Open Network Lab―日本製“Y Combinator”は世界を目指すスタートアップを支援する

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読者の皆さんは日本、中国、あるいはシンガポールで作られたウェブサービスを日ごろ使っているだろうか? おそらく使っていないだろう。それには理由がある。自国外の市場に受け入れられたサービスを作ったアジアのインターネットのスタートアップはほとんどないのだ。中国を含めれば、アジアは世界でダントツに大きなインターネット市場なのだが。アジアには7億6400万のユーザーがおり、世界の42.4%のシェアを占めている。(日本も中国、アメリカに次いで世界で3番目に大きなインターネット市場)。ところが、中国でAlexaのトップ10にランクされている企業で、海外で活発に活動しているものは皆無だ。

しかしアジアでは、シリコンバレーをある程度モデルにして、次のTwitter、次のFacebookを生み出そうとする努力が本格化しつつある。その多くは複数の初期段階のスタートアップに対し資金提供と引換に株の一部を取得するというY Combinator方式をモデルにしている。これにはアメリカのベンチャー投資家もノウハウと資金の両面で参加している。(Y Combinator自身はアジアでの活動はまったく行っていない)。

たとえば、日本を代表する国際投資家、Joi Ito(伊藤穰一)氏は、昨年暮れ、 Neoteny LabsをSingaporeに創立した。これはシード資金を提供するベンチャーキャピタル兼インキュベータだが、当面はシンガポール市場に集中している。昨日、日本の上場企業3社が共同してOpen Network Labの創立を発表した。これはY Combinatiorにたいへんよく似たコンセプトの下に、世界に羽ばたくことを目指す日本のスタートアップを支援しようとする試みだ。

Open Network Lab―グローバルなスタートアップをシステマティックに生み出そうとする初めての試み

Open Network Lab (ONL)はこの種のものとして日本で初の試みであるだけでなく、他のアジア諸国に対するモデルとなり得る存在なので詳しく紹介する価値がありそうだ。運営は日本の主要インキュベータの1社であるデジタルガレージ(Digital Garage)(伊藤穣一氏が取締役を務める)、カカクコムKakaku.com (商品の価格検索エンジンとして日本最大)、オンライン通販のネットプライス(Netprice)の3社が共同で行う。応募者の中からONLが選定したスタートアップは3ヶ月以内にウェブ・サービスのプロトタイプ、ないしアルファバージョンを開発することを求められる。ただし、対象となるサービスは必ず世界的に競争力があるものでなくてはならない。つまり主たるターゲットは海外だ。

細部ではY Combinatorとは異なるところもある。 ONLの支援対象スタートアップはメンバー数最大3人まで、(審査を経て)最大1万ドル程度が支給される〔訳注:日本語サイトによると、二次審査合格チームには1人当たり30万円が支給される〕,。資金援助、メンターによる指導、オフィス設備の無料使用などの見返りとして、ONL側はスタートアップの所有権の最大5%を取得する。アメリカのYCombinatorの場合、投資額は1チーム当たり$11,000、プラス、ファウンダー1人あたり$3000が支給され、6ないし7%のストックオプションを取得する。

さらにアメリカモデルと異なるところは、スタートアップがメンターによる指導を希望した場合、そのメンターに2%のストックオプションを譲渡する必要があることだ。伊藤氏のNeotenyLabsのコネを使って集められたという ONL’のメンター陣は豪華版だ(両ラボは提携している)。たとえばLinkedInのファウンダー、Reid Hoffman、 Napsterのファウンダー、Shawn Fanning、オライリー・メディアのファウンダー、Tim O’Reillyなどのビッグネームが参加している。

ONLの援助で有望なサービスを開発したチームは日本、シンガポール、アメリカのエンジェル投資家、ベンチャーキャピタリストに対してプレゼンテーションを行うチャンスが与えられる。時期は今年の9月にチームがONLの支援プログラムを卒業した時点になるもの思われる。つまり有望なサービスの開発に成功した起業家たちは一生に一度というようなチャンスに恵まれることになる。

さてこのOpen Network Lab(Neoteny Labsについてもそうだが)が現実に世界的なヒット・サービスを生むことができるかどうかは、経営にあたる3社、メンター、ベンチャー投資家らがどれだけの手間と時間、そして資金を投入できるかにかかっている。Paul Grahamが運営するY Combinatorとは異なり、ONLもNeoteny Labsも他の会社をフルタイムの経営者が兼任で経営する。つまり片手間仕事になる危険性がある(たとえば伊藤氏はCrunchBaseによれば11社で役職に就いている)。加えてONLは3社の別個の会社によるジョイントベンチャーだ。会社の所在地は2つの大陸にまたがるし、メンターや投資家は世界の3つの地域から集まっている(この点NeotenyLabsも同様)。

しかしアジア側見た場合、これらのインキュベータは日本とシンガポールのスタートアップ界を大きく活性化する可能性を秘めている。現在アジアのベンチャーキャピタルは中国版のTwitter、日本版のFacebookを作ろうという試みにいよいよ力を入れている。まだ小さな一歩であるとはいえ、アメリカ発のスタートアップに劣らぬ世界規模のスタートアップを生み出すエコシステムの構築にアジアもついに本腰を入れ始めたようだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦/namekawa01

“Open Network Lab―日本製“Y Combinator”は世界を目指すスタートアップを支援する” への4件のフィードバック

  1. […] なによりインパクトがあるのは2000年から共同購入サービスをスタートさせ、「累計利用者数約200万人、商品サプライヤー数約2,000社」(リリース文より)という膨大なデータベースを持つネットプライスと、そもそもGroupon起爆の元となったソーシャルウェブ、特にTwitterの日本運営を支援するデジタルガレージが手を組んだことだろう。彼らは最近も日本版Y-combinatorともいわれる「Open Network Lab」を共同で立ち上げるなど関係が近い。 […]

  2. […] たとえば、GMOはソーシャルゲームを対象とした起業支援プログラム「アプリやろうぜ」を実施したり、デジタルガレージとネットプライスも共同で起業支援プログラム「Open Network Lab」をスタートさせたりしている。これはらすでに募集を締め切っているが、Y combinatorのように短期間でプロダクト(サービス)を作ることを目標に、開発資金援助やコンサルティングなんかも含めて提供しているのが特徴だ。 […]

  3. […] 最初から世界を目指すべきかどうかについては、枝氏がオープンネットワークラボでの出来事を引き合いに「海外のベンチャーキャピタリストに直接プレゼンテーションすると、非常に驚いて感動されるような場合がある」そうで、戦略の違いはあっても、どこからでもいけるのではないかという実感を持っていると話す。 […]

  4. […] みんなで創る参加型オンラインショップ「オリヒメ」(Open Network Lab賞)オリヒメは女性の大学院生が創立したスタートアップで、ファウンダーが自らデザインし、日本で製造される女性向けパソコンバッグやアクセサリーのオンライン通販を行っている。このオンラインショップではコメントや希望を伝えることによってデザインや製造プロセスに購入者が参加することができる。 […]

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