企業ITのクラウド化は竜巻のような大ブームになる–乗れば天国, 乗らねば地獄

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このゲスト記事を書いたAaron Levieは、Box.netのCEOで協同ファウンダだ。Box.netは2005年に、人や企業がさまざまな場所にある情報に容易にアクセスし情報を共有できることを目的に創設された。Box.netは今では、数百万もの個人、中小企業、そして多国籍の大企業にも利用されている。.

消費者たちはすでに、FacebookやYouTube、Gmailなどのクラウドサービスをすんなりと受け入れている。しかし、企業はそうでもない。中小企業は、Webを利用するソリューションを、その費用対効果の大きさゆえにかなり取り入れているが、クラウドは今のところ企業のITの入り口あたりで足踏みをしている。多くの企業が、クラウドは大規模な展開が困難、あるいは、自分たちとは縁遠い技術だと思っている。しかし大企業ではこのところ、クラウドベースのサービスが急速に普及し始めている。

この2010年代の来(きた)るべき変化は、Oracle、Microsoft、Lotus*、Sunなどが先頭に立って引っ張ってきた90年代のITの崩壊を意味している。”Crossing the Chasm”や”Inside the Tornado”を書いたGeoffrey Mooreは、新しい技術が企業世界に普及していく形として、最初は一握りの革新的企業→次にごく初期の採用企業→先見の明のある少数の企業→そして最後に各社のIT部門に普及、という段階を挙げている。これらの成長段階は、まさにTornado(トルネード、大竜巻)の発達段階に似ている。〔*: Lotus, 今言うならIBM。〕

このトルネードは、今、次の成長段階に入ろうとしている。これからの2年間で、企業のIT部門は今日の初期的採用企業や先駆的企業の後を追い、クラウドをほぼ完全に受け入れて、コンテンツやアプリケーションやプロセスをWeb上に移すだろう。では、何がこの嵐の動因になっているのだろうか? それは、プラットホームの成熟、世代の変化に伴う価値観の変化、そして明白な経済性、この3つが組み合わさったものだ。これらによってクラウドベースのソリューションは、将来的には、とくに技術先導型ではないごくふつうの企業においても、拒否できない選択になっていく。

プラットホームは完備した

今日のWebベースのプラットホームは、企業が安心して業務を託せる本物のソリューションへと完成しつつある。それはもはや、小企業や初期的採用者だけのものではない。インフラをクラウド化したAmazon EC2(IaaS, infrastructure-as-a-service)、 プラットホームをクラウド化したForce.com(PaaS, platform-as-a-service)、そしてソフトウェアをクラウド化したGoogle Apps(SaaS, software-as-a-service)、今日のクラウド環境の、このような広がりと成熟の中で、今では大企業にも小企業にも、クラウド上で自己の事業を安全円滑に動かせるための十分な選択肢が目前に与えられている。インフラ、プラットホーム、ソフトウェアといった各部位間の接続性も、今ではかつてなかったほどに良好である。IT部門の管理者が、自社のニーズに合った部位を自由に選んで、それらを自力で接続することも可能だ。

Google Appsが全時間の99.9%以上のアップタイムを…災害時賠償制度付きで…保証していることが象徴しているように、突然のダウンタイムへの心配はもはやクラウドを敬遠する正当な理由にはならない。The Radicati Groupの調査によると、自社でメールシステムを動かしている企業の、2008年の事故的ダウンタイムが平均30〜60分/月、計画的ダウンタイムが36〜90分/月であった。これに対しGoogleのエンタプライズ部門担当のMatthew Glotzbachの試算では、ときどき停電のあった2008年でも、Google Appsのダウンタイムはわずかに10〜15分/月であった。しかも、サーバの復旧は企業のITチームではなくクラウドのベンダがやってくれるのだ。

組織も仕事のやり方も変わる

アプリケーションとプラットホームが変わるだけでなく、それらを使う「人」も変わる。企業の中に、新しいタイプの“知識労働者(knowledge worker)”の一団が形成されてくる。この新人類は、青年期を、オンラインのチャットや、見知らぬ人やフレンドたちとのFacebook上での交流などで過ごし、自分のハードディスクに大量の音楽やムービーをダウンロードして蓄えている。こういうタイプの社員は、従来の面倒なデスクワークを嫌い、たとえば必要な情報を見つけるためにはGoogleの検索に頼ろうとする(筆者もまさにその一人だが)。また彼らは、ITのポリシーというわずらわしいもの…メールの保存期間、データの守秘リポジトリ化など…を嫌う。そんな彼らの成長経験とフィーリングに唯一合うのが、クラウドベースのITサービスが提供する、効率と良好なアクセス性だ。Salesforceのような伝統的な企業向けサービスですら、最近ではSalesforce Chatterのような、消費者のWeb体験を模倣するツールを提供するようになっている。つまり、あらゆる企業の内部〜対外コラボレーションが、彼らが青少年期に親しんだソーシャルネットワークと同じような、気軽で使いやすいものになっていくのは、もはや時間の問題である。そして、もちろんその種のサービスも、クラウドから提供される。

クラウドは安上がりである

不況も、そろそろ出口が見えてきたようだ。これまで耐えに耐えて、生き残りに必死だった企業も、ギアを正常時のトップに入れてくるだろう。でも、不況とは関係なく、株価がつねに高かったのはどこか、ご存じだろうか? それはSalesforceだ。脆弱な経済の中だからこそ、企業はクラウドに乗り換えようとする。そこに、Salesforceなどの大きな成長の余地がある。いちばん単純に言えば、システムを自前で抱え、自力で立ち上げて自前でメンテナンスしていくよりは、クラウドを使ったほうが断然安上がりなのだ。経済が回復の兆しを見せている今でも、過去数年に起きた技術の買い方…技術購買…の抜本的な変化はそのまま持続している。高コストは必ずしも高品質につながらない。Microsoftのような巨大なソフトウェアベンダの製品だからといって、必ずしも信頼性が高いわけではない。一方、クラウドサービスをベースとするシステムは、その立ち上げに人手がほとんど要らない。5年前の中ぐらいのサイズの企業なら、メールだけのために、その専門技術者、コンサルティング、予備のためのインフラなど、大きな費用要因を抱えた。今なら、システムへのエントリはクレジットカードのトランザクションにすぎないし、物理的なインフラはない。移行に要する時間がとても短くて、プラットホームの管理も簡単だ。

IT部門の方向性が変わる

企業の競争力強化に貢献しないインフラや技術を管理することは、競争上の不利を招く。「クラウド大竜巻」が接近してくると、ITのエキスパートたちの役割や優先事項も変わってくる。従来のように、事業の各文脈を構成するアプリケーション(CRM、メール、ファイルサーバ、検索、等々)を直接管理するのではなく、会社のパフォーマンスと競争力強化に寄与する技術*を重点的に扱うようになる。これによって、IT部門には初めて、企業戦略レベルの「意味」と「目的」を見る目が備わる。単なるシステム職人の集団から、技術サービスを通じて会社を成功に導く舵取りへと変身し成長する。〔*: 従来の“タスク”縦割り志向ではなく、企業の“目的”実現に奉仕する横割りIT。〕

なぜ、今、こんな極端なことが言えるのか? ITの意思決定を担当する重役や上級管理職たちが、Google、Amazon、Salesforce、Box.netなどのドアをノックし始めているのだ。Boxの2009年の売上に占める上位10の顧客は、誰もが知っている有名企業のIT部門だ。これらのITバイヤーたちの共通項は何か? うちの顧客の場合は、コンテンツ管理をクラウドに移したいのだ。従来型のECMに何十万ドルも投じるのは、もうこりごり。自分たちの仕事が、毎日、サーバ管理、ストレージの限界対策、ダウンタイム対策などで追われまくるのも、もうたくさん! IT部門が、企業が今抱える問題や課題に直接タッチし、テクノロジサイドからのソリューションを素早く提供していきたい。これまでは企業にとって経費にすぎなかったITが、人とプロセスから成るソリューションの提供者として、利益源になる。180度の逆転だ。

では、何が足を引っ張っているのか?

クラウドにデータとアプリケーションをゆだねてしまうことには、セキュリティの懸念がつきまとい、企業をためらわせている。ひとつの通信チャネル上に複数のアイデンティティが互いに接続しているという今のWebの姿、そして認証手段に主にメール〜メールアドレスを使っていること、これが今日のWebベースのソフトウェアのセキュリティに不安の影を投げかけている。TwitterでGoogle Docsがリークしたのは、そういう不安が的中した例の一つだ。でも、従来のITが完全にセキュアであったわけではない。むしろクラウドITのプロバイダたちのほうが、鍵のレパートリーは多いし、鍵の改良に絶えず努めている。しかも彼らにとって、セキュリティ事故は致命的だ。二要素認証、中央集権型ネットワーク、そしてハードウェアによるセキュリティ、さらに、今日のクラウドプロバイダが実装しているそのほかのセキュリティ規格、これらを合わせると、総合評価として、クラウドのセキュリティは従来のITよりも高いと言える。

クラウドサービスのベンダたちは、最後のハードルとして、セキュリティの問題に積極的に取り組んでいる。幸いにして、プラットホームの成熟と、新しいタイプの知識労働者(前述)、費用の圧倒的な安さ、といった要素により、この大竜巻はおとろえることなく、日に日に発達している。企業によるクラウドの利用が今後本格化するということに関しては、衆目一致しているが、まだ、それを5年とか10年という遠いスパンで考えている人が多い。しかしクラウドによる企業のITの変貌は、今年〜来年という至近のペースで、企業世界をまさに竜巻のように襲うだろう。クラウドは、いったん採用すれば、それ自身が本質的にスケーラブルだ。内製のインフラのように、セットアップに数か月もかかることはない。アカウントを取ってから、全社で使えるようになるまでの時間は、せいぜい数時間だ。従来のプラットホームのように、社内での絶えざるメンテナンスは要らない。面倒で退屈な管理も、教育訓練も要らない。Webベースのプラットホームは、同じくWeb上の消費者向けサービスと同様に、エンドユーザフレンドリにできるし、そうなるべきだ。またクラウドベースのプラットホームは複数を組み合わせて使えるから、従来のITのように一つのベンダにロックインされるおそれがなく、画一主義の不便を我慢する必要もない。各企業のニーズに合わせた、柔軟なソリューションの設計が可能だ。

多くの企業が、これまでの数年間をサバイバルモードで過ごしてきた。損失を抑え、不況に耐え抜くことに必死だった。来るべきトルネードは、その中へ早期に飛び込む者にとっては、企業経営とコンピューティングとの関係をラジカルに一変する変化の風となる。しかし抵抗を続ける企業には、単なる災害でしかないだろう。企業のITへのクラウドの浸透がいったん始まれば、それは加速度的に普及するだろう。採用のピークは2010年、トルネードの最大化は2011年と思われる。Geoffrey Mooreが詳説した1990年代の従来型ITと違って、それはOracle、Microsoft、Lotus、Sunなどの大企業が牽引する革新ではない。彼らは今、硬直したエコシステムと製品アップグレードの無限悪循環の罠にはまっている。クラウド革命を推進するのは、新世代の、切れ味の良い、機敏で小回りの効くソフトウェア企業だ。彼らが、トルネードを大きく発達させる原動力となり、ITに未曾有の変化をもたらし、早期採用企業の競争力を強化する。そして最終的には、企業のITの形を完全に変えてしまう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

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