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起業家、ベンチャーキャピタリストの必読書登場―Venture Dealsは資金調達の表裏を詳細に解説

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編集部注:この記事は、起業2回の後、現在GRP Partnersのパートナーを務めるベンチャーキャピタリストのMark Suster (@msuster)のゲスト投稿。SusterはStartup BlogにBothSidesoftheTableを連載している。

tl;dr〔長すぎて読めない〕なんて言うな
読者が起業家ないしVCであるなら、いやともかくテクノロジー業界の関係者であるなら、この本は絶対に買うべきだ。熟読して内容を身につけて欲しい。

私が最初の会社をスタートさせてCEOになったのは1999年だった。その当時、ベンチャーキャピタルから資金を調達することに関してガイドになるような本は一切なかった。タームシート〔投資概要書〕のややこしい詳細を説明してくれる情報もなかった。

タームシートを読んでいると少数株主買取請求権というのが出てきた。はてさて? 私に何のことやらよくわからなかった。そこで弁護士に尋ねてみた。別に問題なさそうに思えたので先へ進んだ。この権利で痛い目に遭うことになるのはずっと先だった。

償還請求権だって? これも問題なさそうに思えた。しかし、タームシートに含まれるあらゆる文言は、過去に株主間で、あるいは株主と経営者の間で起きた紛争の結果、そこにあるのだ。多くの起業家は通常株と希釈が済んだ株との間で議決権がどのように変化するか知らない。ともかく私は知らなかった。多くのベンチャーキャピタリストは、議決権行使に必要な最小株式数についてタームシートに書かない―もちろんわざとだ。

2倍の残余財産優先分配権と、会社評価額2倍の残余財産優先分配権(2x liquidation preference and a liquidation preference with a 2x cap) の違いをはっきりと知らないCEOがほとんどなので私は驚いている。 参加型優先株式でどんなひどい目に遭うかを知っている経営者も少ない。それに会社評価計算表資本政策表(capaitalization table)中のflat spotsについても理解していない。

ちなみに、ベンチャーキャピタリストが出資会社の評価額をどのように計算するのか、上に触れた術語の説明を含めて同僚のKelly Hwangと私が簡単に解説する簡単なビデオを作ったので参考にしていただきたい。 :

実際、私がタームシートについて勉強して驚いた点には以下のようなものが含まれる。

1) タームシートには通常、ベンチャーキャピタリストの差し止め権について書かれていない。この権利によってベンチャーキャピタリストは経営者に対して特定の行為をしないよう命じることができる。残余財産分配請求権では参加型か否かについて説明されない。これらはすべて小さな字の契約文書の中に法律の専門用語で書きこまれている。差し止め権も残余財産分配請求権も適正に行使されるなら問題はない。しかし極悪非道な利用を企む輩が存在し、経営者は後になって悔やむことになる。

2) 弁護士は普通、こうした細々した条項が起業家に対してどんな場合にどのような不利をもたらす可能性があるかを説明してくれない。またベンチャーキャピタリスト特有の専門用語も解説してくれない。もちろん弁護士は役に立つ。しかしこちらから適切な質問をしなければ、答えは返ってこない。

3) ベンチャーキャピタリストは最小議決権行使株式数とか株式優先順位とか差し止め権とか保護条項とかについて知らぬ顔を決め込む。たいていの起業家は保有株式の割合くらいしか頭にない。

そういったすべてに全く無知だったわけだから、私の最初の起業はあまりうまくいかなかったのも不思議はない。ともかく当時教科書はなかった。ベンチャーキャピタリストが一方的に情報を独占していた。Brad FeldとJason Mendelsonの新著、Venture Dealsはこうした状態を一変させるものだ。

私は2005年にはだいぶものを知るようになっていたが、それでも2番目の会社を起業した頃、Brad Feldのブログ、Feld.comを毎日読んでいた。 ちょうどその頃、BradJasonは有名になったタームシート入門シリーズを連載していた。私が他に目にしたことがない有益な情報が満載されていた。私はこの連載のすべての記事を何度も繰り返し読んだものだ。

このシリーズを読んで私はベンチャーキャピタリストとしてブログを書き始める気になった。同時に私はタームシートについて解説して時間を無駄にすることはすまいと決めた。BradとJasonがすでに私にはとうてい書けないような完璧な教科書をすでに描き上げていたからだ(Jasonはベンチャーキャピタル専門のトップ法律事務所、Cooley
Godward所属の優秀な弁護士だった)。

そして起業家への有益なアドバイスをまとめたVentureHacksシリーズが刊行された。これも必読だ。

ここでBradとJasonはさらに一歩を進めた。2人はVenture Dealsという新著を発表した。スタートアップの資金調達に関連する人間は誰であれ必ず読んでおくべきだ。CEO、CFO、ファウンダーに限らず、スタートアップ業界で働く者なら弁護士であろうとベンチャーキャピタリストであろうと金融関係者であろうと必読だ。 この本は、カギなる術語の解説から交渉のノウハウ、それぞれの関係者の秘めた動機まで、私が読んだどの本よりも詳しく、的確に解説してくれる。

まさに貴重な情報の宝庫だ。関係者全員が正しく情報を共有してこそスタートアップ業界の発展があると思っている。こうした貴重な情報を長年にわたって惜しげもなく提供し続けてきたからこそ、Bradは「起業家に尊敬されるベンチャーキャピタリスト」の投票で常にナンバーワンの座を占めているのだろう。共著者のJason Mendelsonは業界の顔ともいうべきBrad Feldほど著名ではないが、この本に示された深い知識はBradに勝るとも劣らないと思う。

ベンチャーキャピタリストの情報独占という弊害を打ち破ろうではないか。すべてのスタートアップ関係者が必要な知識がこの本の中にある。

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(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+