Time To Know

学校の授業を19世紀(工業化社会)型から21世紀(情報化社会)型に変えてしまうTime To Know

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Time To Knowは、これまであまり知られていなかったイスラエルのスタートアップだが、いつの間にか社員350名、総資金$60M(6000万ドル)の中堅企業に成長している〔2004年創業〕。しかもこの会社は、非常に難しい課題に日々挑戦しているのだ。

Time To Knowは、ある一人の男のビジョンから生まれた。それは、これまでの19世紀型の学校の授業を、一挙に21世紀型に変えることだ。その起業家はShmuel Meitar、イスラエルのハイテク企業を代表するAmdocsの協同ファウンダだ。MeitarがTime To Knowに対してどれだけ真剣か、それは彼が同社の唯一の投資者であることからも分かる。つまり同社が得た$60M(6000万ドル)の資金は、全額彼が出したものだ。

Time To Knowは、今学校で行われている授業は工業化社会の時代に設計されたものだ、と考える。教師が教室の前面に立つ。壁に黒板があり児童生徒は机に向かっている。1800年代の教師がタイムワープして2010年の教室に降り立ったら、どうなるか? 彼女は自分の授業スタイルをまったく変えることなく、すぐに授業を開始できるだろう。考えてみれば、それは実におそろしいことである。

Time To Knowによれば、今の学校が非効率である理由は3つある。第一に、時代や社会との適合性、というより不適合性(irrelevancy)。今子どもたちが生きている世界は、大量の刺激に満ちあふれた情報化社会だ。そんな子どもたちが、ただ座って、聞いて、唯一の出力として試験がある、という‘受動的学習(passive learning)’を喜んで効果的に受け入れると期待するのは、完全に非現実的だ。第二が、複数の人間がいるところに必ずある差異(variance)だ。均質的な学習というものはありえないし、児童生徒たちの理解力も均一ではない。19世紀型の授業は、差異に前向きに対応できない。第三が評価…というよりフィードバックループだ。今の学校の試験(学期試験など)は、子どもたちに3か月前に習ったことを思い出させようとする。それが単なるランク付けにおちいり、個々人の学習を強化していくためのフィードバックループになっていないことに、教師たちは気づいていない。

Time To Knowが目指すものは、教材のコンピュータ化や電子黒板といった末梢的なソリューションではなく、もっと全体的なアプローチとして、授業を「教えること」から、児童生徒自身が「学習を構成していく営み(Constructivist Learning, 構成主義的学習)」に変えることだ。そこでは学習と、学習から得る知識が、児童生徒自身の経験の中から育(はぐく)まれていく。

学校では、子どもたちが勉強する環境が教室であり、あてがわれるコンテンツがカリキュラムだ。そういう基本形式に合わせてTime To Knowは、次のようなインフラと運営要件を学校に要請する:

インフラストラクチャ: 児童生徒一人に1台のノートパソコンまたはネットブックを与える。教師もノートパソコンを持ち、それをプロジェクターに接続する。教室内での移動性を確保するために、EthernetではなくWiFiによるインターネット接続を整備する。

サポートと技術サービス: Time To Knowのカリキュラムを採用した学校は、自前で技術サポートを行う能力を持つこと。児童生徒のネットブックに技術的問題が発生したときには、ITサポートの専門家を数日待つのではなく、その場で直ちに対応できること。

学校は教師たちに、Time To Knowのカリキュラムの遂行に関する教育訓練とサポートを提供する必要がある。これは当たり前のことのようではあるが、この計画の成否を左右するアキレス腱のような部分である。教育訓練とサポートは、Time To Knowまたはサードパーティが提供する。

Time To Knowはあくまでもソフトウェア企業であり、その管理アプリケーションとアプレットとコンテンツはすべてクラウド上に存在し、Webブラウザからアクセスする。システムの主要部位は以下の2つ…「学習管理システム」と「カリキュラム」…である:

学習管理システム: これは教師の司令塔であり、この管理アプリケーションを使って教師は児童生徒の進歩を検分し、クラスの成績動向を把握し、翌日の授業を計画する。

また教師はこのアプリケーションを使って学習の過程を独自に計画化し、児童生徒に宿題を与え、児童生徒の進歩に関するレポートを作成できる。教室では各児童生徒がノートパソコンを使っているので、教師は個人個人の進歩をモニタでき、各生徒と個人的に内密にコミュニケーションできる。

このアプリケーションはきわめて堅牢であり、その主な機能として次のようなものがある:

  • 警報管理: 進歩の状況をリアルタイムで通知し、特別の注意や支援が必要な児童生徒に関して教師に警報する。
  • コンテンツプレビューとシミュレーション: 教師は授業を自宅で予行演習できる。実際の授業の前に授業プランを検討することができる。教師がその授業を教室で実際に行うと、システムはそこで使われた学習活動や児童生徒の達成度などのデータの記録を開始する。
  • ギャラリー: 児童生徒は自分の作品を共有ギャラリーに提出して、クラスメートに批評してもらったりクラスでディスカッションする。教師は児童生徒を複数のグループに分けてグループごとに異なる宿題を与え、その成果を全グループにギャラリーで共有させたり、議論させたりする。またクラスメートやグループのプロジェクトにコメントを述べることを奨励して、コラボレーションや建設的批評を盛んにする。これらは授業の一部でもよいし、授業後の活動でもよい。
  • 管理: 教師、校長、教頭などは、クラスの進歩(標準課程をどこまで進んだかなど)や達成度(学力など)をモニタして各種のレポートを作成する。システムが、データの分析やグラフ化、レポート作成などの作業を助ける。また技術的な要素をコントロールするための管理ツールもシステムが提供する。

カリキュラム: Time To Knowが設計し作成するものは’完全なデジタルカリキュラムカバレッジ(full digital curriculum coverage)’と呼ばれ、そこには1学年ぶんの授業計画、学習活動、宿題などが含まれる。対象教科は算数(数学)、理科、国語、社会の4科目で、対象学年は幼稚園も含む13学年なので、Time To Knowの制作量はきわめて多い。ほかのものに例えるなら、Time To Knowの1年の制作量は長編アニメ2本ぶん近くに相当する。

しかしたいへんなのは量だけではなく、州や国の基準に合わせる作業だ。たとえばテキサス州で承認されたカリキュラムは、一部手直ししないとニューヨーク州では承認されない。Time To Knowの350名の社員のうち、120名が授業設計担当(いわば‘教師’役)、60名がグラフィックアーチスト(イラストレータやアニメ作者も含む)、80名が技術者である。

これまでTime To Knowが作ってきたのは、イスラエルの学校用のカリキュラムでは、対象学科/学年が4、5、6学年のヘブライ語、英語、そして算数だ。アメリカの学校向けには、4,5学年の算数と国語の年間カリキュラムを作った。2011年には3学年と6学年が加わり、学科は4つの学年すべてに理科が加わる。

カリキュラムを構成する教材は、ムービー、画面上の教科書、紙の上で行う演習の混成だ。たとえばテキサス州用の4学年の算数では、81回の授業成分があり、それぞれの時間が120分である。それらの授業成分が、標準学力テストに対応する学科内容を完全にカバーする。授業成分には、次のものが含まれる:

  • Rich Exploration Applets(リッチな探求アプレット, 後述)との対話をベースとする学習活動。それにはグループによる活動、教師指導型、そして個人用などが含まれる。
  • その授業成分内で教えられることと密接に関連した教育的ゲーム。
  • 教師がその授業成分のコンセプトを理解しモチベーションを持つためのガイダンス。
  • その授業成分のコンセプトを、紹介導入し、詳説し、増強するための教育的短編ビデオ集。
  • 児童生徒を標準テストに備えさせるためのリビュー活動。

教師は複数の授業計画や演習を任意に組み合わせるなど、柔軟性を発揮してもよい。また、YouTubeのビデオやWeb上のサイトへのリンクなど、外部素材を教材に加えてもよい。Time To Knowの経験によると、アメリカの教師はカリキュラムの構造に縛られがちだが、イスラエルの教師は外部素材を自由に活用することが多いそうだ。

カリキュラムが提示されると児童生徒はそれに対し、’Rich Exploration Applets(リッチな探求アプレット)’を使って対話的に参加する。これらのアプレット(applet, 小さなアプリケーション)が提供する段階的な学習過程を通じて、児童生徒は学習能力をときには直線的に、ときにはらせん状に…反復や回り道を経て…身につけ成長させていく。これらのアプレットの目的は、各学科で提示されたコンセプトに関し、児童生徒に、自分で知りたい、調べたい、実験してみたい、発見したい、議論したいというモチベーションを育(はぐく)むことである。児童生徒自身がモチベーションを持つことによって、コンセプトの理解が深まり、状況に応じてそれらの拡張や脚色もできるようになるのだ。

たとえばジオボードアプレット(Geoboard Applet)(右のサムネイル)は、児童生徒の建設的な問題解決力を引き出す。これには4つの領域があり、最初のワークグリッドでは児童生徒がいろんなものを操作したり、線や多角形を描いたり、言葉や文章を書いたり、ものの長さなどを測ったりする。第二の領域はツールボックスで、数式を書いたり、絵を描いたり、彩色をしたり、測定をしたり、テキストを入力したりするためのツールがある。第三の領域では、視覚的なオブジェクトの集まりをグリッドの上へ置いていく。第四の領域はExternal Atoms Zone(外部アトムゾーン)と呼ばれ、児童生徒は教師からの指示に基づいて、自分が到達した結論に関するいろんな質問に答えていく。アトム…最小不可分成分…は質問と指示から成り、その中身が徐々に(答えによって)露呈されて、その児童生徒の進歩を表していく。

カリキュラムが不十分と思われたら、改変も可能だ。PAL(Practice and Learning, 演習と学習)と呼ばれる部位が、算数と国語における各児童生徒の答えと、彼/彼女の知識と対照させている。その結果、各児童生徒の強い部分〜弱い部分に応じた演習の方針と内容を、その場ですぐに作り出すことができる。

児童生徒は教室で教わった素材に自宅でもアクセスして、宿題をしたり、ギャラリーのアイテムをリビュー/コメントするなどができる。

Time To Knowはパイロット事業(先導的事業)をテキサス州の4つの学校とイスラエルの10の学校で行ってきた。2010/2011の学年には、合衆国で15、イスラエルで50のパイロット事業を計画している。

教師からのフィードバックが興味深い: 86%が、教える時間が増えたと報告している。規律維持などに費やす時間が減り、児童生徒に対する個別指導の時間が授業時間内で増えている。教師はまた、学習過程をガイドし支援することに自主性を発揮できるようになった、やりがいが持てるようになった、とも報告している。

児童生徒からのフィードバックでは、この新しい学習方法が楽しい、違和感がなく自分に合っているという声が多い。教えられる学科に対する、モチベーションと積極性の増加も挙げられている。つまり、子どもたちは算数を楽しむようになったのだ!

また、イスラエルの財務大臣やイスラエル銀行は、Time To Knowの方法がGDPの増加に貢献すると見ている。

ヘブライ語で”LaAsot Kavod LaMedina”といえば、国の誇りという意味だ。スタートアップに対してはめったに使われない言葉だが、GDPを増やすとまでほめられたTime To Knowにはぴったり。われわれも、彼らの努力には敬服したい。


T2K: a Paradigm Shift in K-12 Education from Time To Know on Vimeo.

[原文へ]
[米TechCrunch最新記事サムネイル集]

(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

“学校の授業を19世紀(工業化社会)型から21世紀(情報化社会)型に変えてしまうTime To Know” への4件のフィードバック

  1. 21世紀型の教育へシフト…

    朝一番でメールチェックをしつつ、twitterをながめていたら、retwitte……

  2. 学校の授業を19世紀(工業化社会)型から21世紀(情報化社会)型に変えてしまうTime To Know…

    ……

  3. keitaro-news より:

    [教育]義務教育を『する』だけの小、中学校は必要か?…

    日本国憲法 第二六条 教育の義務 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 国は国民の最低限度の文化的(知的)生活を保障しなければなりません。「教育を受ける権利」がそれにあたります。教育基本法が、「経済的な…

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