Web開発の現状を25のトゥウィートで斬るとこうなる–iPhoneを見捨てたFacebookデベロッパの告白

次の記事

アイデンティティをめぐるFacebook/Googleの戦争はどうなる?–おかしなバナーが考えさせてくれた

Webの裏と表を知り尽くしている稀な人物がJoe Hewittだ。これまでの10年間、彼はNetscapeからAOLへ、さらにFirefoxへ、そしてFacebookへと、あらゆるものに深く手を染めてきた(今はFacebookに在籍)。Hewittは、iPhoneについてもいろいろ知ってる。Facebookのあの優れたiPhone用Webアプリケーション(ネイティブアプリの前)を最初に作ったのが、彼だ。そしてその次にネイティブアプリを作った…それはiPhoneのベストアプリケーションの一つだ。だから彼が何かについて文句を言い始めたときには(彼はわりとよくそれをするのだが)、みんなが耳を傾ける。そして今日が、彼の何度目かの発作だ。

Flashに関する今朝の(米国時間4/29)、AppleのCEO Steve Jobsの記事を受けて、HewittはTwitterの上で自分の考えを述べ始めた。本誌に再掲してもいいかと聞いたら、彼の答えは”どうぞ、どうぞ“だった。おぼえている人もいると思うが、HewittはApp Storeのやり方に嫌気が差してiPhone向け開発から手を引いた。今日は、Jobsの尻馬に乗ったようなアンチFlashの投稿がTwitterに氾濫しているのを見てHewittは、こう口火を切った:

Flashへの憎悪をW3Cに向けなさい。連中はHTMLの貧しい規格をさっさとアップグレードせず、いつまでものろのろしているから、デベロッパはプラグインを使わざるを得なくなってるんだ。

それに、ブラウザが“ノンスタンダード”だけど優れたAPIを提供すると、それを必ず批判するデベロッパも、困ったもんだよ。

ブラウザのメーカーはノンスタンダードなAPIをどんどん採用して、W3Cがそれを標準化してくれることなんか当てにしなくなるといい。官僚化した組織にイノベーションを期待するのは、デベロッパとして自殺行為だから。

というわけでHewittは、Flash(そしてすべてのプラグイン)が存在するのはW3C(Webの標準規格を策定する機関)が、新しい優れた技術を規格に取り入れるのがあまりにも遅いからだ、という見方に立つ。彼は、ブラウザのメーカーはW3Cの現行の規格を無視して新しいAPIを積極的に取り入れるべきだ、と主張する。

次に彼は、Microsoftを擁護する。Hewittが自分のキャリアをスタートさせた会社(Netscape)をほとんど破壊した(しかも合衆国政府も含むそこらの誰もが悪質と認める手段で)のがMicrosoftなのに。

10年前にわれわれはMicrosoftいじめをやってIEの独自のイノベーションをやめさせ、W3Cの支配を期待した。でも、その結果はどうだったか?

若い人は知らないと思うが。IEは4.0から6.0にかけてすさまじくイノベーションした。司法省やWeb標準化委員会(W3C)の介入は、そのあとだ。

@jeff_lamarche おいおい、何言ってるんだ。ActiveXは置いといて、1996年から2000年にかけてMicrosoftほど先進的だったブラウザメーカーはほかにないよ。

MSがなぜIEを見捨てたのか、それは分からないが、ぼくが知っているのは、Webデベロッパたちが彼らに、イノベーションの停止と、標準化委員会に従うことを求めたってことだ。

Hewittは、Microsoftに対する独禁法違反の嫌疑がInternet Explorerのイノベーションを停止させた、と見ている。Hewittによれば、IEのイノベーションが本格的にスタートしたのは1996年だが、そのときのブラウザのシェアはNetscapeが90%、IEは10%にも達していなかった。弱者IEはイノベーションに邁進しなければならない。もちろん目標はWebのトップに立つことだが、それを達成した今Microsoftは、どういうわけかこの製品をほとんど見捨ててしまった。

それからHewittは、アプリケーションストアの勃興に目を向ける(もちろんApp Storeも含まれる)。

なぜアプリケーションストアがWebを脅(おびや)かし、ぼくのようなデベロッパを、逆(さか)らうことのできない魅力で誘惑しているのか? ”邪悪な”私企業規格の技術が、Webを殺そうとしているからだ。

ぼくはもう一度Webデベロッパになりたくてたまらない。でも、2010年にCocoaにできたことを、ブラウザでやるために2020年まで待たなければならないのなら、ぼくはそれを待つ気はない。

この、”‘邪悪な’私企業規格の技術がWebを殺そうとしている”のところは、強い説得力がある(この記事のタイトルに使わなかった自分を今でも責めている)。邪悪は粗悪という意味ではなく、Webの刺客、暗殺者という意味だ。ここでもHewittが指摘するのは、WebはCocoaのようなノンWebの技術のレベルに全然達していない、ということだ。すくなくとも今後10年間そうだろう、と彼は言う。

@KuraFire Microsoftは自分たちのノンスタンダードなhtml/javascript/cssの拡張を特許にして、ほかのブラウザが実装できないようにしたかな?

@johnfoliot たしかに、W3Cには強制力はない。でもデベロッパたちはノンスタンダードなAPIを使う連中を非難するんだ。それが問題だ。

彼は、Microsoftの規格の一部だけでもW3Cが採用しなかったのはなぜだろう、といぶかる。そして、統率機関が認めていない技術を使うデベロッパを軽蔑する傾向を、彼は怒る。

Cocoaを捨ててWebに戻りたいからこそ、こうやって文句を言うのだが、しかしCocoaからWebに移行すると失うものがあまりにも多いから、がっくりしてしまう。

ではどうすべきか: ブラウザは勝手にイノベーションする。ユーザはベストのブラウザを選ぶ。その後、ユーザが選んだものをW3Cが標準化する。敗者(そのほかのブラウザ)は勝者に従う。

ここが、Hewittの議論の核心部分だ。Webの技術は歩みが遅い。スタンダードに準拠するだけのために、わざわざ非力な言語を使わざるをえないのは、おかしい。そこで彼は、ブラウザがどんどんイノベーションしていって、W3Cがそれに追随せざるをえないようにし向ける、という…これまでとは逆の…方向性を望む。

@joseph_wanja Cocoaにできることは、好きだ。でも、UIのプログラミングにC言語を使うのはごめんだね。

Cocoaが優れていると思っているのに、なぜそれを去るのか、その理由がこれだ(UIをCで書く!)。

@eston ブラウザ依存のサイトを書くデベロッパが増えれば、ユーザは自分の選択を自覚できるようになる。その後、デベロッパは勝者を選ぶようになる。

これは、逆流を起こすためにデベロッパが採るべきアクションのすすめだ。

@JamesWatch IE6は2000年にはすごくすばらしかった。それを今のブラウザと比べるのは酷だよ。

これはIE6いじめに対する注意喚起。出始めのころどうだったか、を説明している。

@joseph_wanja 残念ながら現時点ではWebの言語よりはCocoaをおすすめするね。そう言わないですむのが、ベストだけど。

Cocoaは、完全ではなくても、Web言語よりはまし。

@michaelvillar 別のブラウザを立ち上げればいい。たいしたことじゃないよ。ほんとうにたいへんなのは何か、知ってるかい? それは、各アプリケーションストア用に違う携帯電話を買わなければならないことさ。

おもしろいことを、言ってる。ブラウザごとにWebのコードを変えるのは一見たいへんなようだが、アプリケーションを携帯電話の機種ごとにコーディングするほうがもっとたいへんだ、と。

@jjathman ActiveXを正当化するつもりはない。しかし当時のIEのhtml/css/javascriptの部分は、当時としては最高にすばらしかった。

ここでも、昔のIEを擁護している。

ここからHewittは、Webアプリとネイティブアプリの比較論を開始する。

@ppk そのとおりだよ。デベロッパが各ブラウザ向けに機能を落としたページを書くよりは、ユーザにそのサイトを見るため専用のブラウザを使わせたほうがいい。

@ppk モバイルのWebアプリとモバイルのネイティブアプリとのあいだにそういうことが起きているが、アプリケーションストアはブラウザの拡張に依存するのではなく、ユーザが別のブラウザを使うことに依存するのだ。

@slauriat “このサイトの全機能をご覧になるためにはXXXブラウザをお使いください”は、”XXX電話機をお買いください”よりましだ。Webをクソにして(ネイティブ)アプリがもてはやされるような世の中を作っちゃったから、そんな話になってしまうんだよ。

@ppk ぼくはiPhone用に最先端のネイティブアプリとWebアプリの両方を作ったことがあるから言えるが、iPhoneのSafariは、iPhoneのCocoaに比べたら悪い冗談だな。

Hewittの心の中には、アプリケーションストアがWebに取って代わる、なぜなら言語が優れているから、という思いがある。そして、Webをクソにしてしまったのは自分たちの責任でもある、という思いもある。そうなるがままに、放置してしまった。彼の最後のトゥウィートは特別に激しい: Hewittは両方の世界で経験を積んでいるから、ネイティブでできることに比べればiPhoneのSafariは悪い冗談だと。こう感じているデベロッパはとても多いはずだが、仲間内での雑談でなく、公開の場で言う人はめったにいない。

最後にHewittは、自分の発言に注釈を付ける:

Flashにはずいぶんひどいことを言ったが、でも、W3CやMicrosoftやMozillaのここ10年の怠慢の穴を埋めてくれたMacromedia/Adobeには、感謝あるのみだね。

しかも(Webの現状をさんざんコケにしてきたけど)、WebKitのチームがこんなにすごく優秀でなかったら、今ごろわれわれは、もっともっとつらい思いをしてるだろうね。では、これで終わるよ。ご静聴を感謝いたします。🙂

いいね。たった一日で、これだけの内容を言えるんだから、すごいわ。

〔訳注: Steve Jobsの最新のFlashたたきに対する批判としては、この記事が優れていると思います。〕

[原文へ]
[米TechCrunch最新記事サムネイル集]

(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

“Web開発の現状を25のトゥウィートで斬るとこうなる–iPhoneを見捨てたFacebookデベロッパの告白” への13件のフィードバック

  1. iwatani より:

    (1)このHewittという人は明らかに、企業向けWeb開発で苦労した経験がないね。一般消費者に、ブラウザの使い分けを求めるなんてね、まず非現実的。

    (2)コンピュータのアプリケーションにかぎらず、古来、人間の文化は、ローカルなものほど微細複雑であり、グローバルで標準性のあるものほど要素数が少なく構造がシンプルである。それは「コミュニケーションのエコノミー」がそうさせるのだ。ノード数の膨大なグローバルにおいては、各ローカルの微細複雑はとうてい、まともに維持できない。どんな相手とでもある程度素早くそして正しくコミュニケーションできるためには、全域的に要素数が少なくなければならない。

    (例: 英語はヨーロッパ言語の中ではいちばんシンプルなのである(あちこっちから入ってきているので元々からある程度グローバル性がある)。たとえばフランス語は、石原都知事が揶揄したごとく、古くさいローカルな複雑怪奇性をたくさん抱えている(フランスはある意味で西ヨーロッパの田舎)。そのシンプルな英語さえ、各ローカルレベルでは複雑微細化し、一方、国際レベルでは要素数の少ない標準性へ向かう。〕

    特定ローカルの良き思い出を持つ者が、その思い出を基準にグローバル標準の要素数の少なさ、構造の単純さを蔑む(さげすむ)のは、そもそも議論になりえない。意味のない、ないものねだりでしかない。

    最近は、情報理論や計算理論の基礎をちゃんと勉強してないデベロッパが、とても多くなってるね。

    私は個人的に、Flashの複雑さがWeb標準にならないことを切に望む。そして、実際、ならないだろう。

    • dlt より:

       「消費者はブラウザの使い分けをしない」? IE以外のブラウザを使っている誰かは、銀行や政府のサイト、社内システムがIEにしか対応していなければ、作業の方を諦める? 普通はIE以外を使うことを諦めると思うけど。この例は「IE以外でも出来るのにやらない」から消費者にとって嬉しくない囲い込みだけど、「あるブラウザの独自拡張でしか実現できない”素晴らしい体験”」があったら、それは喜ばしいことですよね。
       確かに現実的ではないが、いきなり個人攻撃してまで否定するほどの意見ではない。

      要素数の少なさ、構造の単純さを蔑んでいるって誰のこと? 彼は、「やりたいことが出来ない”不完全さ”」を嘆いていて、また、「やりたいことは出来るが複雑で面倒な」C言語も否定している。
       彼が問題にしているのは、W3Cの愚鈍さそれ自体ではなくて、W3Cに従わないものを排斥しようとする風潮でしょう。標準英語で世界中の人に「面白くもなんともない脚本」を提供するより、方言で一部の人に「歴史に残る傑作文学」を提供したい。そういう人がいてもいいじゃない。

      • iwatani より:

        > 方言で一部の人に「歴史に残る傑作文学」を
        問題は「作品」ではなくて「コミュニケーション」ですから、ローカルにあったものがグローバルスタンダードにないことは頻繁にあり、だからCocoaでできたことがHTMLでできないことを、“悪い冗談だ”などと嘆いてもしょうがないのですよ。機能に関しぜいたくを言わずに、Web上では互換性を重視してほしいです。

    • altcat より:

      まずwebがあってそれを企業が使っているに過ぎないのです。「企業向けWeb開発で苦労」なんてナンセンス。苦労している相手はユーザーでなくクライアント企業様でしょう?

      元記事の人物のようなイノベーターが多くのイノベーションと混沌作り出し、ユーザーはその恩恵を享受する。あなたのような利用するだけのユーザーと彼とで考え方が違うのは当然なのでは。

      • iwatani より:

        > 利用するだけのユーザー
        ユーザに余計な負担をかけるイノベーターは、「自称イノベーター」にすぎない。本物はまず、ユーザの視点に立ってものを考える。ブラウザの互換性をめぐって、企業のためのWebサイトを作るひとたち(この人たちもユーザ)がどんなに苦労してきたか、あなたも分かってないようですね。

      • altcat より:

        webは企業のために作られたものではないのです。混沌として自由でなんでもアリなのです。
        そこからおいしいところだけを使っているのがユーザーで、webを使ってお金儲けをしたいあなた方自称デベロッパーが勝手に苦労しているのです。

        技術の拡張は、別に今までの機能を殺すものではありません。標準が良いなら、あなたは永遠にミニマムセットのHTMLを書けばよいのです。クライアント様もきっと納得するでしょう。

  2. […] Web開発の現状を25のトゥウィートで斬るとこうなる–iPhoneを見捨てたFaceboo… […]

  3. […] Web開発の現状を25のトゥウィートで斬るとこうなる–iPhoneを見捨てたFacebook… (tags: browser development iPhone) […]

  4. […] これは、著名なウェブ/iPhoneデベロッパー(現在はFacebookに所属)であるJoe Hewittが、昨日(米国時間4/30)Twitter上で連綿とウェブ開発の現状を批判したことと密接に繋がっている。「ぼくはもう一度Webデベロッパになりたくてたまらない。でも、2010年にCocoaにできたことを、ブラウザでやるために2020年まで待たなければならないのなら、ぼくはそれを待つ気はない。」とHewittは言う。要するにこういうことだ。W3C(共和党)が支配するウェブ言語の現状は動きが遅すぎる。Apple(王)に統治されたフレームワークであるCocoaは、優に10年先を行っている。 […]

  5. […] 先週、Web/iPhone二股デベロッパとして有名なJoe Hewittが、Twitterを使ってWeb開発の現状に対する批判と苦言をぶちまけた。25あまりのトゥウィートの中で、Hewittは業界の現状をばっさり斬り捨て。当然ながら、彼の熱弁は議論を呼んだ。しかし、彼の見方がぴったんこ正しいと感じた人のほうが、圧倒的に多かっただろう。今日(米国時間5/5)サンフランシスコで開かれたWeb 2.0 Expoでは、二人の優れた業界人が彼の意見に言及した。 […]

  6. […] 7. Web開発の現状を25のトゥウィートで斬るとこうなる–iPhoneを見捨てたFacebook… 8. Google、今夏デジタル書店開業へ(WSJ発) 9. […]

  7. […] Rossは今、FacebookのDirector of Productだ(偶然にもQuoraの競合サイトで働いてるわけだ)。Firefoxに関する彼の議論は、Facebookの彼の同僚(元Parakeyの協同ファウンダ)Joe Hewittとほぼ同じだ。つまり、上部組織(FirefoxではMozilla、Hewittの場合はW3C)が、Webの成長の足を引っ張っている、イノベーションがなかなか進まない、というのだ。RossもHewittも古参のWeb人間で、二人とも、Firefoxを手がける前はNetscape(〜Mozilla)の開発チームにいた。 […]

  8. […] Web開発の現状を25のトゥウィートで斬るとこうなる–iPhoneを見捨てたFacebook…のはなし。 […]

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中