Apple、秘密のクラウド戦略とLalaが最重要である理由

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本稿は、デジタル音楽業界で12年の経験を持つMichael Robertsonによるゲスト寄稿である。同氏はデジタル音楽のパイオニア企業、MP3.comのファウンダーであり、CEOも務めた。現在は音楽データベース会社、MP3tunesのCEO。RobertsonはGoogle Voiceのアドバイザーでもある。

この数年間、Appleが1曲1ドル(現在は$1.29)のiTunesビジネスを補完する月決め購読サービスを始めるのではと噂されているが、同社が近日中に予定しているプランは、それとは大きく異なり、またもや同社がデジタル音楽業界を新時代に率いる立場になろうとするものだ。広く普及したiTunesソフトウェアを活かし、Appleは同社のユーザーをほぼ一夜にしてクラウド音楽サービスへとアップグレードしようとしている。これはAmazonをはじめとするクラウドミュージックサービス各社を出し抜こうという、大胆な動きだ。レコード各社は、これ以上Appleの独占を許すことを懸念しており、Appleの新戦略が主要レーベルとの新たな契約を回避するよう計画されているのもその理由からだ。

最近Appleが、デジタル音楽ベンチャーのLala買収したことで、iTunesの定期購読サービスへの憶測が再燃した。購読サービスは巷にあふれているが(Napster、RhapsodySpotifyPandora等々)、高額ロイヤリティーに見合うために必要な購読者数100万人に達したところはない。専門家らは、Appleのデザイン能力やハードウェアてね統合があれば、購読システムは可能だろうという考えだ。また、Lalaのデジタルライブラリーや、主要レーベルとの契約、さらには10セントのウェブ音楽レンタル等のビジネスモデルを切り盛りしてきた経営チームを活用することを考えると、話が現実味を帯びてくる。これは論理的な推測ではあるが、さまざまな業界筋と話した結果、Appleが近々購読サービスを行うことはなく、同社には全く異なる計画があることが明らかになった。

LalaはAppleの音楽の将来に関して重大な役割を演じることになるが、それは上に挙げた理由からではない。Lalaの持つ主要レーベルとの契約は譲渡不可のため、新しいiTunesサービスで使うことはできない。10セントレンタル音楽は、軌道に乗ったことがない上にモバイル機器をサポートしていないので、Appleには殆ど価値がない。どこに価値があるかと言えば、そのパーソナル音楽ストレージサービスであり、これはLalaの事業の中でしばしば軽視されがちな部分だ。AppleがiPodを始めた時と同じく、Lalaはどんな音楽サービスも、ユーザーが既に所有している楽曲を取り込むべきであることに気付いた。Lalaの初期設定プロセスでは、個人の音楽ライブラリーをオンラインで保管しておき、同社がウェブ販売する楽曲と共に、どのブラウザーでも再生できるためのソフトウェアが提供される。このテクノロジーおよび技術陣、経営陣こそがAppleにとってのLalaの真価である。

近い将来提供されるiTunesの改訂版では、ユーザーの曲目リストをネットにコピーし、ブラウザーまたは接続したipodやタブレットで利用できるようになる。Lalaのアップロード技術が、将来のiTunesのアップグレードに含められることになれば、「アップグレードが利用可能です」というダイアログボックスを表示するだけで、1億人を超えるiTunesユーザーに自動的にインストールされることになる。これがインストールされると、iTunesはユーザーの全メディアライブラリーを、同社のパーソナルモバイルiTunes領域へとバックグラウンドで送り込む。ひとたびアップロードされれば、ユーザーは自分の曲、ビデオ、プレイリストを、ブラウザーベースのiTunesサービスと専用URLを使って、自由に楽しむことができる。

Appleがこれまでに販売した数千万台のiPod、Touch、AppleTV、iTablet等をモバイルiTunesと繋ぐことによって、ユーザーはさまざまなAppleブランド機器から、シームレスに自分のメディアを再生できるようになる。メディアはユーザーの個人ライブラリーから提供されるので、Appleはデバイスや地域の制約に関わる悩みから解放される。iTunes Storeの利用者は、今と同じように音楽やビデオを購入し、ダウンロードされるが、ダウンロード後は、自動的にモバイルiTuneエリアに登録され、どこからでもアクセスできるようになる。ここでも、所有権はユーザーにあるため、レコード会社や出版社からライセンスを得る必要がない。

何千人ものエンジニアを抱えるAppleが、なぜLalaの力を必要とするのか、疑問を持つ向きもあるだろう。たしかにAppleがLalaの技術を模倣することは可能だっただろうが、ここは時間が勝負であり、LalaによってAppleは、パソコンソフトウェア事業からクラウドサービスへのすばやい転身が可能となる。Appleは、知識豊富なデジタル音楽技術チームに加えて、既にアップロードとウェブ再生に使われているコードベースが開発基盤として手に入る。この戦略には前例がある。iTunesソフトウェアはAppleで内製されたものではなく買収によって得たものだ。遂にAppleは、機知に富み頭脳明晰だが時として常軌を逸するLalaのCEO、Bill Nguyenを捕まえた。同氏は、Appleの将来を担う役割を果たすことになる(いったいどうやってJobsとあの注目を欲びたがるNguyenが共存できるのかを心配する声もあるが)。

テクノロジー企業にとって、核となる強みを作りそれを維持していくことは決定的に重要だ。この基盤はAppleにとって、収益の流れを大きく引き寄せるだけでなく、その他のプロジェクトを立ち上げる拠点にもなる。考えてみてほしい、AmazonとEコマース、MicrosoftとOS、Googleと検索、そしてAppleとメディア。Jobsは、デジタル世界がPCからクラウド中心のプログラムやサービスへと移行していることを、鋭敏に感じとっている。Appleにとってこの変遷をリードすることは不可欠であり、さもなくばメディアの主導をAmazon、Real、Microsoft、Yahooらの手に渡すことになる。Lalaは、Appleのクラウド戦略を加速することで、同社のメディアにおける特権が侵害されことを防ぐ手助けをする。iTunesユーザーは、2010年中にはモバイルiTunesを手にすることができるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)

“Apple、秘密のクラウド戦略とLalaが最重要である理由” への5件のフィードバック

  1. […] And Why Lala Is Critical” by Michael Robertson: 19 January 2010 TechCrunch Japan: “Apple、秘密のクラウド戦略とLalaが最重要である理由“: 20 January 2010[Nob Takahashi […]

  2. […] Apple、秘密のクラウド戦略とLalaが最重要である理由 […]

  3. […] 昨日、TechCrunchでは元MP3.comのCEOだったMichael Robertsonによる今後出てくるAppleのクラウド戦略に関する寄稿を掲載した。iTunesのクラウド化は、この戦略の中核をなすものだ。そして一旦始まれば即座に全ての流れが生まれる可能性があると記事に書かれている。また昨年9月にはiTunesのクラウド化への流れが必然である旨の記事も掲載している。この動きは加速しているようでもある。Appleが最近音楽系スタートアップのLalaを買収したのも、Lala内の資産を手っ取り早く活用してその方向に沿って動き始めようとするものだ。そしてこの買収にはそれ以上の狙いもある。 […]

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