Marc Andreessen、旧メディアにアドバイス―「生き残りたければ船を焼いて退路を絶て」

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伝説によると1500年代にメキシコを征服したコルテスは、メキシコに上陸したとき、それまで乗ってきた船を焼くよう部下に命じたという。一切の退路を断つことによって全員に前に進むしかないと決意させるためだったとされる。Netscapeのファウンダーで、現在はNingのファウンダー、会長のMarcAndreessenは旧メディア企業に対して同じアドバイスをしている―「船を焼け」。

私は昨日(米国時間3/5)、ニューヨーク市を訪れていたAndreessenと会って話す機会があった。オールド・メディア企業がデジタル化の波を乗り切るためにはどうしたらいいかという点について話合っていると、Andreessenはコルテスの比喩を持ち出した。新聞、雑誌などの印刷メディアについてのアンドリーセンの長年の持論は印刷版を完全に廃止して全面的にウェブに乗り換えろというものだ。「船を焼かなきゃとダメだ。そうでなければ中途半端になる」と彼は主張した。「旧メディアがもし自分で船を焼かなくても、結局誰か他の連中に船を焼かれることになる」というのだ。

Andreessenは以前、New York Timesはもうダメだと主張して大きな反響を呼んだことがある。その理由として、New York Timesが旧態依然たる印刷媒体にいつまでも固執していること挙げた。しかし最近メディア業界はAppleが近く出荷を開始するiPadを始めとするタブレット・コンピュータをめぐって大いに興奮状態にある。つまりこうしたデバイスが新聞や雑誌に新たなデジタル・コンテンツの有料購読のビジネスモデルを与えてくれるのではないかという期待が湧き上がっている。私はAndreessenもそういう意見かどうかを尋ねてみた。iPadが新たな状況を生み出すとは思わないか?

ところがAndreessenは逆に「TechCrunchはiPadでコンテンツを有料化する方向に転換するのか?」と問い返してきた。私がぽかんとして見返すと彼は笑った。「最近登場したウェブ出版(彼はBusiness Insiderへの投資者でもある)の運営者は誰一人、有料化を考えていない。新しい連中は誰一人、iPadを有料化の道具にしようなどとは1ナノ秒だって考えやしない。そんなことを考えるのは旧メディアの連中だけだ」と彼は言った。

しかし有料アプリは売れている。「タッチスクリーン版の美しい雑誌に金を払う読者はいるのではないだろうか、と私は尋ねた。「それはもちろん本当に何かとんでもなく素晴らしい、新しいコンテンツだったら売れるかもしれない。しかし普通の記事に写真やビデオがおまけについているくらいじゃダメだ」とAndreessen。これには私も同意見だった。その程度のものであればCD-ROMと変わり映えしない

「iPadはすばらしいブラウザになるだろうが、いくらiPadが売れてもウェブ自体とは比べ物にならない。ウェブには20億人のユーザーがいる。iPadは500万台も売れたら大成功だろう。」

Andreessenの見るところでは、ITが登場してからすでにこれほど長い時間が経ったにもかかわらず、 メディア企業にはITを理解する能力がいっこうに育っていない。「IT企業の行動の原理がまったく理解できていない。IT企業の得意なことは絶えざる自己変革だ。Microsoftがちょうどそれをやっている最中だ。Ballmerは愚痴などこぼしていない。彼は課題に正面から取り組んでいる」。Intelもそうだった。Andy Groveは古いIntelを解体してメモリーメーカーからCPUメーカーへと生まれ変わらせた。IT企業のCEOはみなそうしてきた。Andreessenが過ごしてきた業界ではそれが鉄則だったからAndreessenにはそれ以外の道は考えられないようであった。テクノロジーは日々進歩していく。人はそれに適応しなければならない。メディア企業もこの教訓を早く学ばねならない。コンテンツがデジタル化されて消費者に届けられる限りにおいてメディア企業もIT企業たらざるをえないのだ。

iPadであろうとなかろうと大手メディア企業が考えているvideoニュース記事の有料化といった方向は良く言って近視眼的だとAndreessenは考えている。圧倒的多数のユーザーが存在する場所はオープンなウェブなのだ。有料購読や有料アプリの販売といった戦略は「われわれは市場がどこにあるか知っているが、そこには行きたくない」と言うのと同じくらい不合理である。大手メディアは新聞や雑誌の印刷版を閉鎖し、いわば「船を焼いて前に進む」以外に最大のユーザーが待つウェブという市場には決してたどり着けないだろうとAndreessenは主張する。「もちろんリスクは大きい。場合によっては何十億ドルという売上や多数の人員がリスクにさらされるだろう。私の考えでは最大で売上と人員の80%が失われるリスクがある。しかし変化は起きている。正気でないように見えるリスクを冒すことが必要な事態なのだ―コルテスのように」

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01