ソーシャル&リアルタイム化の大波は止められない―Salesforce Chatterを社内テスト中

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編集部注:この記事はsalesforce.comのファウンダー、会長、CEOのMarc Benioffの寄稿。前回の寄稿でBenioffは「企業向けソフトウェアはFacebookをモデルにすべきだ」と論じた。今回の記事は前回の記事への批判の声に対する反論。

2週間ほど前に、私はTechCrunchに企業はFacebookを見習えという記事を投稿した。この記事を書いた理由は、かいつまんで言えば、「なぜ企業向けソフトウェアはもっとFacebookを見習わないのか?」という疑問だった。実は私がsalesforce.comを設立したきっかけは、「なぜ企業向けソフトウェアはAmazon.comを見習わないのか?」という1999年に私が抱いた疑問だった。私の著書、Behind The Cloudの読者ならよくご存知だろうが、この疑問こそ、わが社を発足させ、ひとつの運動を起こす源となったのだ。この10年は実に刺激的な時代だった。しかし本当の変革はまだ始まったばかりだ。

率直的に言って、前回のTechCrunchへの寄稿に対する大きな反響(Joe McKendrickは「ブログスフィアの大騒動」と評した)には驚いた。この反響の大きさは、企業向けソフトウェアに変革が迫られているという私の確信をいよいよ強めた。実際、コンピューティングの歴史上最大の革命が迫っているといっても過言でないと私は考えている。これによってユーザーにもベンダーにも今までとは桁違いの利益がもたらされるのだ。そしてその変革はすでに始まっている。それはリアルタイム化であり、ソーシャル化であり、モバイル化だ。それは時間に関する、そしてまさに生産性に関する革命である。

私は新しい世代のコラボレーション・ソフトウェアの登場と、それらが古ぼけたMicrosoft SharepointサーバーやIBMのLotusNotesを置き換えつつあるのを見て興奮している。私が「Lotus NotesなんかMark Zuckerbergが生まれる前に出来た代物だ」だと評したのが意外に大きな反響を呼んだのは面白かった。しかし「Facebookを見習え」という記事にはもっと真面目な主張も含まれていて、それがどうやら一部の人々の痛いところを突いたらしい。「Facebookを見習え」という主張に対する大きな反応や議論は、ソフトウェアの革新が迫られていること、それは今すぐ始められなければならないことを裏付けるものだ。MicrosoftとIBMはエンタープライズ・ソフトウェアを「現状維持」のままあまりにも長く放置してきた。今や変革は待ったなしだ。

圧倒的多数の読者は私の記事に賛成し、企業は新たにFacebook方式を採用して消費者、顧客と会話を開始しなければならないと感じている。 salesforce.comでは会社の将来をこのビジョンに賭けている。ほぼ40%の企業がソーシャル・プラットフォームをすでに導入しているか、導入を検討している。Nemeretes ResearchのIrwin Lazarによれば、この割合はますます上昇中とのことだ。しかし全員がこのビジョンに賛成しているわけではない。特に現状から多大な収益を上げているベンダーは反対している。しかし見誤ってはならない。今始まっているソーシャル化の波は前回のものとはまったく規模が違う。

ブログ上でさまざまな議論があったが、Charles Zedlewskiは「Facebookはエンタテインメントのプラットフォームだ―生産性などに関係はない 」と述べた。ZedlewskiがSAP(前回の記事で私が「イノベーションがない」と評した会社)の社員であることを考えるとこれは驚くに当たらない。どうやら彼らはアンチ・クラウドを貫いているらしい。彼らの立場ではそういう行動も当然なのだろう。しかしFacebookやTwitterを始めとする新しいソーシャル・モデルのもたらす共同性のパワーを十分に理解しているとはいない企業がまだ多いことには驚かざるを得ない。

私はFacebookとTwitterにログインして、私のフォロワーたちのネットワークのパワーを借りるところから一日を始める。これが生産性の向上をもたらす最良の方法だ。私はさまざまな方法でこの最新のインターネットの機能を利用している。新しい広告キャンペーンのテスト、顧客の反応の収集、私の著作のプロモーション、それどころか、salesforce.comが開発した新しいサービスのネーミング、そうしたことがFacebookとTwtterネットワークのおかげで、文字通り朝食前にできてしまう。私だけではない。たとえばVinnie Mirchandaniは最新の著書をオンラインでプレビュー公開しているが、それを読むとスターバックス、エイボン、ペプシといった大企業がこうしたソーシャル・ネットワークを利用していかに効果的に生産性を向上させているかよくわかる。あるいはFacebookでもっとも人気のあるアプリの一つ、Causesが慈善活動にどれほど大きな影響を与えているかを見てもよい。

私がFacebookを賞賛していることはよく知られている。しかし私の「Facebookを見習え」という主張は―1999年の「Amazonを見習え」という主張と同様―比喩にすぎない。比喩はあるコンセプトを紹介し、印象付けるのに強力な触媒の役割を果たす。多くのインスピレーションの源には比喩がある。しかしもちろん比喩ですべての細部を説明することはできない。そしてまさにこの細部こそ、新しいモデルを現実化するにあたって重要なものとなる。

ここ何年も、「効果的な情報の共有を通じて企業を新しい経験を学べる組織に変えていかねばならない」というお説教をわれわれは聞いてきた。しかしごくわずかの例外的なケースを除いて、こうしたことが広く実現しているとはとても言えない。誰でもその世界に入ろうと思えばすぐにできるほどに障壁が低くならなければ真のパラダイム・シフトは起きない。しかしそうなれば変化はあっという間に起きる。FacebookやTwitterといった新しいソーシャル・モデルの登場で、企業の情報活用法に直ちに革命を起こす道が開かれた。あるテーマについて知識があり目的達成に貢献できるユーザーが即座に会話に加わり、共同作業を開始することが今までになく簡単になった。新しいソーシャル・エンタープライズ・プラットフォームが革命の触媒となる時期が
もうそこに来ている。

われわれはSalesforce Chatterというサービスを開発し、 社内でベータテストを開始している。FacebookとTwitterによって確立されたソーシャルモデルによって、まずわれわれの会社を運営しようという試みだ。このエンタープライズ・ソーシャル・アプリは既存のsalesforceの各種ビジネス情報処理アプリと連携して運用される。他のエンタープライズ・アプリとの間に一切の壁はない。Chatterはむしろ、それらを統合する役割を果たす。ユーザーはもっと簡単に新しい視点からデータを検討することができる。企業全体にわたる情報共有モデルとフィルタリングや検索の機能を通して、ユーザーは必要とするデータや他のユーザーを柔軟なフォローできる。このアプリには、一部の批判者が言うような「スパム化」を防ぎ、ユーザーのフィードがもっとも効果的に利用できるようさまざまな機能が組み込まれている。

過去3週間Salesforce Chatterを利用したおかげで、私は過去3年間に得た以上の情報を自分の会社について学んだ。これは以前、 http://ideas.salesforce.comをスタートさせたときのことを思い出させた。このアプリを通じて膨大な情報が入ってくる―社員について、製品について、顧客について、顧客サービスについて、契約完了直前の取引について―さまは壮観である。企業向けソーシャル・コンピューティングとはどういうものか? それは製品や従業員について、会社にとって重要な知識、つまり決断を下す根拠となるべき情報を即座に得ることである。私はこのテクノロジーの持つ可能性に驚嘆した。文章で説明してもなかなか実感がわかないだろう。そこで今私が見ているSalesforceChatterの画面のスクリーンショットをお目にかける。ここにいかに重要な情報が流れているか理解できると思う(クリックすると拡大画面が見られる)。

ソフトウェア業界はもう過去は過去として葬り、新しい未来に向かって出発すべきだ。懐疑的な意見はむしろ私を元気づけた。これは前にも経験しているのだ。懐疑論者は結局のところ顧客にとって何が利益になるのかという観点に立ち戻って考えを改めるか、あるいは次第に無用な存在となって消えていくしかない。先週ワシントン大学で、MicrosoftのCEO、SteveBallmer自身がわれわれはクラウドの速さで動く必要があると宣言していることをみるだけでよい。ここに来るまで20年もかかったが、もうMicrosoftでさえ「ソフトウェア+サービス」などではない。100%クラウドなのだ。さあ、どうする?

われわれは脱PC革命のさなかにいる。スタンドアローンのデスクトップPCの役割は終わった。クラウドはあらゆるブラウザ、あらゆるモバイル・デバイスに不断に情報を流し込み、新しい画期的な方法でユーザーと相互作用する。私は家にいようと会社にいようとスターバックスにいようと同じくらい高い生産性で働くことができる。エンタプライズの情報処理は単に完全にクラウド化するだけではない。それはソーシャル化する。それだけではない。モバイル化する。FacebookとTwitterがその具体例を教えてくれた。まだ誰もがこの事実に気づいているわけではない。しかしMicrosoftやIBMも含めて、誰もが気づくことになるだろう。変化というのは否応なく起きるものなのだ。

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01