ユーザーに作業をさせることが中毒になるプロダクトを作るきっかけに

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shutterstock_32145055編集部注 : Nir Eyalは2社のスタートアップの創業者であり、またベイエリアの複数の企業やインキュベータのアドバイザーである。彼はスタンフォード大学ビジネススクールのマーケティングの講師も務め、NirAndFar.comで心理学とテクノロジー、ビジネスに関するビジネスに関するブログを書いている。Twitterでのフォローは@nireyal

製品はいつも可能なかぎり使いやすくあるべきだという考えは、テクノロジーの世界では神聖なものとして扱われている。iPhoneのような美しく新しい製品の登場と時を同じくして、デザイン思考という考え方が台頭してきて、洗練されたインターフェイスを作ることはすぐれたデザインの証であると結論づけられることもあった。しかし、テクノロジーとどう付き合うべきかについて完璧なルールを作ろうとするすべての試みと同様に、デザインは常にユーザーの費やしている労力を軽減すべきだということはいつも正しいというわけではない。実際、ユーザーになんらかの作業をさせるという行為は、ユーザーが好きになる製品を生み出すのに重要な役割を担っている。

複数の研究が明らかにしてきたように、ある課題に労力を費やすと、われわれはその課題に全力を傾けるようだ。例えば、宝くじを買う場合、自分で数字を選んで買うこともできれば、ランダムに選ばれた数字のものを買うこともできる。確かに、どちらを選択をしたとしても、当たる確率には何の影響も及ぼさない。伝統的な考え方からすれば、より労力の少ない方をユーザーは好むと予測できるだろう。

しかし、真実は逆である。宝くじの番号を選ぶのは相当な労力が必要であるにもかかわらず、大学進学適正試験(SAT)で複数選択肢の問題に回答するのを思い出したかのように、自分で数字を選ぶプレイヤーの方がより多くお金を賭けるのだ。この現象は幸運に対する感覚が狂っているということではない。Ellen Langlerによる古典的な研究によれば、プレイヤーが勝つ確率についてはっきりと話を聞いている場合ですら、彼らは時間と選ぶ手間がかかる数字に賭けられるのであれば、より勝算の低いものでも選ぶのだ。

立場固定Escalation of commitment:人間はある決断をする際に、予想していた利益よりも決断したことを続けるコストのほうが上回るということがあとからわかったとしても、過去に投資した総額を考えて投資を増やすことで調整してしまうという合理的ではない判断をすること)が、われわれの脳におかしなことをさせるようにする例はたくさんある。そのパワーたるや人を卒倒させて死なせるまでビデオゲームで遊び続けさせるぐらいのものである。あるいは慈善活動にもっと寄付するように人々に仕向けさせることもある。戦争下の捕虜を寝返えさせることさえ行われてきた。コミットさせることは強力なもので、われわれが何かをするときや製品を買うとき、あるいはわれわれ自身が誰なのかを理解するときに重要な役割を果たしている。

製品に対して完全にコミットしてもらおう

習慣的に使いたくなるような製品に見られるパターンを説明するために私が開発したのが、Desire Engineというフレームワークである。このフレームワークの最後のステップとなるのが投資フェーズである。ユーザーは行動のきっかけが与えられて、それに対して十分な見返りがあると、投資フェーズでは、ユーザーはなんらかの作業することが求められて製品に対してコミットするようになる。ここでは、ユーザーは製品をとりまくシステムに対して何か価値あるもの、一般には時間やお金、肉体的労力、社会資本、あるいは個人情報といったものを提供するように促される。

あらゆるフィードバックループにおいて、きっかけ、行動、報酬のサイクルは予知していたかのように一連の行動を調節する。ユーザーが報酬を望む時はいつでも、そう考えてユーザーは目的とする行動を起こす。例えば、何であなたにこの記事を読み始めたのかということを考えてみると、それはあなたがちょっと退屈だったからで、刺激のある読み物を探していたということかもしれない。「退屈」というきっかけがあり、「読む」という行動をしていて、そして最終的に「読み続ける」あるいは「いまからやってくる」という報酬を期待しているということだ。

しかし、このパターンはユーザーを本当に虜にする製品の考え方では少し異なっている。脳にはわれわれに報酬を求めるようにする独特のシステムがあるが、それは状況に適応するようになっている。新しくて興味深く見えたものもすぐに平凡でつまらないものへと変わってしまう。脳が刺激に適応するのと同じペースを保つためには、習慣的に使いたくなる製品は繰り返し使われることで成長するようになっていなければならない。投資フェーズが決定的に重要である理由はここにある。

将来のリターンのためにちょっとだけ作業をしてもらう

標準的なフィードバックループでの行動とは違って、投資というのは報酬を期待させるものであって、すぐさま満足を与えるものではない。投資というのはちょっとした作業であり、ユーザーが将来も製品をより使ってくれるようにするものである。例えばTwitterでは、投資はフォローという形で表すことができる。ストリームを数回フリックしてワクワクするようなツイートを楽しんだ後、ユーザーは新しくて面白い誰かを見つけて、それに投資(フォロー)する。誰かをフォローしてもすぐにリターンがあるわけではないが、そうすることでサービスはより価値あるものとなり、次にもっと使いたくなるのだ。

LinkedInはユーザーに対してサイトに小さな投資をするように求めているが、この力を理解している企業の別の例としてあげられる。同社の初期のシニア・プロダクトマネージャーであったJosh Elmanは私にこう話してくれた。「もしユーザーがちょっとでも情報を入力してくれるようにできれば、彼らが再び戻ってくれる可能性はかなり高い。」Elmanは続ける。「ユーザーの現在の肩書と職業を登録の際に入力してもらえるようにすれば、またサイトに戻ってきてもらうためにその情報を使えるんだ。」職場の情報を提供するというほんの少しの労力だけで、ユーザーに戻ってきてもらうためのシステムを構築する仕掛けができあがるのだ。

戦略としてのコミットメント

習慣性を持たせるテクノロジーとは内的なきっかけであり、製品を使いたいとうずうずさせ、明確な呼びかけによって自発的に行動させることだ。ユーザーは特別な感情や状況がきっかけとなってサービスを使うようになる。このとき投資とはユーザーを呼び戻す糸である。その目的は、ユーザーが自分から戻ってきてくれることにある。こういったことを実現することで、習慣性を持つ製品を提供している企業は、Desire Engineを一巡させるごとに、製品の価値を向上させている。価値は二通りの方法でシステムに追加される。

価値を蓄積してもらう

ユーザーがデータを入力すると毎回、価値が蓄積されていくことになる。激しい欲求を不必要に作るのではなく、ユーザーに少しだけ作業をしてもらうような習慣を作る製品には、Evernote、Salesforce、そしてPandoraがある。習慣とは、意識をまったくしない、あるいはほとんど意識をしない行動である。それゆえ、これらの製品にはこの定義が当てはまるのである。ユーザーは、これらの価値が蓄積されていく製品を日常的な繰り返しの一環として利用するのだ。ユーザーが投資すればするほど、彼らはプロダクトを利用していると感じることが少なくなる。Evernoteの「smile graph*」が明らかにしていることは、長期間利用すればするほど、ヘビーユーザーになるということである。(訳注:smile graphはEvernoteではサービス加入時から1、2年間は徐々にアクティブ率が下がるが、3年目には上昇するというデータのグラフ。グラフの形が笑った時の口に似ている)

価値が蓄積されていく(ストアドバリュー)ようなテクノロジー、たとえばゲームのようなものは、プレイするごとに投資をしてもらうことで、急速にユーザーを増やしていく。高得点を獲得すること、次のレベルに進むこと、あるいは農場の牛やアバターの洋服のようなバーチャル製品を手に入れ、それに気を配ることはすべて、ユーザーがコミットする力の例である。ユーザーが遊ぶのを止めれば、このようなゲームのメカニズムがなくなってしまうため、プレイし続ける必要が増えていく。ゲームの中のこのような要素に関する価値の蓄積は、プレイに費やした時間、あるいはリアルマネーを使って購入することで得られる。

ネットワークによる価値増大

多くの人が利用するにつれて価値が増大する製品には、ネットワーク効果がある。この特徴を掲げる企業は、投資家に嬉しい動悸を味あわせてくれる。というのは、業界標準になり、ライバルを締め出すことができるからだ。eBay、Skype、AirBnB、Pinterest、そしてファックスや電話のような従来のテクノロジーは、ネットワークにユーザーが増えれば増えるほど、好転してゆく。

無敵の組み合わせ

ストアドバリューがネットワーク効果と一緒になると、ユーザーの投資は真の価値を持つ。FacebookとPinterestは、共にストアドバリュー型製品として優れているが、ネットワーク効果の力を手にした時に爆発的に利用された。両者ともユーザーの習慣となるサービスであり、多くのユーザーが自発的に利用しようと戻ってくる。ストアドバリューとネットワーク効果の組み合わせは、定期的にコンテンツを追加するユーザーからの投資と相まって、多くのユーザーを強力に牽引する力を生んできた。

習慣性を持たせるテクノロジーが効果を発揮するのは、きっかけ、行動、報酬、投資のパターンによって、ユーザーの内なる欲望を作り出すのと同時に、サービスの価値をどんどんと提供しているときである。ほんのわずかの努力を通じて何かをするというやり方で、ユーザーが投資をすればするほど、サービスは、生活においてますます価値あるものとなっていき、ユーザーはそれを利用することに疑問を抱かなくなっていく。

もちろん、ユーザーは永久に虜になっているわけではない。こういったテクノロジーを持つ企業は上手く波に乗っていても、次の大きなトレンドは否応なくやってきて、ユーザーがコミットしたくなるような、よりすぐれた方法を生み出さなければならない。体験とは使いやすさであるという謳い文句は確かに一理あるが、戦略的な目的が心の中にあれば、ルールの方が後からついてくる。すなわち、利用する人が多いほど、サービスの価値は増大するのである。

注:この投稿が気に入って、これからも読み続ける決心をしてくれた方は、Twitterをフォローするか、ここで登録をしてくれればこうしたエッセイを今後無料でメールでお届けしよう。きっとこれは賢明な投資になるはずだ。

このエッセーについて初期段階のうちに目を通してくれたJosh ElmanJules MaltzMax Oglesに感謝する。

[原文へ]

“ユーザーに作業をさせることが中毒になるプロダクトを作るきっかけに” への1件のコメント

  1. >立場固定(Escalation of commitment:人間はある決断をする際に、予想していた利益よりも決断したことを続けるコストのほうが上回るということがあとからわかったとしても、過去に投資した総額を考えて投資を増やすことで調整してしまうという合理的ではない判断をすること)が、われわれの脳におかしなことをさせるようにする例はたくさんある。

    例:大王製紙の前会長

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