無駄だ。手作りのコンテンツは死んだ。ジャンクフード・コンテンツの時代が始まろうとしている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦/namekawa01

“手作りコンテンツの終焉―否応なくジャンクフード・コンテンツの時代が来る” への10件のフィードバック

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  2. […] → 必読!〉 否応なくジャンクフード・コンテンツの時代が来る | TechCrunch Japan So what really scares me? It’s the rise of fast food content that will surely, […]

  3. […] → 必読!〉 否応なくジャンクフード・コンテンツの時代が来る | TechCrunch Japan So what really scares me? It’s the rise of fast food content that will surely, […]

  4. […] Demand Mediaもロサンゼルスに本拠を置く企業で、元MySpaceの会長、Richard Rosenblattがファウンダーだ。 Demand MediaはeHow、Livestrong、その他無数のニッチサイトを傘下に置いている。またドメイン名管理業者のeNomもグループの一員で、多額のキャッシュを稼ぎ出している。Demand Mediaはまた安価なコンテンツを大量生産しており、Golflink.comやTrails.comのようなニッチサイトにポピュラーな検索フレーズに対応する短いビデオクリップを供給している。Michael Arringtonには「ジャンクフード・コンテンツ」と批判されているが、儲かる事業なので買収の噂が絶えない。AOLのTim ArmstrongはDemand Mediaのビジネスモデルを真似してニッチコンテンツを生産しようとしている。 […]

  5. 「コンテンツキュレーター」のプロリーグ ~編集から”編”集へ~…

    僕はフリーペーパー制作に携わらせて頂いてるし、就活中もある時突然「あ、編集したいのかも」と思ったりした。(結局大手出版には全くESを出しておらず、当時唯一生き残っていたのもマガジンハウスだけだったので面接で落ちちゃったけど。採用数3人って何だよw)

    そんな背景や、編集系に進む友人、今一緒に編集してる友人などと話してる間に思ったこと。
    「編集」という仕事、言葉、要素における重心が集から編に移ったのかな。
    今更なのかもしれないけど、こないだふっと気付いた。

    これまでは音楽だったり旅行…

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