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大統領選でニューヨークタイムズのネイト・シルバーの数理モデル予測が全50州で的中―政治専門家はもはや不要?

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New York Timesの選挙予測専門家、ネイト・シルバーは昨夜、大統領選の勝敗を全50州で的中させた。 その一方で、いわゆる政治専門家たちの予想はほとんどが外れた。中には笑うしかないような外れ方をした者もいる。

ネイト・シルバーについてはテレビのゲストに呼ばれる政治専門家が口を揃えて「リベラルに偏った見解」と非難してきた。しかしシルバーは今回も彼の作った数理的予測モデルが古臭い専門家の勘や生半可な統計に基づく推測より圧倒的に優れていたことを証明した。

残る疑問は、数理モデルのこれほどの有効性を見た後でもテレビのプロデューサーたちは時代遅れの政治専門家なるものを番組に使い続けるつもりなのかどうかという点だけだ。

シルバーの数理モデルの特長は、どんな政治専門家もとうてい考慮しきれないほど膨大な量の数値を入力として用いるところにある。シルバー・モデルでは各種の世論調査の結果を、規模、質、時期などによって重み付けし、過去の同種の選挙結果と照合される(もちろんそれ以外にもさまざまな高度な統計処理が用いられている)。

今回、予測を100票も外した〔大統領選挙人の総数は538人〕専門家はこんなことを言っていた。曰く、オバマ大統領にはもはや伝えるべきメッセージがない、問題意識がない、 過去4年間の業績に対する説明責任を果たしていない、それを有権者は見ぬいている…。そう書いたのはクリントン大統領の元補佐官、ディック・モリスだが、彼の予測と現実はグランドキャニオンくらいかけ離れていた(ロムニーが325票獲得するというモリスの予測は100票以上外れていた)。

シルバーのアプローチの成功はテレビ局にジレンマを与えている。第一に、この種の議論を理解するためには視聴者に数学の素養が必要だ。仮に古臭い政治評論家を数理統計学者で置き換えたとしても、今度は番組同士で自分たちの予測の優位性を説明するためには面倒な統計学の議論が必要になる。視聴者はそんな議論にはすぐに飽きてしまうだろう。

第2に、ショッキングな選挙予測を報じて視聴率を取りに行けなくなる。視聴率を稼げる意外な結果は、ほとんどの場合不正確な予測だ。ところがシルバー・モデルは多数の世論調査を詳しく分析して平均を出しているので概ね常識的で安定した(番組としては退屈な)結果が出る。

しかしシルバー・モデルが与えるもっとも大きく、破壊的な影響は、伝統的な選挙キャンペーンや政治評論はもはや選挙結果に決定的な影響を与えることはないという事実が明らかになってしまうことだ。シルバー・モデルは選挙の数ヶ月前からオバマの勝利がほぼ確実であると予測していた。選挙は現職有利というのがセオリーであり、ロムニーにはそれを覆すだけのカリスマが欠けており、共和党内でさえそれは意識されていた。また他の重要な要素、景気や失業率に選挙運動は何の影響も与えることができない。選挙を前に景気が上向けば保守系の挑戦者は苦戦を免れない。

つまり、「アメリカ人はもはやオバマのリベラルな社会政策を見放した」云々という「専門家」たちの御託宣はまったく現実とは関係がなかったわけだ。テレビに毎日現れる政治評論家、選挙専門家の発言は大部分がたわごとだった。しかしテレビのプロデューサーたちは派手な党派的な議論、不正確だが一般受けしやすい選挙予測などによって視聴率を稼ごうとする強い動機を持っている。シルバーは今回、ひとつの戦闘には勝ったものの、戦争に勝つのはまだ先のことになりそうだ。

〔日本版〕ネイト・シルバーはアメリカでもっとも注目されている選挙専門家。シカゴ大学経済学部を卒業した後、2002年に、KPMG会計事務所に勤務中にメジャー・リーグ野球選手の統計的評価システムPECOTAをを開発した。これは映画「マネー・ボール」で日本でも知られるようになったセイバーメトリクスをオンライン化したもので、2007年にはPECOTAをBaseballProspectus社に売却して、選挙予測の分野に進出。2008年のブッシュ対ゴアオバマ対マケインの大統領選で50州中49州の勝敗を的中させ、いちやく注目されるようになった。現在、FiveThirtyEightブログはニューヨークタイムズの一部となっている。著書にThe Signal and the Noiseなどがある。)

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+

“大統領選でニューヨークタイムズのネイト・シルバーの数理モデル予測が全50州で的中―政治専門家はもはや不要?” への2件のフィードバック

  1. 裕也、毛の空に より:

    日本版のところで、「2008年のブッシュ対ゴアの大統領選」とありますが、まあ、訂正しておきましょうね。

  2. 匿名 より:

    直しました。

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