「投資見送り」の解剖学:VCが投資を見送る理由の定量的分析

次の記事

Fits.me、2000通りの体型に変化するロボットを使ったバーチャル試着室を展開中

編集部注Jay JamisonBlueRun Venturesのパートナーである。

初期段階にある技術をもとに起業するなら、あるいはベンチャーキャピタルなら、今はワクワクする時期だ。Facebookの最近のIPOでのドタバタ劇(わたしの見方はここに書いた)にもかかわらず、Facebook、LinkedInGrouponZyngaJiveなどの企業が株式公開を行ったように、IPO市場にはちょっとした回帰傾向が見られる。会社を創業する側としては、創業者の勢いは急激に増大しているように見える。毎週、新たなインキュベータやスタートアップアクセラレータが生まれているのを耳にする。

一流のインキュベータであるY Combinator500StartupsTechStarsへの申し込みが急増している。確かにこのところ盛り上がっている。

そしてこの業界では、時代がワクワクするような瞬間であるならばいつでも、ストーリー展開とハイプサイクルによっては、起業は簡単だというセイレーンの歌のごとき誘惑の言葉がすぐに投げかけられる。絶頂にある技術のブログを読んだだけであれば、融資はどこからともなく現れ、査定は狂った水準までつり上がる、と思うかもしれない。そして確かに、ほんのわずかの例外的に活気ある企業に関しては、資金調達がすぐに始まる。けれど、それは普通のことではない。誘惑の言葉が問題なのは、単純な理由による。資金を集めることを、何もないところから会社を作ることはそれよりもさらに、簡単なことのように思わせてしまうことだ。

これは実にバカバカしいことだ。マーケットがどんなに堅調であっても、初期段階にある会社の大半にとっては、資金集めは、非常にとは言わないまでも大変であるのは紛れもない事実である。そして、資金調達の役割がどれほど大変であっても、持続的で影響力のある会社を実際に作るという仕事と比べたら、さして重要ではない。

私の主張を裏付けるために、そして理念的により重要な目的としては設立間近の組織に資金調達の計画を提供するために、2011年3月初頭以降自分のところにきたピッチすべてを分析し、詳細な研究を完成させた。この分析では、個々の会社になぜ投資を見送ることにしたのか、あるいは投資することにしたのかということに対して、私の論理的根拠を定量化することを試みた。

私はこの分析を、「投資見送りの解剖学:VCが投資を見送る理由の定量的分析」と呼んでいる。どうしてこの題名にしたのか。第一に、投資を見送られるのは、設立間近の組織が投資家にピッチをする場合、最も多い結果だからだ。願わくは、こういう結果に至る理由に関する定量的分析についていくらかでも理解することが創業者の助けになれば、と思っている。第二に、私はこの研究の題名を、Brendan Bakerの最も卓越しかつ有益な著作the Anatomy of Seed: An inside look at a $1M seed round(シードの解剖学:100万ドルシードラウンドを内側から見る)に特に関連付けている。彼の研究と思考は本当に素晴らしい。

ここで断り書きを。この文章が非常に否定的な印象を与えたとしたら、お詫び申し上げる。私はベンチャー投資家であり、それは、グラスはいつでも半分以上満たされている、ということを意味している。私は信じられないくらい幸運なことに、この素晴らしい業界の一員だ。私は、この業界に身を置いていない人を批判しないために、この分析をまとめている。つまり、純粋にデータと分析を共有しようとしているのだ。

分析の方法

以下の分析では、2011年3月1日から2012年5月31日の間に、直接あるいは電話でのピッチで会った会社を対象とした。そこには、後にピッチで会っていないのであれば、約束のない電話や勝手に送りつけられた事業計画、アドバイスを求めている創業者にちょっと会うこと、あるいはビールを片手に創業者と情報交換すること、は除外した。また、インキュベータや起業コンテストのDemo Daysでピッチをしている会社もすべて、これには含めなかった。しかし、私がフォローアップミーティングを持ったピッチに関する会社は含めている。これにより、私は、優に200を超える事例を対象とすることとなった。

私は各会社について、下記の5つの主要な側面を5段階(5が最高で1が最低)で評価した。

  1. Traction(牽引力)
  2. Market(市場)
  3. Team(チーム)
  4. Product(製品)
  5. Term Sheet(出資の条件概要書)

私が評価尺度をどうやって作成し定義したかについては、すでにこちらに投稿してある(このリンクでは、匿名の元データの多くに対するアドバイスも投稿する予定である)。

そして、私はこのデータについて定量分析を行い、Term Sheetを受け取る確率について、Market、Team、TractionそしてProductの比重と相互作用を理解しようとした。また照合のために、なぜ自分が各判断を下したかについて、定性的なレベルで10語以内に要約することとした。

わかったこと

ここに、データの一次分析から発見したことを示す。

  • 私にピッチをした会社の2%は、投資に関する条件概要書の合意に至っている。ここで留意すべきことは、条件概要書では、われわれからの出資契約の締結という結果に常に至るわけではない、ということだ。残念ながら私が常に勝利するわけではない
  • 会社の50%がモバイル中心型、モバイル先行型のもので、これはBlueRunにおいて我々投資家が最も注目する領域とマッチしている
  • 私にピッチをした会社で、投資に関する条件概要書の合意に至った100%が、モバイル中心型のピッチ、あるいはモバイル先行型のピッチであった

分析

上の表で言っていることは、式ではこのように表現できる。

Term Sheetを受け取る確率
=-0.355+0.349(Team)+0.334(Market)+0.222(Traction)+0.029(Product)

これが意味しているのは、要するに、会社が条件概要書を、少なくとも私から取り付けられるかどうかという可能性について予測しようとするなら、この関数を使えばよい、ということだ。

統計的な話は抜きにして、これは何を意味しているのか。断定はできないが、いくつかのことを示唆しているように思う。

  • TeamとMarketは、条件概要書を得るには間違いなく最も重要な2要因である。投資家はしばしば、「われわれはチームに投資する」と言う。確かに、チームは重要である。しかし、大きく、意欲的に、マーケットに火を吐くように攻勢をかけるチームこそ、より重要なのではないか、と私は考えている。この統計回帰では、TeamとMarketの係数は他に比べて非常に重く重みづけされているので、この傾向が助長される、と私は考えている。条件概要書を実際に受け取れるようにするには、TeamとMarketを最適化する必要がある。別のことからもこのことが裏付けられる。私が投資を見送った会社のピッチを集約すると、私が記した感想で最も共通しているのは「市場機会に疑問あり」だ。再びMarketについて話そう
  • Tractionは言葉よりも雄弁と言える。TeamとMarketの次に条件概要書に至るにはTractionが次に最も重要なものとなる。実際、この方程式では少なくともProductの7倍の価値がある。私はこの結果について、Tractionは実現への立役者である、と考えている。素晴らしいTractionには、素晴らしいProductの証拠がある。素晴らしいTractionはまた、Teamの正当化を手助けしている。そして、Tractionが弱い場合、どんなワクワクするデモや製品計画があったとしても、それらは弱体化する
  • 製品を市場に投入する前の会社への投資は、素晴らしいMarketに注目している素晴らしいTeamによって実現するのだ。このことは、データからはっきり分かるものではない。しかし、TermSheetで最高評価を得た会社を見てみると、全社がProductあるいはTractionで高評価であるとは限らなかった。中には、試作品、あるいは試作品のアイデアしか持っていないものもあったが、シード投資としては適格に見えた。しかし、いずれの会社もTeamとMarketでは非常に高評価だった
  • 投資家との相性は非常に重要である。われわれの会社BlueRun Venturesは、何年にもわたってモバイルに非常に注目し、モバイル中心の投資家として、真に最高であることを目指してきた。われわれの注目してきたことには、話すべきことがたくさんある。われわれの行動は、言葉を裏付けるものだ。つまり、わたしが投資することに同意した会社はみな、モバイル中心のサービスに注目しているということだ。相性は重要である

最後にまとめると、ベンチャー金融がどれほど注目の的となっても、資金調達は、そして常に、ほとんどの創業間近の会社にとって、実に大変なことなのだ。私が分析した200を超える会社のうち、2%にも満たない会社しか、われわれから条件概要書を得られなかった。そして、忘れてならないことだが、その200社は、ピッチの日程をとりつけようとしている多くの会社の、ほんの一部にすぎないということだ。私の友人で、素晴らしい起業家であるDanny Shaderの持つ金言を、今ここで引用したいと思う。

「NFLへようこそ。」これは大変なことだ。そしてもちろん、資金集めが大変だと思えるなら、会社を作ってみてはどうだろうか。

資金調達を困難にしているものを明らかにする手助けしたいという試みとして、私はこの分析を提供している。データの透明性と、みんなで共有することが有益なものとなり、またわれわれの周りによくいるデータオタクにとっては楽しみとなることを、私は願ってやまない。いい投資の機会が見つかるように。みなさんがこの結果を有益だと思ってくれるならば、これからも追跡と更新を続けるつもりだ。

[原文へ]