ソフトウェアはすべての産業と仕事を大食いしている

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私の彼は仮想的 ― 女性のための仮想恋愛ツール登場

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数か月前、故郷のテネシー州メンフィスで講演をしたとき、こんな質問をされた: 子どもたちに起業家精神を育むために、市は何をすべきか? 私は間髪を置かずこう答えた: すべての公立学校で、プログラミングと、アプリケーション構築の基礎を教えなさい、合わせて、国語(英語)と数学もね。すると驚いたことに私の弟…シリコンバレーに長年いたが今は中西部にいる技術者…が、異議を唱えた。”プログラミングの仕事がたくさんあればいいけど、今は全部海外へ流れてるからね”、と彼は言った。

そのとき、数年前のアメリカ経済の大パニックのことが、私の頭をよぎった。そういえば当時は、ビジネススクールの公報誌や雑誌の表紙がどれもこれも、合衆国は工場の仕事が海外に流出しているだけでなく、ホワイトカラーの技術系の仕事も、シリコンバレーを去って東欧やインド、あるいはそのほかの新興国に流れている、と警報していた。それらの記事は、1990年代後半の好況期にコンピュータ科学の専攻を勧められた子どもたちに、卒業期の今となって仕事がない、と嘆いていた。デトロイトの工場労働者と同じように、彼らもまた、インドや中国で毎年何千人も誕生するエンジニアたちにはかなわないのだ。

驚くのは、このような誤解が、当時は広く一般化していたことだ。それから数年後の今は、合衆国でも雇用が活発な職種がわずかにあり、その一つがプログラマだ。カリフォルニア州でも、最近の失業率は12%と驚異的だが、シリコンバレーのプログラマにとっては、人生はバラ色だ。

Y-Combinatorに投資を求めてもよい。あるいは何百もいるエンジェル投資家やVCたちから、資金を調達してもよい。あるいは自分のクレジットカード一枚から、自己資金だけでシンプルなWebアプリやモバイルアプリを開発してもよい。あるいは、Google、Facebook、Zynga、Grouponなどをはじめ、何千社ものスタートアップが、慢性的にプログラマ不足で悩んでいる。すべての起業家が口を揃えて言う: 今いちばん難しいのは人集めだ、と。

本誌のJason Kincaidが担当しているビデオシリーズTC Cribsでは、スタートアップの奇抜なオフィスが毎回紹介される。DropBoxも、Airbnbも、あるいはそのほかのスタートアップも、オフィスの奇抜なデザインに最近はますます凝るようになっている。そしてなぜみんな、Cribsに出演したがるのだろう? それは、うちで働くと楽しいよ!、とアピールしたいからだ。

最近私はDustin Moskovitzに、本誌のイベントSan Francisco Disruptの審査員を依頼した。彼はFacebookやAsanaの協同ファウンダで、世界でもっとも若いビリオネア(billionaire, 億万長者)だ。そのとき彼は、こんなジョークを言った: 優秀な起業家たちに言ってやりたいね、今は人が集まらないからヤバイよ、どっかの社員になったほうが得だよ、って。いや、少なくともそのときの彼は、ジョークのつもりだったのだろう。そんな彼も、うちの会社に来てくれる人には1万ドルのお小遣いをあげる、と言っている。

私も以前経済誌の仕事をしていたことがあるから、当時のネガティブでセンセーショナルな、ソフトウェア海外流出の記事にだまされて、プログラミングの勉強を選択しなかった人には、ごめんなさいと言いたい。でもこれからは、人生の路線を決めるのに、メディアに頼るべきじゃないわね。そんなのまるで、CNBCの放送を聞いて投資先を決めるのと同じよ。マスコミはまんまとあなたを、近年の宝の山から閉め出してしまったようね。

ソフトウェア開発の仕事がすべて海外へ流出するという説は、グローバライゼーションという騒乱をめぐる初期のマスコミの、二番目に大きな嘘だ。一番の嘘は、アメリカはつねに、世界の労働力の”ブレーン”(脳の役)を担当する、新興市場の人びとは下働きをし、われわれは革新的で報酬額の大きい仕事をする、という説だ。私はこの、無智と人種差別が入り交じったような説を否定するために、まるまる一冊の本を書いたので、ここではそれについて論じない。

一見して奇妙なのは、数年前まで熱心に信じられていたこの二つの説が、お互いに矛盾していて、だからどっちも成り立たないと思えることだ。海外諸国の人たちがこれからはますます、とっても優秀になり、ホワイトカラーの高度なエンジニアリングの仕事がどんどん流出して行くというのなら、海外の人びとは永遠に下働きを担当し、より高度な仕事は合衆国にずっととどまる、という説は成り立たないだろう。

しかし実は、この矛盾と見える二つの説には、本質的な欠陥がある。 Marc Andreessenが最近のWall Street Journalの特集記事で、見事にそのことを説明している: ソフトウェアが世界を食べている、と。(皮肉なことに、Andreessenがプログラマになったのは、US News & World Report〔2010年廃刊〕に、将来性のある職種として紹介されていたからだ。彼にとって幸運にも、それは10年以上も前のことだが。)

2000年代の初めに多くの企業がソフトウェアを海外にアウトソーシングしていたころには、ソフトウェアという仕事はゼロサムゲーム(一定サイズのパイの奪い合い)だと思われていた。しかし今ではそれは、ますます多くの産業で仮想化が進むに伴い、指数関数的に拡大している。

しかもそれは、Pandora、Zynga、Amazonなどが、音楽やゲームや本を、棚の上の包装商品からソフトウェアのみの製品にしようとしている、という現象だけにはとどまらない。またそれは、ソーシャルメディアの市場のグローバルな爆発だけを指すものでもない。インターネットの登場以来、われわれが目にしているのは、それまで多くの人びとが関心を持たなかったような、いろんな細々とした業種まで、デジタル化が進んでいることだ。Airbnb、Uber、Groupon、GetTaxiなどなどの名前がすぐに思い浮かぶが、そういう、細々とした雑多な業種はまだまだ無数にある。Andreessenと彼のパートナーたちは、次は保健医療と教育だ、と言っている。Accelもやはり、教育を重視している。

ソフトウェアの仕事は、その対象となる業種業態が今すさまじく拡大しているだけでなく、個々の業種の中でも勢力を拡大している。20億の人びとがオンラインで、10年後には50億がスマートフォンを持つ、そのことの意味はとてつもなく大きい。今すでに、家にトイレのある人よりも、ふつうの携帯を持ってる人のほうが多いし、しかもそれらの携帯電話から、銀行サービス、教育、ニュースと情報など、ものすごく多様なデジタルサービスが提供されている。

今のデジタル企業は、われわれがソフトウェアジョブの海外流出を嘆いていたころに比べて、対象人口が桁違いに多い。だから、ソーシャルメディアをはじめ、ひとつのカテゴリーを支配する企業が巨大企業になる。そして、ドットコムのころと違って、それらの企業の多くが巨利をあげている。

ソフトウェアジョブの拡大で潤っているのは、シリコンバレーだけではない。中国の起業家たちに、ビデオゲームのデベロッパを確保するのがいかに難しいか、尋ねてみよう。あるいは、ここ数か月、中国人のブロガーを雇うことがどれだけ難しくなっているか、聞いてみよう。今は、合衆国で企業がロンチしたら、その数年後にほかの国にも類似製品が登場する、という時代ではない。合衆国でWeb企業がロンチしたら、数日後にはベルリン、ロシア、インド、中国などなどの国でその別バージョンがロンチする時代だ。作り出される仕事の量は、シリコンバレーに比べて小さいが、でもそれらの国の10年前に比べれば、ずっと大きい。さらに重要なのは、それらの仕事が地元企業の仕事であり、合衆国の巨大多国籍企業の低レベルな下請けではないことだ。長期的にはこれこそが、貧困の悪循環を断つために大きな意義を持つだろう。多国籍企業の下請けに、その国の明るい未来はない。

こういった新しいソフトウェアジョブの、安定性はどうだろう? バレーでもそのほかの国でも、安定性は良いとは言えない。ジョブの多くはスタートアップが作り出しているものであり、スタートアップの未来はIPOするか買収されるか、それとも消え去るかだ。スタートアップは本質的にリスキーであり、だれもが、そのことは覚悟しているべきだ。上に挙げたゲームやブログは、数年後に大きなレイオフが起きる可能性もある。そしてリスクは、スタートアップのエコシステムを作り始めたばかりの新興市場のほうが、バレーよりもずっと大きい。

そのうち評論家などが、”ジョブバブル”という言葉を言い出すかもしれない。経済的なバブルや心理的なバブルは今たしかにないけれども、ジョブバブルはありえる。会社を始めるのはあまりにも易しいし、シリコンバレーでは、公開企業になるほどの勝者と、その他大勢との落差が、ひところよりも大きくなっている。(だからこそ経済的バブルは起きないのだが。)

しかしそれでも、あなたがもしもそのジョブバブルの渦中にあったとしても、合衆国で今仕事がなくて困っている何千万の人びとと、立場を交換するだろうか? それはないだろう。ジョブバブルから恩恵を得ていることは、単に第一世界の問題であるのではなく、たまたま運良く、運の良い業界にいることのできた、高学歴の上層クラスを襲っている第一世界の問題だ。これが、合衆国が今直面している最大のマクロ経済の問題だ、などと言ったら、デトロイトの労働者に殴られるだろう。

心配なら、今後の雨の日に備えて貯金をしよう。そして、ソフトウェアの仕事をしていることを、神様に感謝しよう。このような市場では、食べられるよりは、食べるほうがずっと良いのである。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

“ソフトウェアはすべての産業と仕事を大食いしている” への5件のフィードバック

  1. 哲也 村上 より:

    1流のプログラマは足りてませんが、2流のプログラマは足りてます。
    ここテストにでるから復習するように。

  2. 祐二 横森 より:

    良い記事でした!

  3. 祐二 横森 より:

    良い記事でした!

  4. 祐二 横森 より:

    良い記事でした!

  5. […] NiciraのCEO Stephen Mullaneyの説明では、今のネットワークはクラウドサービスが多用されるデータセンター向けに進化していないし、既存のソリューションは柔軟性を欠き複雑だ。“必要なソリューションは、物理ネットワークの物理的なありように左右されない、それらと完全に切り離された仮想ネットワークを作ることだ。そういうソリューションにより、ネットワークは、そのほかのビジネスと同様、ハードウェアからソフトウェアへ遷移する。ソフトウェアが全世界を食い尽くすのだ”、と彼は言う。 […]

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