H.264
Ballmer

iPhone開放で瀬戸際に追い詰められたGoogleとMicrosoft

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ドットコムバブル崩壊直後のシリコンバレーはこうだった

[筆者: Steve Gillmor]

火曜日(米国時間1/11)には、Steve BallmerがBob Mugliaをクビにし、GoogleがChromeからH.264をクビにした。チューブ(the tubes, インターネットのこと)*は、この二つの互いに関係なさそうな事件の分析で過熱しているが、私なら両者をミキサーで混ぜて、飲みづらいジュースぐらい作れるかもしれない。その味をしめる役をする強烈な香辛料は、水曜日の、VerizonからのiPhone 4の発表だ。〔*: tube、かつて某議員が、インターネットてチューブ(管、≒トンネル)みたいなものだ、と言ったことが、meme的な語源。〕

最近はAndroidの話題が加速度的に増えている。CESの会場には、100万台のAndroidタブレットが咲き乱れていたそうじゃないか。でも、聞こえてくる世間話によれば、Appleは単一キャリア方式の世界に生きているという。それはT型フォードの世界であり、色は選べますが車種はそれ(AT&T)しかないという歴史的過去の物語だ。毎日、いろんな人たちがほかのキャリアのお店からAndroidを買って帰る。どこで買っても同じだ、と思っている。PRがどんなにもっともらしいことを言っても、Androidが広範な市場に対して売れているのは、「オープン対クローズド」のせいでもなく、「ストア対マーケット」のせいでも、またさまざまな機能の有無や優劣のせいでもない。

Androidが売れている理由は、機能がiPhoneとほぼ互角であるため、ユーザ体験がiPhoneとほぼ同じであるため、iPhoneのそっくりさんとして、スーパーマーケットのKleenex(クリネックスティッシュ)やCheeriosの感覚で買えるためだ。つまりそれは、安い量産品のブランドだ。でも、Googleが繰り出すこの柔術(jujitsu)のワザは、廉価版の量産品であっても、それを成り立たせているルールの急変には弱い。Googleが各キャリアに与えているものは、まあまあ互いにそれほど大きな違いのない、iPhoneそっくりさんの量産品モデルだ。そこでAppleも今や安心して〔Androidのやり方に倣って〕、キャリア犬から首輪とリードを外して自由にしてやり、テザリング、IM、そして最終的にはVoIPといった彼らの利益源からの独占的なさや取りをやめることができる。

まずワンペアだ。VerizonがiPhone 4を出す。ちょっとデザインが違うが、いいじゃないか。データと音声でマルチタスクができないが、これも良しとしよう。3G上の無制限のテザリングや音声チャットのお値段の、バカ高さも忘れよう。なんといっても、今や自社のブランドが本物のiPhoneと直接に競合するのだ。もちろん、Verizonの契約ユーザたちからの、さばききれないほどの需要は、大きくふくれあがるだろう。しかしもっと重要なのは、これからのAppleはキャリアを特定せず全市場に対して、iPhone 5を出せる。そして各キャリアのユーザたちは、テレビ受像機能、企業向けの機能、オフィス労働者向けの機能などなどを売り込まれる。一つのデバイスに対して、キャリアたちはサービスの魅力で戦いあうわけだ。

そして、まさにここ〔iPhoneの全キャリアへの開放という事態〕に、GoogleのH.264モンダイが登場する。これからどうするのか、いよいよ腹をくくらなければならなくなったGoogleは、自分のプラットホームをユニークで価値あるものに仕立てるためなら、なんでもしなければならない。H.264というストア〔Apple Store〕のブランドは、採用率が50%以上ある。だからAppleは、FlashをブロックしてもiOSのユーザのほとんどが困らない、という立場だ。独占キャリアなし、という広大な路線を歩み始めたAppleの、市場席巻に対抗するためには、何かラジカルなことをしなければならない。Flashは死んだという、もはや無視できない議論に勝つために、Googleは”オープン性の神話”と強引な力業(ちからわざ)という妙な組み合わせを持ち出した。それは、Googleがその動機とパートナー戦略の信頼性について言うことは、何一つ信用できない、とデベロッパやChromeの採用者に告げているのだが、もはやなりふり構ってはいられない。

その結果Googleは、会社の綱領を”Webのために良いものはわが社のために良い”から、”Webのために良くてAppleのために悪いものはわが社にとって良い”に改めることになる。Googleは、VP8のパテント問題を精査しなければならない。その結果がノーと出れば最悪だ。Googleの態度は、Verizon iPhoneとその人気に対する過剰反応のようでもあり、急がないとChromeはつぶれるという焦りのようだ(猶予は2か月ぐらいしかない)。そして短期的な策としてはFlashのサポートを続けて、プラグインのダウンロードを不要にする。なんか奇妙な感じがするのは、これによってGoogleバージョンのSilverlight劇が幕開けしたみたいなのだ。それはビデオとChromeで始まり、それからYouTubeを介してほかのブラウザにも進攻していく。

Bob Mugliaが荷物をまとめて出て行ったのは、Silverlightが原因だと言われている。Steve Sinofskyが権力を固めてBallmerを継ぐためだ、と。WindowsをスーパーWeb OSにしてしまう(スーパーWeb OSの中にWindowsを埋め込んでしまう)、という大野心がある。MugliaとRay Ozzieは、そのための隠れ馬としてSilverlightを使うという点で、考えが一致していた。タイミングに関する見解だけが、両者で違っていた。ビジョンと戦略を持っているのはOzzie、Mugliaの手には実装チームと、Microsoftで最も好調なServers and Tools Business(サーバとツール事業部)で稼いだ金がある。Mugliaは、MicrosoftウォッチャーのジャーナリストMary Jo Foleyのインタビューで、Silverlightプロジェクトの縮小について語ったことがある。Ozzie/Mugliaの両人によるお家乗っ取り劇めいた姿勢は、それに対する不満が原因だったかもしれない。しかし、やはりここでも、もっと重要なのは、iPhoneとiPadのVerizon進出がMicrosoftに
与えた脅威だ。全キャリアがiOSを扱えるとなったら、Windows PhoneやWindowsタブレットMIAは大打撃だ。

Androidの市場での成功と同様に、OzzieとMugliaの成功は、プライベートクラウドではサーバ部門は儲からないことを実証し、また、ますます場違いでコラボレーションもできないOfficeプラットホームの地位を下げたことだ。それによって、会社の次世代の救世主Azureを軸とする経営モデルを確立した。それは、これまでのMicrosoftにはいなかった新しいタイプの社長が率いる必要があり、もしくは、Ballmerがじきじきに統率しなければならない。モバイルでは、MicrosoftはGoogleに抜き去られた。そして今度は、GoogleとMicrosoftの両方をAppleが抜こうとしている。皮肉なことに、Ozzieが去ったことはMugliaにとって両足を切られたようなものだ。彼の利益貢献度は、社内でSinofskyの次の位置に付けていたのだから。

Microsoftは、Ozzie/Mugliaの時代にオープン云々という新しい言葉を学び、クラウドへ前進する決意を固めた。Sinofsky/Ballmerの時代には、クラウドを経営の主軸にせざるをえないし、本格的なOffice離れが始まる前に、企業顧客の強力な引き留め策を編み出さなければならない。そして一方では、ストアブランドのための新世代のソーシャルワーカーたちが、新しいメッセージを広めようとしている。それはAppleの、動的オブジェクトの集合をリアルタイムに扱うという、明日の主力イノベーションに歩調を合わせたメッセージだ。FaceTime、AirPlay、Mac AppStore、TwitterのリアルタイムMacアプリケーション、等々という形でそのイノベーションは押し寄せる。

繰り返すと: Verizonはキャリアを代表してAppleに降伏する。Googleは、スマートフォンを超える’スーパーフォン’で全市場の全キャリアを教育したと満足していたが、突然、弱さを見せ始め、オープン性とか標準性といったまやかしの手口でAppleにダメージを与えようとしたことによって、信用も失った。Microsoftは、クラウドへの全面移行で満足していたが、Ballmerの親衛隊で後継者でもある人物をなだめるためにクラウドの長を解雇し、Silverlightクーデターを終わらせなければならなかった。そして、せっかくOzzieが彼らを救い出した元の泥沼に戻る。これから売れる携帯電話の3台のうち2台はiOSになり、タブレットの5台に4台をiOSが占め、Mac OSはiOSのモバイルAppStoreに統一される。AppleとGoogleと、古いMicrosoftモデルの三者が、横一線に並んでトップを争うことになる。こうなったのはすべて、Verizonのせいだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))