出版業界の抵抗をよそに、AppleがiTunes経由の定期購読を必須に

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先週Rupert MurdockのThe Dailyが発刊された時、AppleのVP Eddy Cueが壇上で、iTuneで配布するiPad出版物のワンクリック定期購読を発表した。The Dailyはこのワンクリック課金機能を実装済みで、近々他のiPad用新聞や雑誌でも使えるようにすることをCueが約束した。その後Cueは、ニューヨーク市の印刷メディア会社にiPadでの定期購読課金のしくみを説明して回った。

定期購読の収益とデータを誰がコントロールするかは、印刷メディアとAppleの間で長年の争点だった。雑誌社や新聞社は、読者を自社サイトに誘導してiPadアプリの購読手続きをさせれば課金を自身で制御できるが、AppleはiTunesを使うよう強硬に主張している。Appleはこの状況を打開すべく、妥協案を提示しているらしい。読者をiPadアプリから出版社のウェブサイトや支払いポータルに誘導してクレジットカード番号を取得してもよいが、〈同時に〉iTune経由の定期購読を選択肢として加えなくてはならない。

これは鮮やかな反撃である。Appleはようするにこう言っている、「ユーザーの意志にまかせよう」。彼らがiTunesを選ぶことを百も承知で。要するにユーザーにとってデジタル出版物の定期購読は一箇所からできる方が簡単なのだ。しかし、すでに新聞各社はiTunesの使用を強制されることに対して不満を公にしている。例外はThe Dailyで、初の定期購読事例でありiTunes経由のみで提供している(これに対してNews CorpのWSJアプリは、ウェブサイトに誘導して購読手続を行っている)。Appleが他のメディアにもThe Daily ― iTunes経由の課金と99セントという価格 ― を追従してほしいのはもちろんである(いったいSteve Jobsがどんな手を使ってこの価格にするようMurdochを説得したのかは興味深い)。しかし、他のメディア会社が自前の定期購読を実現するためには、iTunesでの購読も選択肢として提供しなくてはならない。

印刷メディア会社が定期購読を自分でコントロールしたい理由はいくつかある。購読料の30%をAppleに渡すのも気に入らないが、それ以上に、読者との直接購読という関係によって得られるデータを失うわけにはいかない のだ。これが継続性のないものであれば、収益分配を受け入れることもできる。そもそも雑誌や新聞は、ニューススタンドとはすでに利益を分けあっている。iTunesは単なる新しいデジタルニューススタンドだ。違うのは、一回限りのニューススタンド客が、時として定期購読者に転じることだ。多くの読者がご存じの通り、一旦雑誌や新聞を定期購読するとその惰性は何年も続く。

一たび購読客になると、印刷メディア会社はその人について多くを知ることになる。住所、名前、そしてクレジットカード番号。こうした詳細データがあれば、彼らのデータベースマーケターは、かなり正確な購買層データを作ることが可能になり、ターゲット済み捕獲済み読者として広告主に販売できる。一方iTunes経由で売ることは、ブラックボックスにすぎない。もっとも、アプリケーション登録手続きの一環として、出版社は購読者の名前、メールアドレス、郵便番号など同様の情報を一部入手することができる。彼らが本当に心配しているのは、iTunesでは定期購読を簡単に解約できることなのである。

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(翻訳:Nob Takahashi)