Googleの「オープン・ソース万歳」はけっこうだが、いいとこ取りなのは否めない

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昨日(米国時間12/21)、Googleはオープンであることの意義についての非常に長文のマニフェストを発表した。これはまずメールで社員に配信された後、公式ブログに掲載された。マニフェストの中でプロダクト・マネジメント担当副社長のJonathan Rosenbergは「オープンシステムは常に勝利する」と雄弁に説き、Google社員に対して製品をデザインする際にはオープンさを重視するよう求めている。オープンなインターネットはイノベーションを促進してユーザーをいっそう増やし、それは検索やウェブ・アプリケーションの利用を増やすことにつながるという。

この議論の眼目は「インターネットがさらに大きく強力になればなるほど、Googleの利益になる」という点だ。RosenbergはGoogleのエンジニアはクローズドなシステムを開発しようとする誘惑に勝たねばならないと言う。さらにAppleがクローズドな傾向について皮肉を飛ばしている(太字は私の強調だ)。

. . . オープンシステムは勝つ。これは古臭いMBAの教育を受けた人間には理解しがたい事実だろう。こうしたMBAが受けた古い常識は「クローズドなシステムを作れ。ひとたびユーザーの人気を得たら、徐々にバージョンアップしながらできる限りの利益を絞り取れ。顧客をロックインすることで競争相手をロックアウトせよ」というものだった。…実際、巧みに管理されたクローズドなシステムは多額の利益を稼ぎ出すことができる。またシステムがクローズドであれば短期的には優れたデザインの製品を提供できる。iPodとiPhoneはその明らかな例だろう。しかし結局クローズドなシステムには画期的なイノベーションは起きない。せいぜいのところ段階的な改良があるだけだ(三枚刃のカミソリは二枚刃のカミソリよりどれだけ優れているだろう?)。クローズド・システムの本質は「現状維持」にあるからだ。凡庸さがクローズド・システムの特徴だ。もし顧客を満足させるために激しい競争をしないですむなら、誰も激しい努力はしない。

それはそれで結構な意見だ。 Android、Chromeその他数々のプロジェクトでGoogleは間違いなくオープンソースの旗手だ。Googleは自らをオープンシステムの旗手であると印象づけようとしている。「オープンソースの旗手」という衣装を身にまとおうとする努力はずっと以前から続いている。実際、私は2年前に誰がもっともオープンなのか?という記事を書いた。その結論をここで繰り返しておきたい。

騙されてはいけない。企業というのは自分たちがオープンである分野を非常に注意深く選ぶものだ。そして自社の中核となる収益源を自発的にオープンにすることなどまずない。…企業が「自分たちはオープンだ」と言ったら、オープンになることによってその企業はどんな利益を上げようと目論でいるのかを考えてみるべきだ。オープンであることは慈善事業ではない。

Googleがオープンなのは自社にとって都合がよいときだけだ。Googleが検索アルゴリズムや広告システムのソースコードやデータを公開することなどあるまい。こうした分野の秘密こそがGoogleに巨大な収益をもたらすカギだからだ。2年前に書いた私の記事をさらに引用する。

IT業界全般にわたって企業にオープン・テクノロジーの採用と相互運用性の拡大を促がす圧力がかかっている。しかしオープン化が収益性を改善するわけではない。オープン規格は多くの場合新しいテクノロジーの普及を助けるが、収益性を直接改善することはほとんどない。企業がオープン戦略を取るのはその分野で通常の競争をするつもりがない場合が多い。たとえばGoogleはSNSや携帯ネットワーク、ウェブ・アプリケーションなど、事実上インターネットのあらゆる分野でのオープン化の旗手だ―ただし、自分たちの収益源である広告システムについては完全なブラックボックスのままにしている。またGoogleが広告収入の源泉である検索アルゴリズムを公開しようとしているという話も聞かない。一方でオープン化を唱導しているのはGoogleが破壊しようと狙っているビジネス分野だ。つまりGoogleは既存のビジネスをオープン規格によりコモディティ化して〔製品ごとの差別が失われ低価格の日用品化する〕、当該分野のビジネスモデルの広告化を狙っているのだ。

Rosenbergも自分が言っていることとGoogleがやっていることの間に食い違いがあることは気づいている。「すべてはオープン化されるべきだ」という原則の巨大な例外を言い繕おうとしてRosenbergはこう書く。

われわれはデベロッパーの利用するツールをすべてオープン化することを約束しているが、必ずしもGoogleの製品すべてがオープンソースになるわけではない。インターネットのオープン化によって一般ユーザーやデベロッパーが特定のクローズなシステムに捕らわれることを防ぎ、自由な選択を確保しようとするのがわれわれの目的だ。ある場合には、たとえば検索や広告サービスがいちばん目立つ例だが、オープン化はそうした目的を助けるどころか、むしろ害を与えることになる。

そうも言えるかもしれないが、要するにGoogleにとって不利益になるということだ。Googleにはこうした分野のソースを厳重な秘密にしておかねばならない理由がある。こうしたブラックボックスを公開すれば、検索エンジンを出しぬいて不当に表示順位を操作したりAdWordsでクリック詐欺を働くのが容易になるだろう。競争相手が検索エンジンや広告システムを改良する大きな助けにもなる。こうした秘密を公開すれば、Googleが顧客を満足させるためにさらに激しい競争にさらされるのは明らかだ。.

いずれにせよ、企業が時間とエネルギーと資金を大量につぎ込んで開発したシステムを守ろうとするのは当然であり、誰もそれを非難はしない。しかし「すべてはオープン化されるべきだ。Googleこそ世界でもっともオープンな会社だ」と鳴り物入りで宣伝するのは止めてもらいたい。OSや携帯やブラウザや本や、その他あらゆる事業分野がオープン化し、無料化してもGoogleには失うものは何もない―検索と広告で収益が上がる限りは。これがまさにGoogleが破壊的イノベーションを実現している理由なのだ。今まで有料だったサービスを無料化してその分野をビジネスとして成立しなくてしまう。しかしそのサービスは検索その他のトラフィックによっ
最終的には広告収益を生む。

この戦略は合理的なものだ。またGoogleがオープン化を推進することは一般ユーザーはもちろん、スタートアップにとってもさまざまなチャンスを生んでいる。しかしGoogleの本音が「すべてはオープン化すべきだ―ただし検索と広告を除いて」であることは覚えておいたほうがよい。

(Image via j/f/photos).

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦/namekawa01

“Googleの「オープン・ソース万歳」はけっこうだが、いいとこ取りなのは否めない” への8件のフィードバック

  1. 言われてみれば、もっともだ…

    Googleは、ホントに便利なんだけど、「自分の利益」のためにあくまで有料(クロ…

  2. […] コメントする » TechCrunchから面白い読み物を紹介する。12/21公開された「オープン」であることの意義を強調したGoogleのオフィシャルブログの記事についてのお話。 […]

  3. 一つ欠けている部分がある。
    権利化してから、公開する。
    それは、著作権や特許などの「権利化」が欠けていると思う。
    There is one part missing.
    From that of the right to publish.
    That is, such as copyright and patents “of right” I think we are missing.

    ●記事から抜粋 Excerpt from the article

    翻訳:滑川海彦さん
    しかし「すべてはオープン化されるべきだ。Googleこそ世界でもっともオープンな会社だ」と鳴り物入りで宣伝するのは止めてもらいたい。
    ----------
    この考えが古臭いと認識するべきではないでしょうか・・・
    I think this idea should be recognized as an old-fashioned…

    ではまた。Cheerio

    村上光治むらかみこうじ
    kouji murakami cello-murakami Muse

  4. kouji murakami より:

    ●Excerpt from the article
    翻訳:滑川海彦さん
    しかし「すべてはオープン化されるべきだ。Googleこそ世界でもっともオープンな会社だ」と鳴り物入りで宣伝するのは止めてもらいたい。

    ----------

    この考えが古臭いと認識するべきではないでしょうか・・・
    I think this idea should be recognized as an old-fashioned…

    There is one part missing.
    From that of the right to publish.
    That is, such as copyright and patents “of right” I think we are missing.

    Cheerio
    kouji murakami cello-murakami Muse

  5. 匿名 より:

    素晴らしい! エクセレント!

  6. 匿名 より:

    素晴らしい! エクセレント!

  7. Hideki Machida より:

    確かにGoogleのオープンソース戦略はむしろオープンソースコミュニティにとって良いこととは言い難いケースもある気がする..

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