Chrome OS初体験記–パソコンがクラウドにあるという状態は慣れが必要だ

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ご存じと思うが、今週の初めにGoogleは、Chrome Web StoreとChrome OSを立ち上げるための重要なイベントを開催した。Chrome OSは、アプリケーションはすべてWebアプリケーションとブラウザの拡張機能(エクステンション)だけという、Googleが初めて世に問うオペレーティングシステムだ。Chrome OSが動く消費者製品としてのノートパソコンなどはまだないし、出るのは来年の中頃と言われているが、GoogleはコードネームCr-48という無印のテストマシンを合衆国のメディアやマニアの人たちに配布して、このOSのテストを行っている。本誌も今朝(米国時間12/9)その製品を入手し、それからずっとぼくがメインのマシンとして使ってきた。以下に、体験的感想を述べよう。

Cr-48は実際に誰もが買える製品ではないので、ハードウェアを批評してもあまり意味がない。それは今後、Asusなどが製品を発売してからやればいい。だからここでは、基本的なことだけを述べておこう: このコンピュータは小さいが、今の超ポータブルなMacBook Airのように軽くはない(むしろ2005年ごろの12インチの PowerBook G4に近い)。USBポートはあるが、ドライバはごく限られたものしかない。そして、SDカード用のスロットとVGAポートがある。

キーボードはフルサイズで、今のAppleのコンピュータのような感触だ。マウストラックパッドは…とくにトラックパッドのほうのソフトが…完全なクソだ。ポイントしてクリックすることはできるが、それ以外のことができない。’右クリック’は2本の指をトラックパッドの上でたたくのだが、3回に2回ぐらいしか成功しない。テキストをセレクトしたり、何かをドラッグするのも、なかなかうまくいかない。

速いか? まあ速いけど、とろい部分もある。たとえば、タブをクリックしてからコンテンツが表示されるまでに、若干の間がある。それほど気にはならないが、なめらかな動きを損なっていることは事実だ。また、コンテンツの豊富なWebページのスクロールも、ひっかかりがあり、ときには完全に遅くなる瞬間がある。

でも、ここらのハードウェアとソフトウェアの問題は、数か月後に出る消費者製品としての初のChrome OSノートブックには、あるはずがない(あったら売れない)。Flashが耐え難いほど遅いのも、一般消費者がCr-48を使うはずはないから、問題とは言えない。要するにこれらの問題はすべて、消費者向け最終製品においては、あってはならないものだ。

でも、大きな疑問は残る。それは、クラウドで生活すること。これまでのコンピュータを忘れて、ローカル機上にほとんど何もない軽量のChrome OSマシンに身も心も移行できるだろうか?

答は”たぶんできるだろう”だが、あとで述べるように、これはGoogleが完全にコントロールできる問題ではない。

ブラウザを操作しているだけなのに、これがOSだと言われるのは、なーんかヘンな気分だ。音楽を聴くアプリケーションはブラウザのタブ。メールもブラウザのタブ。自分の文書もブラウザのタブだ。こういうWebベースのアプリケーションをすでに日常使っている方も多いと思われるが、何かのアプリケーションを使おうと思ったら、それは必ずブラウザの背後にある、あるいはタスクバーに最小化されている、という感覚に慣れるのがたいへんだ。これまで10年20年、複数のウィンドウが層状に重なる形のオペレーティングシステムを使い慣れているから、Chrome OSは慣れるまでに時間がかかるだろう。今まで運転したことのない車種を初めて運転するときの、ややまごついた感覚に、似ているかな。

しかし学習曲線はそれほど急峻ではない。ぼくの場合、「固定タブ(Pinned Tab)」がChrome OS学習の鍵だ。それは、Chromeブラウザでも便利に感じるタブの形式だが、タブイコール個々のアプリケーションであるChrome OSでは、必須のものだ。アプリケーションをたくさん開いているときは、特定のアプリケーションを探すために10個以上のタブをかき分けかき分けしなければならないが、いちばんよく使うアプリケーションとWebサイト…Gmail、MOG、Twitter、TechCrunch…を固定タブにしておけば、作業は急に簡単になる。

Chrome OSには、それを使いやすく感じさせるための工夫が、あといくつかある。その最大のものが、パネルだろう(GoogleのUIのスタンダードの中でもとくに見事なものの一つだ)。Chromiumプロジェクトのサイトには、こう説明されている

Chromium OSのパネルは、ユーザが現在のアプリケーションのビューを去ることなくマルチタスクができるための、コンテナとして使います。たとえば、音楽プレーヤーを使いながら、パネルでチャットでき、音楽を聴くことと友だちとチャットすることを同時にできます。さらにこのとき、メインウィンドウではビデオを見たり長いドキュメントを読むこともできるでしょう。

パネルはふだんは画面の下の方で休んでいる小さなウィジェットなので、かろうじてマウスを当てられるぐらいの大きさしかなく、使わないときには画面のスペースをほとんど占拠しない。マウスを当てるとタイトルが表示され、クリックすると、IMやノートパッドなど、その本性を現す。パネルはサイズを調節でき、何か頻繁に素早く使いたいものを置いておくには便利なミニウィンドウだ。今のところ唯一の問題は、Chrome Web Storeにパネルをサポートしているアプリケーションを集めた場所が、どうしても見つからないことだ。読者のみなさま、ぜひご自分で見つけていただきたい。

今ある一連のエクステンションも、Chrome OSの使い心地に貢献している。sync機能を使ってデスクトップの現在の設定をバックアップできるし、Google Voiceの通知機能、Chrome-to-Phone、辞書エクステンションなど、いずれも快調に使える。

インストールしたWebアプリケーションをすべて試したり評価するのに、数日はかかるだろう。そのあとなら、もっとたくさん書くことがあるかもしれない。今は、MOGの音楽アプリケーションなど、わずかなお気に入りを使っているだけだ。MOGのアプリケーションは、試用期間以降は有料になるが、iTunesの代わりとして十分に使える。MOGはWebアプリケーション向けにUIを一新したので、誰もが使い慣れているふつうのフル画面の音楽ブラウザのように見える。今のところ、ぼくにはこれで十分だ。

わずかな留保はあるが、Skitchや(場合によっては)Photoshopの身代わりとしては、Aviaryの画像エディタが頼りになる。ただし画像の編集はローカルなファイルでやることが多いから、Chrome OSの上でやるのはやや違和感がある。またAviaryのアプリケーションは、別のウィンドウを開いたり、共有オプションがややこしかったりするから、ちょっとかったるい。コンテンツをコンピュータのディスクに保存することは、できるはずだと思うのだけど、ファイルマネージャにはまだその機能がないようだ。

今日はChrome OSのファイルブラウザを一度だけ使う機会があった。このOSのファイルシステムを熟知するまでは、ちょっとおっかなびっくりだ。まず、’My Photos’とか’Desktop’といった、おなじみのフォルダがない。その代わりに無数のディレクトリがあるが、たぶんそれらは、Linuxのユーザにしか分からないものだ(下の画像)。しかし、一般向けの消費者製品では、こういう部分は見せないほうがよいと思う。ふつうの人がこの画面を見たら、途方に暮れるだけだろう。

1Passwordがサポートされていないことも、残念だ。1Passwordはとても良いパスワードマネージャだ(もちろんほかにもあるが)。Chromeブラウザのエクステンションはあるが、それはChrome OSでは使えないようだ。だからぼくの場合は、いちいち携帯を見て、パスワードを探さなければならない。たいへんすぎる。

そろそろ、とりあえずの結論を述べよう。

消費者向けの発表が来年になることは、Googleにとっては不満かもしれないが、こういうテストとフィードバックの機会はきわめて重要だ。Googleが次の数か月でやるべきことの中心は、OS自身の改良というよりむしろ、Chrome OS向けに最適化されたサードパーティソフトウェアの制作だろう。

その点を考えると、ドライバのサポートが少ないとか、UIのちょっとした不具合、”次はソフトウェアをテストしたい”というGoogleの表明などは、いずれも脇道だ。しかもChrome OSは、重要な機能性をサードパーティに依存する。現状を見るかぎり、今後はそれにいちばん時間がかかるだろう。

パネルがあるおかげで、Chrome OSのアプリケーションはきわめて快調に使える。しかしデベロッパは、’Chrome OSのパネル対応のアプリケーション’というものを作らなければならない。Webアプリケーションは(Google Docsに限らず)、オフラインのストレージがどうしても必要だ。さらに、1Passwordのように、Chrome OSをまったくサポートしていないアプリケーションもある。

さて、これからの半年ぐらいは、何千人もの新しもの好きの人たちやデベロッパがCr-48をあちこち持ち歩いて、経験した問題点を声高に触れ回るだろう。でも、その後一般消費者向けの製品が出たら、その製品の上ではそういった問題はほとんど見つからないと思う。

Chrome OSは、一部のマニア向けの製品ではない。Googleが本腰を入れた大型プロジェクトだ。今後、Googleとサードパーティのデベロッパたちが穴をすべて埋めてぴかぴかに磨けば、Chrome OS製品は、タブレットを主力にメジャーな売れ筋商品になっていくだろう。メインのコンピュータとしてiPadを使っている層にはアピールしないかもしれないが、職場ではMicrosoft Windowsに置き換わり、あるいは家庭では、Mac OS Xすら置換していくかもしれない。

要注目。これからもますます、本誌の記事などのネタをたくさん提供してくれる製品のようだ。

注記: Chrome OSの初体験記としては、Danny Sullivanのこの記事も注目だ。彼も、パスワードマネージャの問題で悩んでいる。

[原文へ]
[jpTechCrunch最新記事サムネイル集]
[米TechCrunch最新記事サムネイル集]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

“Chrome OS初体験記–パソコンがクラウドにあるという状態は慣れが必要だ” への11件のフィードバック

  1. imo より:

    google擁護に必死に見えるが。。

  2. imo より:

    google擁護に必死に見えるが。。

  3. Huang Yonghong より:

    Chrome OSは失敗する運命にある。

  4. Huang Yonghong より:

    Chrome OS の唯一の価値はSecurity. 但し、伝統の価値を否定しすぎた。Chrome OSは商品として現れる日は来ない。

  5. FT より:

    仕様をしっかりした物にする必要があるけど、値段の方も重要。
    19800円で売らないとセールスポイントが希薄で一般人に買ってもらえない。
    セールスポイントが「起動が早い、ブラウジングが早い」だけでは厳しい。
    「ブラウザだけのOS」と「フル機能のOS」のノートPCが同じ値段、どっちを買いますか?って聞かれたら、
    一般人はそりゃ多機能を選びそうだし。パーツ構成安くできるんだし2万は切らないとね、、。

  6. Siniti Yamanobe より:

    所有することからレンタルする事へ。新次元のコミュニズムかな。

  7. […] ▼TechCrunch Chrome OS初体験記 パソコンがクラウドにあるという状態は慣れが必要だ ▼TechCrunch インターネットそのものは止められない: […]

  8. おっさん より:

    いわゆる「オタク層」は買うだろうし、一定の成果もあるとは思う。
    けどやはりLinux程度の認知で終わるのではないか。

    パソコンを使っている人や企業には、それまでのデジタル財産があり、
    本格的に何かをしようとすればその財産をどうしても利用するだろう。
    (使い方、つまりソフトへの習熟度の度合いだって大事な財産)
    なにかを「作る」場合、クラウドというのはあまりにもアバウトすぎる。

    では、なにかを消費する場合ならどうか?
    若者のパソコン離れが進んでいるという記事がある。その全てを鵜呑みには
    しないけど、すでにスマートフォンやタッチパネルデバイスが出回っていて
    若者はそれらの機器で快適にデジタル資産を消費している実態がある。

    さらにクラウドであれば作業の多くを通信に費やすことが容易く予想される。
    つまりソフトバンク糞!というような問題がある限り、仕事では使えず
    消費もかったるくなる可能性だって否定できない。

    個人的には、Googleとネームバリューがあるから、ここまで注目されているのだ
    というのが感想。

  9. おっさん より:

    いわゆる「オタク層」は買うだろうし、一定の成果もあるとは思う。
    けどやはりLinux程度の認知で終わるのではないか。

    パソコンを使っている人や企業には、それまでのデジタル財産があり、
    本格的に何かをしようとすればその財産をどうしても利用するだろう。
    (使い方、つまりソフトへの習熟度の度合いだって大事な財産)
    なにかを「作る」場合、クラウドというのはあまりにもアバウトすぎる。

    では、なにかを消費する場合ならどうか?
    若者のパソコン離れが進んでいるという記事がある。その全てを鵜呑みには
    しないけど、すでにスマートフォンやタッチパネルデバイスが出回っていて
    若者はそれらの機器で快適にデジタル資産を消費している実態がある。

    さらにクラウドであれば作業の多くを通信に費やすことが容易く予想される。
    つまりソフトバンク糞!というような問題がある限り、仕事では使えず
    消費もかったるくなる可能性だって否定できない。

    個人的には、Googleとネームバリューがあるから、ここまで注目されているのだ
    というのが感想。

  10. […] Chrome OS初体験記–パソコンがクラウドにあるという状態は慣れが必要だ […]

  11. […] 先日 Google が Chrome OS 搭載のノート PC のテスターを募集していたが、早速当選者のもとに現物が届き始めたようだ。各所で早速レビューが公開されているが、TechCrunch の記事によると、性能や使い勝手的にはまだ微妙なレベルというようだ。 […]

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