ビル・ゲーツが、クリス・ロックに学べること

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編集部注:本稿の執筆者は、ベストセラー作家で元ベンチャーキャピタリストのPeter Sims。同氏の次著は「Little Bets: How Breakthrough Ideas Emerge from Small Discoveries」[仮訳:「小さく賭けろ:ブレークスルーは小さな発見から生まれる」]。Twitterアカウントは@petersims.

最近TechCrunchに寄せられた「エンジニアリング vs 一般教養:ビルとスティーブ、どちらが正しい?という記事でVivek Wadhaは、教育に関する国民的議論を巻き起こし、それはわれわれ全員にとって重要な問題提起だった。

記事を読んでいない方のために書いておくと、WadhwaはUCバークレーおよびデューク大学の教授で、彼が米国テクノロジー企業502社のCEOおよび製品技術責任者652名を調べた結果、エンジニアリングまたはコンピューター技術の学位を持っていたのはわずか37%、数学の学位保持者は2%にすぎないことがわかった。残りの人たちはビジネスから人文科学までさまざまな学位を持っていた。

しかし産業および教育の分野では、STEM ― Science、Technology、Engineering、Mathematics [科学、技術、工学、数学]― を教えることが、革新への国家的挑戦においてカルト的地位を占めてきた。今年、オバマ大統領は新規に1万人のSTEM教員を採用、教育するという $250M(2億5000万ドル)の公的および私的取り組みを発表した。このところBill Gatesは指導的STEM推進者の一人であり、Wadhwaが指摘するように、一般教養など他の教育投資を削減すべきであると示唆している。

しかし、STEMへの投資は必須であるものの、そこには実際の発見、創造、革新に繋がる能力種別の開発が欠けている。

例えばHBOに登場するコメディアのクリス・ロックがすばらしく創造的であることは広く認められているが、彼の出し物は、他のスタンダップ・コメディアンと同じく、かつて彼が小さなクラブで何千回も演じその殆どが当初は失敗だった小さな賭けから学んだ結果である(スタンフォード大学のBob Sutton教授が指摘するように、「The Onion」紙の記者たちは、その爆笑を呼ぶ見出しで知られているが、毎週18本の見出しのために 約600本の候補を提案している。成功率は3%だ)。おそらくロックは新鮮なネタの発見と開発のために、反復アプローチを用いてしつこく取り組んでいるに違いない。そして、来る日も来る日もそのサイクルが繰り返される。

同じく、私が前回のTechCrunchゲスト記事に書いたように、神話とは裏腹に、成功した起業家の殆どが、当初からすばらしいアイディアを持っているわけではない。見つけるのである。

これは、学び、教えることのできるアプローチであるが、今の学校ではまず教えられることがない。

それは、わが国の教育制度が、科学データや歴史情報などの「知識を手取り足取り教え込み」大量の知識をどれだけ保持しているかを測定するためにテストを行うことに注力し、「どうやって知識を創造するかを教えない」からである。

既存の知識を利用することは、多くの状況で完璧に機能するが、新しいことや創造的あるいは独自の何かをする時にはうまくいかない。

例えばわれわれは、自分独自の実験を行う機会も、失敗や誤りを犯す機会も殆ど与えられない。判定基準は主として正しい答えを出すことにおかれる。創造的思考、即ち想像力豊かに考え、自分独自のことを発見する能力の開発にかけられる重みははるかに小さい。

これを変えなくてはならない。

創造的なビジネスリーダーの思考方法に関する6年間にわたる研究の中で、ブリガムヤング大学のJeffrey Dyer教授とINSEADのHal Gregersen教授は、3000人以上の経営者を調査し、革新的会社を立ち上げた人および新しい製品を発明した人500人をインタビューした。その中には、Steve JobsやAmazonのJeff Bezos、VMWareのDiane Greeneらが含まれている。
彼らは、イノベーターとそれ以外の人を区別する、いくつかの「発見スキル」を見つけた。例えばさまざまな経歴の人たちと、実験、観察、質問、ネットワーク作りなどを行うスキルなども含まれる。Gregersenが彼らの発見をこうまとめている。「われわれが注目したスキルのすべてを一語に集約できるかもしれない。それは『知的好奇心』」

Barbara WaltersがLarry PageとSergei Brinをインタビューした際、彼らは自分たちの成功要因をコンピューター科学の学位ではなく、幼少時のモンテッソーリ教育に帰した(モンテッソーリとは、マリア・モンテッソーリが考案し、自律学習、いじり回すこと、発見などに重点を置いた特に幼少児向けの教育法)。「私たちは2人ともモンテッソーリスクールに行きました」とPageが語る、「あれが、ルールや命令に従うことなく、自発的に行動し、世界で起きていることに疑問を抱き、ちょっと違ったやり方で物事を行う訓練だったのでしょう」。

これらの研究成果はわれわれ全員に対してきわめて重要な質問を投げかけている。教育の目的とは何か。それは、現在のシステムが強調しているように、知識を伝えるためなのか、それとも絶えず学び続ける能力を引き出し養うためなのか。

われわれの殆どが、モンテッソーリ校に入学するには遅すぎるが、これまで教えられてきた思考法を変えることはできる。それは、多くの実験や知的好奇心と共に小さくて達成可能なやり方から始まる。Jeff Bezosと仕事をしている人であれば、「何故~じゃないのか?」「もし~なら?」という質問を「何故?」と同じくらい聞く彼の能力に気付くだろう。それこそが、IDEOのパートナー、Ryan Jacobyのことばを借りるなら、「質問は新しい答え」である理由だ。

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(翻訳:Nob Takahashi)