[jp] ウェブとリアルは対話し始める 2010年のセカイカメラ

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01[日本語版編集部注:前回に引き続き頓智・井口CEOによる寄稿。Edo Segal氏の提唱するリアルタイム検索の向こう側:アンビ エント・ストリームの夜明けが巻き起こすであろうウェブの未来像を頓智・の視点で論じた前回。今回はいよいよその未来に彼らの送り出すセカイカメラがどのように機能するのか、2010年という節目に彼らが起こそうとしている「真のイノベーション」について語ってもらった。

■PCとWebの時代は書き換えられるのを待っている

If Joe Wilcox ran the computer industry, we’d still be using typewriters. [The World Doesn’t Need Someone Telling Us What We Don’t Need In Tech]より

2010年始まって早々のTechCrunchでは早速アップルのあの石版(スレート)を巡る議論が華やかだ。我々は、今まさにコンピュータの再定義の時を待っているのかもしれない。

確かに、PCは既にその定型的な使われ方に於いてはかなり安定感のある、別の言い方をすれば「非常に退屈な代物」に成り下がってしまった。かつては時代の変革を牽引する自由の象徴だった筈の物が、今は変化の「重し」になってしまっているのかもしれない。過去の「パーソナルであることが革命的であった時代」は遠く過ぎ去ってしまっているのだ。そもそも、こんなに重くて使い勝手の悪い物をこの2010年代も使い続けるのだろうか?

アップルのタブレットを巡る期待と疑念は現状の我々のアンバランスな心理状態を反映しているように思える。変化を期待しながらも、現状を追認したい心理とが葛藤しているようにみえるのだ。テクノロジーの進化は、常に計画された物ではありえない(唯一生き残るのは、変化できる者である)。これはPCとインターネットの時代を生きてきた我々にとっては自明の理ではないか?

■Search革命に続くSocialWeb革命

たとえば、年末に読み終えた「アーキテクチャの生態系ー情報環境はいかに設計されてきたか(濱野智史著)」にあるエコシステム図は、たった1年やそこらで廃棄せざるを得なくなっている(だからといって意味がないわけではなく、変化の速度を知る上で役立つ傍証だともいえる。また「アーキテクチャーの生態系」という着眼点は未だに非常に有効である!)。

これはグーグル生態系がより進展を遂げながら、さらにその上部レイヤーに位置するソーシャルグラフとマイクロブログ(ほぼFacebookとTwitter)がライフストリームとしてリアルタイム検索の対象となり、位置情報サービスやモバイルWebと結びつくことによって新たなプラットフォームへと成長を遂げた結果である。いまや、ウェブのプラットフォーム性は大きく書き換わっている(現在、Facebook ConnectやTwitter APIを抜きにはウェブサービスの構築は考えられない)。

つまり、グーグルのもたらした「Search革命」は新たに「ソーシャルWeb革命」をもたらしつつある。

Web上のコミュニケーションやパーソナリティはソーシャルWebを通じて大きな変容を遂げつつあり(参照記事:「すべてを公開しながら生きる生き方, それがふつうだと思おう」)それはWebサービスのみに留まらずモバイルデバイスも含めた変革と軌を同じくしている。ソーシャルWeb拡大の背景には、iPhoneとAndroidに代表されるモバイルWebデバイスの進化と浸透があったことを見過すことはできない。

02

■AR体験が媒介するアンビエントストリーム

2010年の新しいディケードに注目されるべき技術としてARが多くの媒体で取り上げられているが、これは半分はYESで半分はNOだと思う。なぜなら、少なくともモバイルARに於けるARの果たす役割は、現時点では「新しいGUI」とでも言うべき位置付けの技術であり、それを通じて、どういった新種のサービスが形成されるのか?そしてそこからどういったエコシステムが台頭するのか?こそが肝心なのだ。

エコシステムは無料有料の如何に関わらず、新しいビジネスの連関=バリューチェーンの循環の動的な生々流転のことであって、それは間断なく新たな価値発生原理の変化/台頭と衰退を招来する。

だから、現状のARを巡る言説には(今後実現されるハズの物も含めた)拡張現実技術への過大評価も大いに含まれている。なぜならARを通じたUIの大変革に続く次のムーブメントがどう動くか?が、まだまだ不明だからだ。だが、その一方で、モバイルARに期待すべき点も明らかに存在している。

それは「Sc-iFiなAR体験はソーシャルWebとモバイルWebのその先を想像する想像力を喚起する」ことにこそ大きな力があるからだ。だからこそ現状のARへの過大評価は、もしかするとトータルに見ると良い面もあるのかもしれない。起業家的なアニマルスピリットは冷静な分析力、判断力だけでは起動しないともいえる。人は感情的な部分で(意識無意識に関わらず)多くの意思決定を行っていることを忘れてはならない。

最近の記事「2010年に大きく伸びる技術トップテン–タブレットからソーシャルCRMまで」を読んでみても、拡張現実と隣接するであろう技術として、「位置情報、リアルタイム検索、モバイルトランザクション、モバイルビデオ」などを挙げることが出来る。これらが何らかの形で次世代ウェブのエコシステム創造に寄与することは間違いないだろう。

そして、そこで産まれる新しいメディアとシステムの総体を指す言葉として現状はまだしっくり来る言葉が無いのだけど、そのなかでも「アンビエントストリーム」という造語は、目の前の変化の実相を捉えられていると思う。

■アンビエントストリームにコミットする意味とは?

ここで「リアルタイム検索の向こう側:アンビエント・ストリームの夜明け」の筆者 Edo Segal氏が彼の記事でアンビエントストリームについて説明している箇所を抜き出してみよう。

私が「アンビエント・ストリーム」と呼ぶものの中に主として存在するからである。それは、リアルタイムに浮かび上がってくる情報の流れであり、私たちを見つけ出し、包み込み、私たちに何かを教えてくれるものだ。

既にポイント・アンド・クリックやキーワードサーチ等の文脈に沿う操作系だけでは、現状準備されつつあるモバイルWeb環境のドライブには不十分であり(いつまでマウス&キーボードのメタファで使い続けられるか?)、ソーシャルWebを媒介した新しい情報フィードバックは生活圏をいかに可視化するのか?の前提条件を大きく刷新しようとしている。ソーシャルWebは確実に生活感覚を塗り替えつつある。

それはアンビエント(身体的物理的なエンティティを取り囲む情報環境)をストリーム(リアルタイムに更新されて行くソーシャル情報の束の流れ)として動的に感受する新しいパラダイムの登場を招いているようだ。そして、その結果、アンビエントストリームは、

  • 今後登場するモバイルデバイスへの影響:アンビエントなデバイスとは何だろうか?
  • これからの新しい情報インフラへの影響:契約形態や課金体系など含めて通信キャリアの施策が変わって行くのかもしれない。
  • 近い将来の新しいビジネスモデル(バリューチェーン)への影響:フリーミアムモデルなどを含めた、新しい収益構造がここからどんどん発生してくるだろう。

を考える上で有効なコンセプトであるという点でも注意を払う価値がある。

あるいはこの概念は、より適切なキーワードと現実化されたウェブサービスやモバイルデバイスと共に改めて目前に躍り出すのかもしれない。が、いずれにしろ「サーチ」の次に育まれた「ソーシャル」の次にあるべきパラダイムがアンビエントストリーム的な概念に依拠している可能性は非常に高いと思う。

03

■2010年のセカイカメラの開発ターゲット

さて、ここで我々の開発しているセカイカメラに関して2010年の取り組みを解き明かしてみたい。

もちろん、改めて言うまでもなく、セカイカメラにも明確な計画は存在しない(計画主義より行動主義)。が、アンビエントストリーム的ムーブメントに真正面から向かい合っていることだけは確かであり、リアルタイム検索とモバイルWebがソーシャルWebと融合されてゆく世界にモバイルARを持ち込むことによる新しい価値の結合を試みているのが現時点の頓智・だといえる。

セカイカメラはVersion 2.0.0(別名SUKIYAKI)の段階で既にTweetのエアタグ化やUserプロファイルのエアタグ化にも成功しており「セカイライフ」と呼んでいる、すれ違い通信(足跡機能)を含んだセカイカメラならではのソーシャルグラフもスタートを切っている(すれ違って足跡の残ったセカイカメラUserをエアプロフを通じてFollowすることができる)。

ただ、世界展開はまだ12月終わりに始まったばかりであり、ソーシャルARという分野もまだ知られているとは言い難い。つまり、ようやく「ARという新種のUI」が認知され始めたに過ぎない。

そういった現状のセカイカメラが、2010年にチャレンジしようとしている対象を明言すると、それは「あらゆるソーシャルなアイデンティティを束ねて時間と空間に情報をマッピングできる動的なパーソナリティ支援環境」を作れないだろうか?ということだ。それは、たとえば「ウェブとリアルの対話関係を作り出したい!」というフレーズとしても説明可能だと思う。

■ウェブとリアルの対話関係とは?

たとえばPCでウェブを見ていてもリアルに把握し辛いことが沢山ある。その場に出掛けないと把握しづらい様な情報「スポーツ観戦中の天候やムード」「ライブ会場の盛り上がりや反応」「特にディティールが気になる商品の手触りや質感」「世界各地を旅しての体験性や人との触れ合い」…。

もちろんサーチして情報を集積して想像することは幾らでも出来るし、動画のストリーミングで把握可能なことも多い。ただ、モバイルARを通じて接続されたユーザーとソーシャルなコミュニケーションを通じて同期・非同期に関わらず対話できたらどうだろうか?

また、この視点は逆にモバイルARユーザーの側から見ても有効だといえる。モバイルAR的なデバイスを持って動き回っている時に、その場その時に必要な情報が、PCとWebの環境から適切に提供されるような状況は非常に望ましい筈だ。

自分自身が「秋葉原で買い物を頼まれているのだけど、買い求められる場所や商品の個別評価、適正価格、アフターケアの評判などを適宜得られる様な環境」を考えて見た場合にイメージし易いのかもしれない。それは、単に近傍のエアタグだけでなくウェブの集合知等がリアルタイム検索やソーシャル検索などを通じて臨機応変に(動的/自動的に)エアタグ化されて提供されるような環境だ。

ユーザーステイタスに対してアンビエント的に情報が降りて来る環境とは?Twitter的なたとえで言うならFollow関係やハッシュ検索などと位置情報や時間属性などとマトリックス的に組み合わされ、細かな情報検索のテクニックを用いることなく、情報がオートマティックに構成され、降り注いで来るような環境をデザインしたいと考えている。

■そして「SixthSense」へ…

そのような情報のアンビエントが実現するならば、アンビエントストリームは恐らく下のような新しい用途をもたらすだろう。

1)パーソナリティをマネージするインターフェイス:

個人とは非常に重要な知的情報へのポインタであり、ストレージであり、ネットワークハブでもある。アンビエントストリームはこのようなエンティティ=パーソナリティへのアクセスを容易にするだろう。

2)ドキュメントをマネージするインターフェイス:

ドキュメントはPCのデスクトップにあるだけでなく、図書館やオフィスなど現実の場所にも膨大に存在しており、場所と文書を関連づけることでよりアクセスし易くなる。アンビエントストリームは場所・空間的な情報アクセスを容易にするだろう。

3)デバイスをコントロールするインターフェイス:

あらゆるデバイスはWebと接続可能な方向へシフトしている。そして、AR的なインターフェイスとモバイルデバイスはそれらにアクセスできる、非常に簡単で強力なコントローラーになりうる。そして、その接続性が発展することで、アンビエントストリームの対象領域はより拡張していくだろう。

そして、現時点でこの技術的パースペクティブに最も近いビジョンを提示しているはMITのSixthSenseだろう。MIT Media LabのFluid Interfaces Groupで研究を続けているPranav Mistry(彼はまだ20代の若者、インド/ムンバイ出身のテクノロジーオプティミストだ。早稲田の研究会で出会って語り合った内容は非常に興味深かった) が開発中のテクノロジーSixthSenseのビデオはきっと見ておいた方がよい。

現状はまだよちよち歩きのモバイルARあるいはソーシャルARの未来像が、そこにはある。そして近日ジョブズが披露する筈のタブレット(あるいはスレート)も、いずれはこのようなアンビエントな世界観へと繋がるのではないかと考えている。

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“[jp] ウェブとリアルは対話し始める 2010年のセカイカメラ” への4件のフィードバック

  1. […] SixthSense 頓智・の井口尊仁氏の寄稿をおもしろく読んだ。 […]

  2. sora より:

    読み応えあるけど記事長いよ〜。もう少し簡潔にしてくれるとうれしい。セカイカメラ期待しています。

  3. 時代 より:

    長文読解力

  4. Takahito Iguchi より:

    長文スイマセン。もう少し分かり易く説明できるといいのですが..。さらに精進します!

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