テレビの将来はクラウド化にある

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「技術」の時代は終わり「経営」の時代に変わる–AppleとGoogleの変貌の意味

TV cloud

テレビもクラウド化する。これは必然的だ。本、雑誌、音楽など他のメディアも次々にインターネット配信が主流となりつつある。そして伝統的テレビ番組やハリウッド映画についてもNetflixとHuluに加えて最近ではApple TVなどを通じネット配信接続機器への配信がメインの視聴形態の一つになりつつまる。またネット全体でみれば依然YouTubeが全インターネット利用時間の7%という大きなシェアを占めている。

しかしテレビ(と映画)は他のあらゆるメディアに増してインターネット化への抵抗力があることを実証してきた。変化は必ず起きる。しかしその速度は音楽やニュース、書籍の場合よりずっとゆっくりしたものになっている。

テレビ業界は防備を固めている。Starz〔ケーブルTV向け有料チャンネル〕はNetflixとの提携を破棄した。コンテンツ所有者は、Huluを売りに出す一方で慎重にネット対応を進めている。常勝Appleでさえ、テレビ視聴モデルの改革では苦戦している。Apple TVは最近導入を図っていたテレレビ番組のレンタルの試みを中止した。主要テレビ局が全く乗り気でなかったのを見て、われわれは1ヶ月前にそうなるだろうと予言していた

しかし、有料のケーブルテレビや衛星テレビがわれわれに強要してくる今のような固定的番組放送モデルを最終的にはインターネットが覆すことを疑うものはいないだろう。われわれが頻繁に見るのはせいぜい数十チャンネル程度あるのに、500チャンネル分の視聴料を払わされる。チャンネルごと、あるいは番組ごとにに視聴契約できるならそうしたと思うユーザーは少なくないはずだ。しかしそれだけは十分ではない。テレビのクラウド化は配信モデルの変更だけで終わるのではない。望みの番組を簡単に検索して共用できるようにならなければいけない。つまり(何度も言っているとおり)テレビはもっと賢くなる必要がある。このことについては、Horace Dediuが最近 記事を書いている。〔略〕

TiVoレコーダーはタイムシフト視聴を可能にしてTVのスマート化を図ったが、ケーブルテレビ、衛星テレビは自分たちのセットトップボックスに同様のスマート録画機能を組み込むことでTiVoのうわ手をいった。TiVoはケーブルテレビ等から特許のライセンス料を得ているものの、消費者向けブランドとしてのTiVoは衰退に向かっている。ZDNetのEd Bottがまとめた“NetflixとTiVo、Media Centerの検索数を比較したグラフを見ればこのことは一目瞭然だ。

Bottはこう結論している。

これ以上明瞭なトレンドはない。2008年にストリーミング・メディアの時代が始まった。今やDVRは絶滅危惧種だ。

しかしテレビにコンピュータをつなげばすべて解決ではない。ビデオがタイトルなどのメタデータではなく、動画の内容そのものが検索可能になれば視聴体験は劇的に変わってくる。YouTubeには番組チャンネルはあるが、それでも望みのビデオにたどりつくまでにガイドを延々と見ていく必要がある。他のウェブコンテンツ同様、動画も内容で直接検索し共有すること可能になるはずだ。伝統的テレビがセットトップボックスの中に閉じ込められているのは、コンテンツ所有者にとってそれが最も容易な収益化の方法だからだ。月々のケーブルテレビの加入料はもとより、テレビCMも依然ととしてオンライン広告を圧して巨大だ。

Googleはテレビとインターネットという2つの世界を、YouTubeばかりでなく、Google TVを通じて融合させようと図っている。しかしテレビのコンテンツをコントロールしている既存勢力はそうなることを望まない。AppleもAppleTVで似たようなことを試みているが前途遼遠だ。Appleは独自のテレビ受像機を含めた新しいシステムを投入してこの努力を倍加させようとしているという噂が流れている。

一般ユーザー向けテレビ受像機はマージンが極端に低いビジネスなのでAppleが参入するはずはないという意見も聞かれる。しかしそれは大局を無視した考えだ。Appleは単にテレビを売りたいわけではない。Appleは全く新しいテレビ視聴体験を作り出し、その全体をコントロールしたいのだ。その過程でAppleテレビが必要だと分かれば、作るだろう。テレビ受像機はテレビ視聴体験のごく一部を担うにすぎない。すべての価値はコンテンツが保存され、索引化され、検索され、配信され、共有されるクラウド―インターネット上にある。

現在のApple TVにはこれというほどの機能はなく、単なるメディアをストーリミングする箱に過ぎない。しかしひとたびiCloudが稼働し始めれば、まちがいなくそこに映画とテレビ番組が含まれるだろう。現在のApple TVは個別の番組ごとに料金を課するアラカルト・モデルだ。しかしAppleがもっとも人気の高い映画とテレビ番組を配信できるようになれば、個別料金を合計しても現在の平均的ケーブルテレビの月額料金より割安になるかもしれない。また現在Netflixが行っているように、ユーザーのこれまでの視聴履歴をベースに映画や番組を推薦することもできるだろう。これはスマート・テレビへの第一歩になる。

次の一歩は、ユーザーの友だちが何を観て、何を推薦するかをベースにしたソーシャルTVガイドの構築だ。TV視聴を助けるiPhoneとiPadアプリ(BuddyTVDijitYap.TV)が次第に人気を得ているのもそうした方向への動きといえる。Appleがこうした機能を独自のテレビ視聴体験の核として取り入れてはならない理由はまったくない。

やがてテレビにとってオンライン化はなくてはならない要素になるだろう。オンラインで共有できず、リンクを張れない番組は視聴者の注目を集めにくくなるだろう。ニュース、スポーツ中継、授賞式の中継のような場合を除いて固定した時間に放送さ
る番組はなくなるだろう。インターネットが現在のDVRの代わりを務めるようになり、視聴者は現在の最低な電子番組ガイドから解放されるだろう。そもそも伝統的な番組表スタイルではユーザーが関心を持つコンテンツを網羅するすることなどできるはずがない。しかも番組表はユーザー毎に異なるのだ。ひとたびテレビのクラウドが達成されれば、テレビ視聴体験はまったく新しいものに生まれ代わると思う。

写真:Flickr/zizzybaloobah

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(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+