iTunes Pingが(少なくとも今のところ)全く期待はずれな件

次の記事

MotorolaがまたThe New York Timesの見開き広告でAppleを攻(口)撃

Appleが最新版iTunesにPingの機能を搭載してリリースした。ついに製品にソーシャル機能を付け加えたというわけだ。Pingというのは基本的にiTunesを使ってソーシャル機能を活用しつつ好みの音楽を見つけるためのものだ。Pingでは誰かと友達になったりフォローしたり、あるいは会話をすることができる。そしてiTunesを使っている知っている人/知らない人がどんな曲を好んで聴いていて、どんな評価をしていて、そしてどういう楽曲を購入しているのかなどという情報を入手することができる。

Pingには非常に大きな可能性があると思う。ひとつにはiTunes利用者である1億6千万もの人々にリーチすることができるからだ。これから発展していくのは間違いないところだろう。ただスタート時の様子を見ると、Appleが「ソーシャル」をうまく使いこなせない様子なのがわかってしまう。機能は全くもって不十分で、それがために魅力を減じてしまっている。

まず最大の問題だと感じるのはPingがiTunesの中でしか機能しないことだ。iTunesの中にあり、外部との連携性を全く持っていない。iTunesの仕組みはソーシャル性を持っていない。ウェブ上に存在すらしていない。そしてPingも外部のソーシャルネットワークと一切連携しない。iTunes Pingをどのように使っているのか、TwitterやFacebookなどの外部ソーシャルネットワークから全く知ることができないのだ。PingがiTunes自体をソーシャルなものにしたのだという見解はあり得る。しかしiTunesをソーシャル目的で利用する人は少なかろう。iTunesはそもそもストアだ。何か買いにいくことはあるけれど、用事が終わればすぐに出てくる。Pingの存在によりiTunesでの滞留時間が増えることになるのかどうか、疑問に思う。

現状の問題点を利用する流れに沿ってみてみよう。まずサインアップしても知り合いをPing上で探すのは難しい。当初、この問題に対処するためにFacebook Connectが採用されたが、両社間の話し合いが決着するまでFacebook Connect機能は停止されることとなった。したがって現在のところはPingに参加していそうな人のあたりをつけて検索してみるしかない。あるいはひとりひとりにメールで招待を送るしかない。名前で検索する場合には、知らない人が知人と同じ名前を使っている可能性もある(なりすましやスパマー問題は既に問題化しつつある。確認した際には数十名もの「スティーブ・ジョブズ」がいた。今は削除されているようだ)。知り合いをGmailなどメールソフトの連絡先からインポートしたり、Twitterなどのソーシャルネットワークで既にフォローしている人をそのままフォローすることもできない。

多少なりとも効率的に人を探すのなら、なんとか1人ないし2人のアーリーアダプター的知人を見つけ、その知人のプロフィールを見て、その人がフォローしている人を自分もフォローしてみるというくらいだろう。個人的にはこれまでにどこかでフォローしているブロガーやテック系の人々のアカウントしか発見できなかった。まだ彼らがどういう音楽的趣味を持っているのかわからないが、そのうちにきっと分かってくるだろう。本来はもっと簡単にいろいろと楽しめるようになっているべきだと思う。ただPingの不備はこれだけではない。

誰かをフォローし始めると、相手が「いいね!」ボタンを押したりレーティングを付したりレビューしたもの、それに購入したものの情報が流れてくるようになる。そうした情報がiTunesの中に流れる「ソーシャル」情報ということになるわけだ。このPingはiPhoneやiPod Touchでも利用できる

但しここでもAppleのやり方をきちんと把握しておく必要がある。Pingの目的はiTunesでの売り上げを増やすことだ。iTunesに登録している曲を通じてコミュニケーションをはかるというものではない。iTunes Store以外の方法で用意した楽曲については「いいね!」の評価すらできない。iTunes Storeで曲やアルバムを購入するとPingでは購入者がその楽曲を気に入っているのだと判断する(間違っていると思う)。実際にどのような曲を聴いているのかについて、Pingはストリームに流してくれもしない。

「いいね!」と評価できるのはiTunes Storeにある曲だけだ。おまけにその方法も簡単ではない。アルバム画像の下に大きく「いいね!」のボタンは表示されている。しかし特定の曲を評価したいときは購入ボタン脇のドロップダウンメニューを使って操作する必要がある。購入するつもりではないのに購入ボタンをクリックしてしまうことだってあり得る。

ともかく「いいね!」の評価を行うと、その情報はストリーム上に表示されるようになる。フォロワーにも内容が表示されるわけだが、その際には大きく「購入する」ボタンが表示されることになる。もちろん購入前に視聴できるのは一部だけで、曲全体を通して聞いてみることもできない。また、プレイリストの公開もできない。まるで友人に対して音楽販売員のように振舞うことしかできないのだ。

つまるところPingはあまりに商業目的を前面に出しすぎているのだ。面白さに対する配慮が欠けている。トップチャートなどのゲーム的要素も全く用意していない。高く評価した楽曲が、その人のフォロワーによってどれだけ購入されているのかなどの情報もない。もちろん他の指標も用意されていない。誰が音楽推薦者として優れているのかを見る手段もないということだ。

Pingは結局iTunesおよびアーティストにとってのプロモーションツールということになる。U2などのバンドをフォローしてみると、どうやらアカウント運営者にはビデオの公開などができる特別アカウントが与えられているらしい(他にどのような機能がミュージシャンアカウントに用意されているのかは不明)。これはこれで良いが、なぜ個人利用者も写真やビデオをアップロードできるようにしていないのだろう。それに「いいね!」ボタンをクリックしたり、レーティング情報を記入したり、あるいは購入してからでないとコメントできない点にも不満を感じる。

もちろんPingはiTunes Storeでの売上向上に寄与することだろう。また、何らかの目的でiTunesを利用する際にはPingも確認することにはなるだろう。ただPingは、その可能性を活かしきっているとはとても言えないように思う。Pingを使う人が本当に知りたいのは友人がどのような楽曲を気に入っていて、iTunesを利用して聴いている楽曲に対してどのような感想を持っているのかということだろう。iTunes Storeで購入したものでなくても、iTunesに登録していたり、あるいはiPodsで持ち運んでいる楽曲についても「いいね!」を行ったり、他の人に勧めたりできるようにするだけで、Pingははるかに面白いものとなり得るだろう。もちろんプレイリストの公開なども必須と言える機能だと思う。

Pingはその可能性を全く活かしきれていない。「ソーシャル」から孤立しており、販売目的を前面に押し出しすぎ、そして退屈なものに成り下がってしまっている。

原文へ

(翻訳:Maeda, H)