[jp]噂のベンチャーファーム、Y Combinatorの実態に迫る(その1)

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Y CombinatorについてはTechCrunch Japanの読者であれば名前ぐらいは知っているだろう。記事の中でも、まるで誰もが知っていることのように扱っているからね。

でも、実際のところY Combinatorについては僕らは知らないことばかりだ。なにせ主催者であるPaul Grahamにも簡単には会えないし、実際に応募して採用された起業家も日本で会うことはない(いや、もしかしたらいるのかもしれないけれど)。ということで、TechCrunch Japanでは実際にY Combinatorとコンタクトして話を聞いてきた。

その前に、Y Combinatorについておさらいしておくと、いや、これはFAQのサイトに書いてあるのだけれど、次のようなスタイルで投資をするプログラムだ。

  • スタートアップの立ち上げ期、あるいはシード期のスタートアップに投資をする
  • 投資額は一般には1社あたり1万1,000ドル(日本円で90万円)に加えて創業者一人あたり3,000ドル(同25万円)を投資する。つまり、創業者が3人いれば投資額は2万ドル(同164万円)になる
  • 上記の投資額でY Combinatorは2〜10パーセントのシェアを持つ。平均は6ないし7パーセントなので、たとえば2万ドルで7パーセントのシェアだとすると、投資を受けた会社の価値はいきなりおよそ28万6,000ドル(日本円で2,300万円程度)となる
  • この投資額で何をするかというと3カ月という期間でローンチできる製品(のプロトタイプやベータ版)を作る
  • 投資のラウンドは年2回で、1〜3月と6〜8月のそれぞれ3カ月
  • 重要なのは彼らはインキュベーターではないと宣言していること。Y Combinator自身のオフィスはあるけれど、そこは投資先企業がオフィスを構える場所とはなっていない(なぜなら、投資家の施設に投資先企業を収容するのは、投資家が創業者を雇用しているみたいだからとしている)
  • とはいえ、Y Combinatorの投資先として採用された企業はベイエリアに居を構える必要がある(なぜなら毎週オフィスに出向かなければならないから)

まぁざっとこんなところだろうか。今回、取材に応じてくれたのは、Y CombinatorのベンチャーパートナーのHarj Taggarだ。8月までの投資のプログラム時期はとても忙しいそうだけれど、それが終了していまは多少は時間があるということでTechCrunch Japanのインタビューにつきあってくれた。

そしてもう1人。実際に日本からY Combinatorに応募して、見ごとパスして投資を受けて今年の6月から8月の期間にプログラムに参加していたGinzaMetricsのRay Grieselhuberだ(彼の会社についてはTechCrunch Japanでも記事にしている)。彼はそれまで日本で生活していたのだけれど、3月末にY Combinatorからの投資が決まり、6月からはベイエリアで生活をしている。彼には応募者側からの話を聞いた。


■誰を選ぶか。

Y Combinator(以下、YC)がスタートしたのは2007年。それ以来、評判となるようなプロダクトを輩出してきたのは事実だ。有名どこで言えば、ファイルホスティングサービスのDropbox、文書シェアのScribd、iPhoneやAndroidで個人のコンタクト情報を交換するアプリBumpなんかもYC出身の企業だ。最初の頃はアイデアだけでやってくる企業も多かったけれど、YCに選ばれることがプレミアムにもなってきて、現在は月に600万円程度も売上がある企業も応募してきているのだという。

では、YCの投資ラウンドに選ばれる企業は売上がある企業が選ばれるのかというと、そうではないとHarjはいう。

何で判断するのかといえば、「人を見る」のだという。

YCの応募時には、なにをする会社なのかは当然のこと、創業者のバックグラウンドも書類として提示することになる。そして晴れて書類審査をパスすると、応募者はYCとのインタビューに臨む。HarjによればインタビューはPaul Graham(以下、愛称のPG)やHarjを含む5人でジャッジするのだというが、インタビュー時間はたった10分そしてたった5分でジャッジするという。

インタビュー時には応募者のバックグラウンドはわかっているし、どんな経験を積んできたのかもだいたい理解している。だから、その人物が本当に成長できるのか、これから何をしたいのか、どこに行き着こうとしているのかを見極めているという。

その一例が、こんな風だそうだ。

たとえば普通のベンチャーキャピタルは、その企業の事業について、マーケットサイズがどれぐらいかといった質問をする(最近だとこんな記事があったね、もちろんよく理解しているベンチャーキャピタルもいるけれど)。しかし、YCでは「これから自分のサービスに非常に多くのユーザーを捕まえなければならないとしたら、どうするか」といった類の質問をする、たとえ、その応募者がエンドユーザーにサービスを提供した経験がなくてもだ。ここで、「わからないけれど、これから調べてうまく捕まえる」といった答えをする応募者はダメで、その場で自分なりのアイデアを披露するタイプの人間を良しとする。

一方、Rayによれば日本からインタビューに出向くのにYCは600ドルを払ってくれたのだという。インタビュー時間は本当に10分だったそうだが、受け答えはインパクトがないとダメで、実際に見せられるデモがないとたぶん受からないだろうという。Harjが言うのよりも条件は厳しそうだ。そして当然だが、自分のやっていることをわかりやすく説明できなければならない。ただ、これはどんな投資先でも同じことだとは思うが。

■たった3カ月で何をするのか。

PGによる説明にYCが何をするのかが詳しく書かれているのだが(ここに日本語の抄訳あり)、ここでは実際に聞いた話を披露しておこう。

みごとインタビューにパスしてYCの投資が決まればすぐに彼らからのサポートの期間に入る。これが前述のように3カ月間ということになるわけだが、同じ時期にパスしたスタートアップの創業者と一緒に時間を過ごすことになる。なんとなく、これは彼らの話を聞いて想像したイメージだが3カ月間短期のマンツーマン起業家スクールに入るという感覚のようだ。

3カ月間、毎週続けられるのが、オフィスアワーと火曜日の夜のディナーだ。

オフィスアワーは週に2〜3日、投資を受けた創業者たちは実際にYCのオフィスにやってきて、PGなどYCのスタッフと議論をする。別に義務ではなくて、好きなときに好きなだけ議論するのだけど、最初の1カ月は製品の構想だけで応募してきた人はその構想をよりよいものにするためにそのアイデアをとことん詰めていく。一方、製品もできて売上もある応募者であれば、その先のマーケットをどうやって広げるか、IPOを目指すのかといった先の話を詰めていく。

いわばオフィスアワーはメンターであるYCのパートナーとの対話ということになるわけだが、Rayによれば、とにかく早くやらなけれダメで、早くプロダクトを作る方法を見つけてそれを実践していくことをアドバイスとして受けたという。PGからコーディングのアドバイスも受けられるのかと思いきや、そういうことはなくて、製品の善し悪しについて言及されるという。

重要なのが火曜日のディナー。ここでは同期の創業者たちが一同に会し、彼らと会話をすることになる。互いに自分がやっていることを説明し、そして毎週互いにフィードバックをし合い、来週までにはここまでやると宣言する。そして翌週にレビューしあう。

これがすごいプレッシャーとなるのだという。だから必死に働く。

また、毎週、成功した起業家や投資家たちがやってきて、彼らが経験した辛いことや楽しいことをシェアしてくれるのだという。FacebookのMark Zuckerberg、TwitterのEvan Williams、Linkedinの創業者でエンジェル投資家のReid Hoffmanなどがの有名人が毎週入れ替わりでスピーチしにやってくるという。当然、有力な彼らとのつながりを持てるのも大きな魅力だ。

前述のようにYCのオフィスには、創業者たちが働くスペースはない。彼らはベイエリアのアパートなんかを借りて、そこが住居兼オフィスとなってそこで働いているケースがほとんだ。とはいえ、オフィスアワーやディナーでYCのスタッフやYCの同期生たちと会うことにはなる。それ以外は自分のオフィスに篭もりっきってひたすら製品を作ることになる。

(続きは次回に

“[jp]噂のベンチャーファーム、Y Combinatorの実態に迫る(その1)” への7件のフィードバック

  1. Paul Grahamとはこの夏3回立ち話が出来たし彼のオフィスにもお邪魔出来たが、高校の部室にキッチンがくっついたような空間で自由模倣な雰囲気を醸し出していた。また、プロフェッショナル限定Q&AサイトのOpziの創業社長(19歳くらいでCornell卒業、以前は弁護士という天才肌)とも話したが、投資される側は別にYCに投資されるために×××という要素はなかった。

  2. Paul Grahamとはこの夏3回立ち話が出来たし彼のオフィスにもお邪魔出来たが、高校の部室にキッチンがくっついたような空間で自由模倣な雰囲気を醸し出していた。また、プロフェッショナル限定Q&AサイトのOpziの創業社長(19歳くらいでCornell卒業、以前は弁護士という天才肌)とも話したが、投資される側は別にYCに投資されるために×××という要素はなかった。

  3. Opziはこの間のDisruptにも出ていましたね。その彼はそうなのかもしれないですけど、YCから投資を受けるというのはそれはそれで重要なファクターみたいですよ、なにせコネ社会のシリコンバレーですから。

  4. Opziはこの間のDisruptにも出ていましたね。その彼はそうなのかもしれないですけど、YCから投資を受けるというのはそれはそれで重要なファクターみたいですよ、なにせコネ社会のシリコンバレーですから。

  5. まさに仰る通りだと思います。小職の表現が中途半端でしたが、要は、YC仕様に何らか特別に肩肘をはろうとはせずに、あくまで一投資家として自然体で彼らに臨むことを皆心がけているという印象でした(出資を受けた人たち)。そしてそれが成功裏に出資に結びつく可能性を引き寄せるということ。付け加えて、正直であること。OK Waveさんあたり、Opziに挑まないのかなぁ。。。

  6. […] 時間があいてしまったので忘れてしまった人もいるかもしれないけれど、いまみんなが注目するベンチャーキャピタルファームのY Combinator(以下YC)についての解説の第二弾を掲載しよう。忘れてしまった人は前回記事でおさらいしてほしい。 […]

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