パテントフリーゾーンに潜むチャンス

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東南アジアのウェブに注目(クアラルンプールのOpenWebAsiaより)

中国は今年中に、日本を抜いて経済における世界第2位になるかもしれない。すぐ後にはインドが迫り、ブラジル、ロシアなどの国々も大きくは離されていない。これは起業家にとって何を意味しているのだろうか。つまり米国外に膨大な機会が増え続けている。しかし、殆どの人が新興国におけるもう一つの利点に気付いていない。先進経済で作られた実証済みの知的財産を、タダで活用できるのだ。米国、ヨーロッパ以外の殆どの国々はパテントフリーゾーンである ― 企業が特許を申請する際、自社製品の市場がないと考えて申請しない国々のことだ。その結果その知的財産は、これらの国で使い道を見つけた人誰でもが利用できる。

例えばiPhoneを見てみよう。そこには1000以上の特許がある。それでもAppeは、ペルー、ガーナ、エクアドル等、発展途上の殆どの国々では特許を申請していない。だから起業家は、特許資料の情報を利用して、これらの国々ならではの問題を解決するiPhoneライクなデバイスを作ることができる。Appleはこれまでに3287件の米国特許を取得し、出願中の1767件と合わせて5054件の特許を保有している(全製品分)。しかし、中国ではわずか300件申請して19件が認可されただけである。インドでは38件の特許申請に対して4件取得。メキシコでは109件申請して59件取得している。このように、インド、中国、メキシコでさえ、広く開かれた場所なのである。

次に糖尿病の技術を考えてみる。2009年末までに、米国では1万2070件の特許が申請または取得されている。ヨルダンではわずか36件、アフリカの殆どの国では1件も申請されていない。大手製薬会社はこれらの市場は小さすぎる、あるいは貧しすぎると考えている。そして彼らは、アフリカをはじめとする途上国で増え続ける数百万人の病に苦しむ絶望的な人たちの手が届く薬品も作っていない。しかし、起業家がこうした仕事を達成することを妨げるものは何もない。設計図はすでに米国特許データベースの中にある。

ノースカロライナ州の特許弁護士でNeoPatents CEOのJiNan Glasgowは、世界の特許システムの研究を重ね、特許データベースを探索して地図化するテクノロジーを開発している。彼女によると、米国で申請された特許のうち製品化されたものはわずか5~10%だという。残りは捨てられている。

またGlasgowが見つけたところによると、殆どの米国企業は新興国市場を無視して、そこでは特許を申請していない。同氏が地理別の特許申請数を国連人間開発指数と比較したところ、国が豊かであるほど特許件数が多いという強い相関がみつかった。つまりこれは、先進国における豊富な知的財産を、途上国 ― 特許が申請されていない ― では無料で利用できるということだ。Glasgowはこれを「パテントフリーゾーン」と呼んだ ― そこには米国とヨーロッパ西部を除く世界の殆どが含まれる。BRIC諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)では、ごく最近になって特許出願数が増えてきた。即ち、過去数十年間米国で申請された特許はすべて、未だにフリーゾーンの中にある。

特許システムのしくみはこうだ。新しく独自のアイディアがひらめいて、これを保護したい時は、米国特許商標局(USPTO)に特許を申請する。商標局が、たしかにオリジナルの発明者であると判断すれば特許が与えられる。他社がその発明を米国内で作ったり売ったり売り出したり、輸入したりすることが20年間禁止される、一時的独占権である。しかし、これは米国内に限られる。他国の人々も制限したければ、その国で特許を申請する必要があり、米国で特許を取得してから1年以内に申請する必要がある。米国の発明家の殆どは気にしていない。なぜなら、地域の市場だけに焦点を合わせているからだ。しかし、多国籍企業は、事業を行う可能性のある国すべてに特許を申請する。誰であれ、それらのアイディアを特許が申請されていない国で使用することは合法である。そしてこのことが、新興国での大きなチャンスの扉を開く。

例えば脱塩技術では、GEが世界最大級の会社である。GEは同社の脱塩事業の一部を買収するために$4.1B(41億ドル)以上費した。しかし、開始から10年たっても、脱塩を低価格で維持可能なものにすることからは、ほど遠い。GEの発展は同社が所有する特許にかかっている。2009年にGEは、この分野の米国特許832件のうち、47件を発明した ― わずか5.6%、20分の1をわずかに上回るだけだ。もしGEが、〈保有していない〉特許 ― その数は多い ― のいくつかでも利用できた時、同社がどれほど進展するか想像してほしい。

脱塩分野で革新が起きるまで、あともう10年待たなくてよくなれば、世界はどれだけよくなるだろうか。パテントフリーゾーンでは、多くの分野で協業が行われ、そこから私たちの世界のための革新的な解決策が生まれるかもしれない。太陽エネルギー、電気自動車、低所得者向けモバイル技術等、挙げればきりがない。貧しい国々が豊かな国の問題を解決する結果になれば、なんと皮肉なことだろうか。そして私は、友人の起業家たちに以前と同じ質問をしようと思う。世界を救うのと、Facebookアプリを一つ増やすのとどっちが重要?

編集部より:ゲストライターのVivek Wadhwa は起業家から学者へと転身した人物。同氏はカリフォルニア大学バークレー校報科大学院客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学起業・研究商用化センター研究担当ディレクターを務める。Twitterでは@vwadhwa、彼の研究を知るにはwww.wadhwa.comで。

画像:Women Barefoot Solar Engineers of Africa by Barefoot Photographers of TiloniaJerry Stifelman, and United Nations Human Development Index

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)

“パテントフリーゾーンに潜むチャンス” への6件のフィードバック

  1. おっさん より:

    新興国でのチャンス=経済活動的な成功のチャンス

    だと思うのですが、仮にそうだとすると、結局どの国でも程度の差こそあれ独占とか寡占が起こるのではないかと。あと、実際のところ、特許というものがどの程度の力を持っているのか、そこに踏み込んでくれるような記事など期待したいなぁと。

  2. […] 2010年8月2日月曜日iPhoneやiPadのスクリーンショットを投稿する『iScreenShot』というWebサービスiPhone、iPod touch、iPadのスクリーンショットの投稿、閲覧が出来る『iScreenShot』というWebサイトがオープンしてます。 iPhone(iPod Touch)、iPhone 4、iPad だけのスクリーンショットを閲覧したり、Popular には 最… パテントフリーゾーンに潜むチャンス […]

  3. […] パテントフリーゾーンに潜むチャンス:新興国では特許出願していない場合が多く、アフリカではiphoneライクな商品も作ることが出来るから、チャンスあるよねという話。それで新興国から世界をよくしようよ起業家諸君的な意見だけど、最後の一文が非常に蛇足感満載です。 […]

  4. nori_miya より:

    先進国の思惑がまた途上国の未来を左右させてしまうという副作用があること。利権争いや紛争対立の可能性がその発展の裏側に常にあることも見逃すべきではない。

  5. cha-wan より:

    特許が国別ってところに問題があるよね。特許申請の窓口を世界で一つに集約する案が出てきたりする可能性はあるのかな?

  6. […] Japan: “パテントフリーゾーンに潜むチャンス“: 02 August 2010[Nob Takahashi […]

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