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モバイルの革新がPCに圧勝する理由

編集部注:ゲストライターのSteve Cheneyは起業家で、以前はウェブとモバイル技術に特化したエンジニア兼プログラマーだった。

最新型Android電話機、Sprint HTC EVOに続いてiPhone 4の発売を控え、モバイルデバイスとそのプラットホームはパーソナルコンピューターの5倍ものスピードで革新している。

モバイル分野の急速な進歩は、しばしば自然な成り行きとしてこう説明される。発展中の業界が迅速に革新するのに対して、PCのように確立した市場はもっと遅く緩やかな道を行くからであると。

しかし、そこにはスマートフォンの驚速の進歩を支える奥深い基盤がある。スマートフォンのOEMに供給する部品ベンダーは、PCメーカーに供給するベンダーとは大きく異なるDNAの進化を遂げた。スマートフォンは組み込みシステムの進化形であり、PCが進化したものではない。そして、組み込み機器の市場で長い間好まれてきたのは、集積度の高いチップセットを提供するだけでなく、OEMと協同でシステムレベルの統合とソフトウェアを迅速に推進するベンダーたちだった。

ハードウェア/チップセット統合の違い。スマートフォン対PC

PC用プロセッサーおよび周辺チップセットにおけるIntelの独占は、PC革新を停滞させた。「チップセット」はCPUの横に置かれ、ワイヤレスや周辺機器などの補助機能を統合する。チップセットをプロセッサーと「抱き合わせる」ことによって、IntelはPC用マザーボードの競争を中和している。グラフィックチップなどの例外は存在するが、次世代PCに何が使われるか(使われないか)の90%は事実上Intelが「決定」している。

典型的な例の一つに、ノートPCにGPSチップが入っていないことがある。$1500のMac Book Airで、Google Mapの出発地点に住所をタイプしなければならないという事実が、PC革新が止まっていることを定期的に思い出させてくれる(MacのハードウェアでさえIntelに支配されている)。コンピューターの前でみんながiPhoneに手を伸ばすのは、驚くことではない ― モバイル体験の方がだいたい優れているのだ。

GPSは、PCとスマートフォンの開き続けるギャップのほんの一例にすぎない。もちろん、PCメーカーが個別のGPSチップをマザーボードに載せることはできる、しかしなぜIntelは位置情報を情報処理の中心要素としてチップセットに組み入れて、ノートPCのモバイル体験を良くしようとしないのだろうか。

理由は単純 ― 彼らにとって必要ないからだ。Intelは高いマージンを好み、彼らの市場独占によって、革新の代償としてマージンを追求することが許されている。

対照的に、スマートフォンメーカーは伝統的にずっと断片化されたサプライチェーンで競争し、生き残るために猛スピードで統合してきた。今日の3Gワイヤレス用チップセットには、GPS、Bluetooth、802.11nがワンチップに収められている。そして、QualcommとMarvellといった優れた企業間の競争は、革新をさらに進めるだけでなく、各ベンダーによるシステム統合とソフトウェアの差別化を促進する。

システムレベルの統合とサポートの違い。スマートフォン対PC

システム統合とは、ハードウェアとソフトウェアをどう組み合わせて最終プラットホームを作るかを意味する用語である。PCでは、Intelがハードウェアをリリースする時期を支配している ― 事実上OEMは、CPUの改訂を待ち、在庫管理とチャンネル/流通、ブランド力によって差別化する。IntelとMicrosoftは、どのPCメーカーが優れていようが勝利する ― それがAsusであるかDellであるかHPかを彼らは文字通り気にしない。

スマートフォンの世界は正反対だ。何十もの部品ベンダーが、スマートフォンOEMの設計を勝ち取ろうと必死に戦う。この競先原理が、部品ベンダーのシステム統合とサポートへの取り組みを根本的に変える基盤となっている。

例えばInfineonは、iPhoneの3Gワイヤレスチップセットを供給している。Appleのお気に入りでいるためには、Infineonはハードウェアとソフトウェアがつつがなく動作するために必要なことはすべてやる必要がある。Cupertinoにエンジニアを常駐させることから、一夜のうちにチームをドイツに派遣することまで。IntelがDellのためにこれをやると思うだろうか。

このレベルのコミットメントによって、スマートフォンOEMは独力でやるよりずっと早くプラットホームの改訂を重ねることができる。もしInfineonがAppleに対して手を抜けば、別のベンダーが次期iPhoneに入り込もうと押し寄せてくる。この競争原理はPCには全く存在しない。このことは、IntelとMicrosoftが伝統的に組み込み(非PC)市場で失敗してきた理由の興味深い逸話となっている。

ソフトウェアプラットホームの違い。スマートフォン対PC

AppleがスマートフォンOS革新とワイヤレス業界再編成の先陣を切った功労者であることは誰もが認めるだろう。そしてわれわれは、Androidについて分裂問題をくどくどと言ってきたが、Microsoftが過去10年間に3回しかWindowsをリフレッシュせず、Dangerを買収してから30ヵ月たってもスマートフォンOSを出していないことを考えれば、GoogleがこのOS開発にコミットしたことは賞賛に値する。

AppleとGoogleによるこの競争相互作用によって、今後もスマートフォンのソフトウェアはPCを上回る早さで進化を続けるだろう。しかし、iOSとAndroidもこのスマートフォン業界の構造から大きな恩恵を受けるのである。AppleとGoogleは、互いに圧力をかけあうだけでなく、上で述べたように、部品ベンダーらによるチップセットやシステム統合の共生的な進化からも圧力を受ける。スマートフォン革新の価値連鎖が全体として機能しているのである。

こうした部品の進歩、システム統合、そしてソフトウェア全体の組み合わせこそが、モバイルにおける類をみない革新を推進し続けている。一方、WinTelモノポリーはPCを緩やかな直線上を進み、機能もユーザー体験も、利用可能な技術から離れてものとなってしまう。

iPadを先頭にコンピューティングの次の進化が近づくにつれ、MicrosoftとIntelはモバイル分野を取り戻すことに、途方もないプレッシャーを感じている。しかし、彼らにはそれを実行するためのテクノロジーがないだけではなく、PC業界の中に彼らが作り上げた近親交配的構造の犠牲にもなる。今から5年以内に、タブレットやスマートフォンその他の「モバイル機器」が、PC革新を永久に置き去りにする可能性はきわめて高い。そして私は、これが心躍る新しいテクノロジーの進歩にとっても、消費者にとっても、良いことであると言いたいのである。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)

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