[jp]オーディエンスターゲティング広告のプラットフォーム構想を広告代理店のオプトが発表

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インターネットの広告単価は、日本は米国に比べて安いと言われているし、実際TechCrunch Japanや以前の仕事を通じてもメディアが成り立つにはあまりにも厳しい環境だと思っている。

なにがどうやったらそれを改善していくのか、広告主や媒体、あるいはその中間業者にとって幸せな環境をどう作るべきかに回答はないが、インターネットの広告費がもっと費やされ、それに見合ったリターンが広告主にも媒体社にも還元されることがいいのだと思われる。新たな広告手法の登場はそれを手助けしてくれるのかどうか――。

難しい問題ではあるが、インターネット広告代理店のオプトはインターネットのオーディエンスの属性に応じて広告を配信できるプラットフォームを構築していくことを昨日発表している。

この話題に入る前に、少し振り返ってインターネットの広告に何が起きているのか米国の例を見ながら考えてみたい。

米国ではバナー広告のようなインターネットのディスプレイ広告市場は、その役割によっていくつものカテゴリーに細分化され、そのカテゴリーの中で数多くのプレイヤーが生まれている。

日本でも馴染みがあるところでは、アドネットワーク(各オンライン媒体をネットワーク化してバルクで広告枠を販売する事業者)やアドエクスチェンジ(広告枠のマーケットプレイス)のようなサービスがあるが、多数あるアドエクスチェンジから広告主や広告代理店が効率的に広告枠を購入するためのメディア・バイイング・プラットフォームや広告のクリエイティブの最適化を図るクリエイティブオプティマイゼイションなどのサービスも登場してきている。

これらは広告主から近い距離にあるカテゴリーだが、媒体サイドでも媒体の広告収入を増大化させるイールド・オプティマイゼイションなどもある。詳しくはGCA Savvianの投資銀行家、Terence Kawaja氏が作成したという「Display Advertising Technology Landscape」という図解(下図。5月に開催されたIAB Networks and Exchangeのキーノートのプレゼンテーション資料もあり)が役に立つので参考にしてみてほしい。

 さて、このような中、最近のディスプレイ広告の話題の1つに、誰に広告を見せるのか、つまりオーディエンス(視聴者)をターゲット化した広告の重要性が挙げられている。オーディエンスターゲティングでは、広告を枠の単位で購入するのではなく、オーディエンスの属性単位に応じて購入する。

この広告手法が登場したのは、広告の効果を高めるために、検索広告のようなターゲットを明確化した手法がディスプレイ広告にも求められているというところにある。もっと言えば、検索広告のように購買しようとしているオーディエンスではなく、商品に興味を持ってくれそうなマーケティングの初期段階のオーディエンスをターゲット化しようというものだ。

これは単純に、オーディエンスのオンラインでの行動に応じて広告を表示する行動ターゲティングだけでなく、オーディエンスの過去の購買履歴や何に興味を持っているかというオーディエンスのプロファイルまで結びつけてセグメント化して、広告を表示することになる。

先のKawaja氏の資料によれば、データエクスチェンジやデータサプライといった事業カテゴリーがそれで、オーディエンスの行動履歴やそれ以外のオーディエンスデータをまとめて興味の対象ごとにオーディエンスを分類して、メディアバイイング(あるいはデマンド・サイド・プラットフォーム)側とアドネットワーク(アドエクスチェンジ)側を仲介することになる。代表的な企業として米国ではBluekaiなどがある。

たとえば、「年収2,000万円以上のゴルフ好きで、最近ゴルフのクラブを買い換えようと思っている」といった具合に、セグメント化されたオーディエンスに広告を表示させられるわけだ。

米国でこれだけ複雑化してきているディスプレイ広告の世界だが、日本ではまだここまで市場が成り立つほどに活性化していない。ただ、低迷するインターネットの広告市場をどう盛り上げるかは、オーディエンスターゲティングは広告効果という点でも広告費の底上げという点でも、もしかしたら1つの有効な手段なのかもしれない。

オプトが発表した、「オープンデータプラットフォーム構想(OpenDPF構想)」がいわゆる彼らのオーディエンスターゲティング広告のプラットフォームになり、自社の広告効果測定・配信ツールのADPLANやこのプラットフォームに参加するアドネットワークやメディアなどからまずはオーディエンスに関する情報を収集するという。

広告手法としては、広告主からすれば広告効果が高くなるということに尽きるが、興味深いのは、メディア側が収入を得られるのは広告の配信だけではなく、たとえば、マーキングというオーディエンスの属性を与えるのに有効な情報を提供している場合にも収入が得られるところかもしれない。たとえば、先程の例でいえば「ゴルフ」に関するニッチメディアだったり、「ゴルフクラブ」の売れ筋情報や価格を提供するコーナーをもつメディアだったり、高額所得者がよく訪れるメディアだったりすれば、そこを訪れたオーディエンスの情報がマーキングされて収集される。そのオーディエンスプロファイル作るための対価をOpenDPF側からメディアに支払うというものだ。

また、メディア側はターゲットされたオーディエンスがサイトに訪れれば、それにあった広告が表示されるので、いままで広告主になりえなかった企業からの広告が表示される可能性もある(たとえば、先の例で言えば、テクノロジー系メディアでも高額所得者が集まるサイトであれば、IBMやマイクロソフトの広告だけでなく、高級ゴルフクラブの広告も表示されるということだ)。

オプトではまず「プレミアムオーディエンスターゲティング」という商品を提供し、cookieベースでプレミアムサイト(マーキングを提供するサイト)から集められたオーディエンスの分類によってターゲットされた広告を配信できるようにする。現在は月間で3,000万ユニークユーザーの広告配信が準備できているという。また、来年以降はCookie以外の位置情報やその他の属性なども組み合わせて、より詳細なターゲティングができるようにしていく予定だという。当然、モバイルでの展開も視野に入っている。

こういった新しい広告手法が投入される背景には、米国でのアドテクノロジーの進化や活性化があるということも挙げられるが、オンライン広告業界の停滞、特に牽引してきた検索広告の頭打ちの状況というのも響いているだろう。少し古い話になってしまうが、昨年の1月にシード・プランニングが出した調査によれば、今後突出してオンラインの広告が成長する分野はモバイル広告ということになる。また質的成長のためにはターゲティングやリッチアドといったことが求められるとしている。

オンライン広告市場として現在は最大のPCディスプレイ広告に目を向けると、今後、広告業界の売上を向上させるには、単純に見せるだけの広告ではなく、セグメント化されたターゲティング広告によって価格を上げていく必要がある。今回のオプトのターゲティング広告への参入はその1つの手段と言えるだろう。

ただ、一方で、昨年の予測で1740億円あるというPCディスプレイ広告の半分近くはヤフーが占めるという指摘もあり、オンライン広告市場におけるヤフーの存在感が大きい。価格決定や新たな広告手法についてもヤフーの存在は大きく、最終的にはOpenPDFがうまくいくかは、その対抗軸とは言わないもののある一定の規模感をどれだけ集められるかにかかってくるのではないだろうか。