
編集部注:Leonid Kravetsは弁理士で、起業したばかりのテクノロジー関係企業の知財戦略立案を専門としている。彼はstartupsip.com上でこの分野に関するブログを開設している。Robert J. MooreはRJMetricsのCEO兼共同創業者であり、データをより理解しやすく、また行動を起こしやすいようにすることでオンライン企業が賢明な経営判断をする手助けを行っている。詳しくはRJMetrics.comを参照してほしい。この調査に関する新たな知見について知りたい場合は、会員登録をすれば更新情報を得られる。
特許の価値をめぐる議論はここ数年でヒートアップしてきた。特にソフトウェア特許は、スタートアップ業界のリーダー達の注目を集めてきたが、フェイスブックのような後期企業でもパテントポートフォリオを得るために多額の支出を行ってきた。
スタートアップ企業は特許に対して一体どの程度の注意を払ってきたのだろうか?推測に頼るのではなく、データに直接当たってみることにした。1万2000社以上の資金提供を受けたテクノロジー企業の特許アクティビティデータベースを構築するために、CrunchBaseとUSPTO(United States Patent and Trademark Office)から情報を収集した。そのデータを、オンライン企業が理解しやすく、かつ行動を起こしやすくするツールであるRJMetricsで処理した。得られた知見は以下の通りである。
われわれはテクノロジー企業1万2404社の事業者と投資者を認識するためにCrunchBase APIを使用した。それから、これらの企業の名前とUSPTOが発行しているヒストリカルな特許出願データベースの記録をマッチングした。データが得られた後にRJMetricsにアップロードし、たった数回のクリックでここに示した知見を得ることができた。
できるだけ最新のデータを提供するために、調査対象を公表された特許出願のみに限定した(発効した特許ではない。通常、特許出願から公表まで数年かかる)。USPTOは通常、出願から18か月後に暫定的でない特許を公表する。そのため、最近の企業の事例は少ないかもしれない。USPTOが公表するまでの時間が十分経過していない特許出願事例があるからである。
調査によれば、資金提供を受けた全企業の33%(1万2404社のうち4050社)は、少なくとも1回は特許出願を行ったが、特許出願率は産業によって大きく異なっている。
半導体およびバイオ技術業界の企業の特許出願率が最も高く(それぞれ65%と62%)、これらの「ハードテック」な業界では初期段階において相当の投資規模を要求されるほか、知的財産を守るために特許がよく使われている。対照的に、eコマ―ス、ウェブ、ビデオゲームといった「ソフトテック」業界の特許出願率は20%以下である。
産業毎の、特許出願を行った企業のうち資金提供を受けた企業の割合は下に示されている。少なくとも200の資金提供を受けた会社のみが含まれている。

会社の属する業界はCrunchBaseから取得した。
トップレベルの投資家が特許に対して様々な考え方を持っていることも調査の結果判明した。まず、資金提供を受けた全企業の18.9%が最初の資金提供を受ける前に特許出願を行っていたことは注目に値する。資金提供を受けた全企業の33%が企業の存続する全期間を通して特許出願を行っていることと比較してほしい。
少なくとも20のポートフォリオ企業を有する投資家について言えば、特許出願の平均値と中央値はともに43%である。換言すれば、典型的なベンチャーピャピタルが投資を行っている企業の43%はどこかの時点で申請を行うことになる。ただし、この数字はファンドによって大きく異なる。
特許を特に重視している大企業の投資力にはある明確なトレンドがある。例えば、Samsung Venturesの投資を受けた企業の88%、Johnson & Johnson Development Corporationの投資を受けた企業の86%、Motorola Venturesの投資を受けた企業の81%は、少なくとも1回の特許出願を行った。
同様に、ヘルスケア関係の投資家は特許を特に重視しているようだ。最高レベルの特許出願率を示したのはDe Novo Ventures(96% とDelphi Ventures(91%)である。
Khosla Ventures(66%)やDAG Ventures(59%)、Menlo Ventures(57%) 、Kleiner Perkins(56%)などメジャーなシリコンバレーの投資家の中には、平均を相当上回る特許出願率を記録したところもある。
一方、Accel Partners(34%)やSequoia Capital(39%)など資金が潤沢な投資家の中には中庸を好むところもあり、平均的な投資家と比べて大きな違いはみられない。
シードステージにある投資家は、ポートフォリオにおける特許出願が最も少なく、500 Startups(6.5%)やSV Angel(17.7%)、ドイツのVC企業High-Tech Gruenderfonds(15.7%)はランキングの最下位近くに位置している。
ソフトウェア特許に対して否定的な発言を積極的にする投資家もいる。例えば、Union Square VenturesのFred WilsonやFoundry GroupのBrad Feldは、ソフトウェア特許は廃止されるべきと考えている。実際、両ファンドの投資哲学はこの見方を反映している。Union Square Ventures(18%)とFoundry Group(26.2%)はともに、43%という平均特許出願率を大きく下回っている。
最近数年間でスタートアップ企業による特許出願が増加したのか減少したのかを確認したいとわれわれは考えた。同一条件での経年比較を企業レベルで行うために、ある手段に着目した。RJMetricsでのコホート分析である。
会社設立年次(CrunchBaseで示されているもの)に応じていくつかのコホートに企業を分類した。そのコホートで時間の経過とともに各社の平均特許出願数を調査した。結果は極めて意味のあるものであった。
各行は、その年に設立された企業の「コホート」である(つまり、明るい青色の線は2005年に設立された全企業を表している)。特定のデータは、そのコホートにある平均的な企業がそのライフサイクルの中でのその時点までに行った特許出願数である。
このチャートが明確に示しているのは、年に応じたコホートラインの完全な経年累積である。線が低いのは、平均的な企業が特許を出願する傾向が少ないことを示している。各年の線は先行する年を下回っているので、企業が操業年数を重ねるにつれて特許出願する傾向が低くなっていくようだ。
興味深い別の点は、経年につれてのこれらの線の傾きの変化である。2005年と2006年のコホートにおいて、線の傾きは後にいくほど上昇している。これは、企業が年を経て規模が大きくなるにつれて特許出願が多くなるという仮定すれば辻褄が合う。しかしながら、2007年の線は2年から4年の間で一定に近い傾きである。2008年のコホートでは線の傾きは低下している。つまり、2008年に設立された企業は経年につれて特許を出願しなくなる傾向がある。2009年と2010年のコホートについても同様のトレンドが続いている。
さて、平均的な企業は特許にこだわらなくなっているようだ。1回も特許を出願していない企業を除いたらどうだろうか?特許を求める企業は1つのグループとして行動しているのだろうか?少なくとも1回の特許出願を行った企業に限定してもう一度コホート分析を行った。結果は以下のとおりである。
線はほとんど反転していた!近年、少なくとも1回の特許出願を行った企業は、経年につれてより多くの特許を出願するようになっているようだ。
明らかになったことは、平均的な企業の特許出願は少なくなっているようにみえるけれども、出願を行った企業についてみると短期間で出願は多くなっている。これは、下にある「複数出願の確率」チャートでも確認できる。
これを見てわかるように、ある企業が追加的な特許出願を行う機会は、出願回数とともに増加している。5回の出願を行った企業の場合、その85%が6回目の出願を行っている。
過去数年の間、資金提供を受けたスタートアップ企業の間では、平均的にみて特許の人気は継続的に低下してきた。
各企業が特許出願を選択する理由は複雑であるが、重要な特性の影響は強いものがある。例えば、企業が属する産業や投資家の要素は特許出願に対する選好にとって重要であるといえる。
全体的にみて特許出願は減少しているとはいえ、特許の追求を選択した企業は以前にも増して積極的な出願を行っている。これはマーケットにおける二極化の進展を示唆しており、一部のオピニオンリーダー達は特定の特許に声高に反対している一方で、特許ポートフォリオが高い金額で売買されているのである。
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