グロースハッカーを定義する:グロースハッカーがマーケティングを変えた5つの方法

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aaron日本版編集部注:この連載(1回目はこちら)は現在シリコンバレーを中心として話題となっているグロースハッカーについて扱っている。グロースハッカーは、プロダクトに対するユーザーの獲得や利用率の向上など、プロダクトを成長(グロース)させる職種の人たちだ。これを執筆したAaron Ginn氏はグロースハッカーの第一人者で、10月26日にシリコンバレーで開催されたGrowth Hacker Conferenceの中心人物でもある。なお、彼はわれわれが11月15日に主催するTechCrunch Tokyoのスピーカーとして登場してくれる。Aaron Ginn氏の一連の記事の翻訳とイベントの来日をアレンジしてくれたIndividual Companyの高橋雄介氏に感謝したい。

「グロースハッカーを定義する」と題したこの連載では、グロースハッキングの意味と実践的な応用例を、沢山の有名なグロースハッカーへのインタビューを通じて探ろうと思っている。今回は連載の2回目であり、グロースハッキングがマーケティングの方法をどのように変えたのかについて紹介しようと思う。前回の記事である”グロースハッカーを定義する:3つの共通する特徴”はここから参照されたい。

インターネットは近年の中では最も多くのことを破壊的に変えた勢力であり、靴を買う方法から、友達とつながる方法に至るまですべてを変えつつある。マーケティングの専門職も、最近20年の間に大きく変化してきている。ソーシャルプラットフォームの使用が普及するに従って、グロースハッキングも拡がりを見せ、スタートアップが考えていたマーケティングやプロダクトの成長の方法をも変えてしまった。データと製品、また”リーン”であることを強調しながら、グロースハッカー達は、マーケティングの背後にある仮説そのものをも変えつつあるのだ。

Referlyの共同創業者であるDanielle Morrilが言うには、「優れたグロースハッカーは、今日のマーケティングのあり方に疑問を持っているわ。だって、例えるなら、オンラインポーカーでいうところの選ばれた一握りの人しか知らない戦術の領域にあったようなものが、今ではテーブルステークスのように誰でも手に取れるものになっているから」。 メトリックス(評価指標)、スケーラビリティ(拡張可能性)、リーン(ムダを省くこと)、イテレーション(繰り返し)などの言葉は、かつて製品開発チームから生まれたものだ。グロースハッキングにおいて、最高のマーケターは、製品についてのエキスパート兼ソフトウェア開発者のような存在に感じられるのだ。

今、グロースハッカーがマーケティングを5つの方法で破壊的に刷新しつつある。その5つというのは、マーケティング費用の再考、コア・ストラテジーとしてのバイラル機能開発、新しいチャネルの開拓、従来のマーケティングの限界への挑戦、そして、製品中心のマーケティング戦略だ。

グロース第一、予算は二の次

グロースハッキングは主に、単純にグロースしたいという情熱よりも、マーケティング予算がなく、必要に迫られた中で実践して学ばれてきた。伝統的なマーケティングが、あらかじめ決められたチャネルに対する支出を伴うのに対して、グロースハッカーは、チャネルについて、また、グロースのためのマーケティング予算の必要性についてあらかじめ確信を持った考えがあるわけではない。実験、発見、そして、革新といったものが、グロースハッカーによるマーケティング戦略の核心なのだ。Beboの共同創業者であり、初期のグロースハッカーとしても知られるMichael Birchはこう説明する:「最初から予算があると、人は怠惰になるものだよ。伝統的な方法に乗っ取って考えてしまい、イノベーションを起こすことをしなくなるんだ。」 マーケターは、予算を持っていると、それを使い切りたくなるものだ。なぜなら、さもなくば、そもそもその予算を獲得することができなくなってしまうから。

予算を消化することに気を取られずに、グロースハッカーは、アービトラージ(訳注:裁定取引。異なる市場での価格差を利用して利益をあげようとすること)を探している。Media Spikeの創業者であるBlake Commagereによれば、グロースハッカーは一番大きな可能性を秘めているチャネルを探すものだけれど、「無料と有料のチャネル間での間違った選択はしない。グロースハッカーの仕事は、ユーザ獲得コストを下げることだ。スタートアップにおいては、ユーザ獲得の価値と、獲得したユーザのLTV(ライフタイムバリュー)の間でのアービトラージのゲームをプレイしているようなものだね」。

有料のマーケティングチャネルの利用は、製品とマーケットに依存している。全てのチャネルが平等に作られているわけではない。現在のスタートアップを創業する前にDropboxでグロースに従事していたIvan Kiriginは、「グロースが特定のチャネルに依存する製品もある。ユーザー1人あたりの売上が多いなら、有料のユーザー獲得チャネルを使うことができる。製品のコアな部分でシェアが重要であれば、ヴァイラリティが重要であり、それに最適化するべきだね。」という。

予算を使うことが、目的ではない。全てのチャネルにおいて利益率を高めることが重要なわけでもない。そして、無料ユーザだけがいることが企業としての目標に最適とも限らないのだ。Qualarooの創業者であるSean Ellis氏によれば、「グロースハッカーは、グロースを押し進めるためにお金を使うことに反対しているわけではない。けれど、彼らはあらかじめ決められた予算を使うことよりも、アービトラージの機会を最大化することが重要だと主張するんだ。」

バイラリティ

伝統的な手法をとるマーケターにとって、「バイラルに舵を取る」ことなど予測しがたいことかも知れない。けれど、グロースハッカーは明けても暮れてもバイラルとともに生きている。Michael Birchは、「バイラル・マーケティングは、グロースハッキングの中心にある」という。グロースハッカーは、製品に内在的に組み込まれたバイラリティに対して、計測と反復を強力に押し進めるアプローチをとる。

「グロースハッキングは、しばしば、バイラルなユーザー獲得と密接に結びついている。というのも、最高のグロースハッカーは、バイラルなグロースを『エンジニアリングして操作できる』からね」と、Everlaneの共同創業者であるJesse Farmerはいう。未知の領域を最適化するために検証をしようとする態度が、計画的で反復可能なユーザ獲得チャネルを作り出すことにつながる。ソフトウェアエンジニアがロジカルなフローの中にテクノロジーを組み込んでいくのと同じように、グロースハッカーはデータを用いて製品の中にグロースを(まさにパンに練り込んで”焼き上げる”ように)組み込むのだ。グロースハッカーの仕事のプロセスは、勤勉で、思慮深く、目的志向と言うことができる。伝統的なマーケティングのスキルでは、バイラリティにおけるエンジニアリング的な側面へとは導いてくれない。グロースのメカニズムを”練り込む”ことによって製品におけるバイラルの準備が整う。これは無計画には決して達成することができないのだ。

通常の方法を覆す

グロースハッキングは、伝統的なマーケティングとは異なり、積極的に新しいチャネルを追いかけ、既存のチャネルの活用方法を再創造する。Danielle Morril曰く、「普通のチャネルでは、もはや充分ではないわ。コモディティ化してしまっているからね。グロースハッキングは、ディストリビューションを目的とした新しいチャネルを発見するための新しい実験をし続けることだわ。伝統的なマーケターは、オフラインの世界で上手くいった、お決まりの戦術をオンラインの世界にも適用してしまうの」。グロースハッカーは、たった一つのアドバンテージを探していて、それによって、他社との競争を圧倒しようとする。Danielleはさらに「グロースハッカーは、 自分たちだけのアドバンテージを先に見つけようとして、他社が追いついてくる前にそれを有効活用するのよ」ともアドバイスをしている。

彼らは、常にチャネルについて、研究と検証を継続し、グロースのためのメトリクスを押し進められる新鮮な方法を発見しようとしている。グロースハッカーが信じてやまないのは、ホッケースティック曲線のような急成長は、一般化されていなくて、あまり利用されていないチャネルを探っていけば得られるものだということだ。既に形式化しているようなチャネルでは、ポジティブなアービトラージによる信じられないようなグロースを引き起こすことはあまりないのだ。

限界を拡張する

チャネルを探していく中でかゆいところをかきたい願望から、グロースハッカーはSPAMばかりの世界にとても近いところに行くのをいとわない。「グロースハッキングは、マーケティングの”グレーゾーン”に入ってしまいやすい。典型的に、グロースハッカーは他社や過去とは違った方法で物事を押し進めようとしていて、やりすぎてしまうことがある。」とHomeRunの共同創業者であるMatt Humpheryは指摘する。ソーシャルネットワーキングが成長した結果、APIを利用したクリエイティブな戦術を通じて、いつでもユーザーを”収穫”できてしまうからだ。

効果的にユーザー獲得者になるためには、グロースハッカーは、ルールを前提とした上で、どこまでなら実行して良いのかという、戦術上の境界線を最適化しようとする。「利用規約は、ほとんどのグロースハッカーにとっては、あまり重要ではないかもしれない。」と Clarityの創業者であるDan Martellは語る。彼らがフォーカスしているのはグロースであり、ルールに対して愛想を振りまくことではないからだ。けれど、その結果、必ずしも賢明な判断とは言えないグロースハックをしてしまうこともあるのだ。最適化をやりすぎると、ユーザエクスペリエンスを誤解してしまったり、大衆の反感を買ってしまったり、悪いグロースハックをしてしまうことにもつながる。フィッシング詐欺と使い勝手の良さの境界線は明確だと思うけれどね。

トップからボトムへ

伝統的に、マーケティングは企業にとっての、一つの大きな軸をなすものと見られてきた。そこでは、マーケティグと製品開発は明確に区別されている。グロースハッカーは、製品そのものをグロースのための主軸をなすものと見なしている。Taggedの共同創業者でグロースハッカーとしても知られるGreg Tsengは次のように指摘する。「伝統的なマーケティグは、ユーザを惹き付け、製品の周りに勢いを付けるための外部的な手段にフォーカスしてきた。けれど、グロースハッカーは、創造的で技術的な能力を用いた、より内省的なアプローチをとって、製品の内部にユーザー・グロースをするためのメカニズムを作り込むんだ」。

グロースハッカーは、製品に深く入り込んでいる。グロースをエンジニアリングによって成功に導くために、グロースハッカーに必要となるのは、ビジネス全体を俯瞰して観る視点、プロダクトマネージャとデータ志向のマーケターが1つになったような姿だ。Hot or Notの共同創業者でPerceptual Networksの創業者でもあるJim Youngは、「グロースハッカーは、トップからボトムに至るまでのビジネス全体を実験として見なしているよ。彼らは、全てに対しての”なんでも屋”である必要があるんだ」という。 外部向けのメッセージからユーザエクスペリエンスにいたるまで、つまり、トップからストリートレベルに至るまで全ての視点でビジネスについて理解できることこそが、グロースハッカーが成功するためには決定的に重要なのだ。

グロースハッキングの勃興により、マーケティングそのものがその定義を改めようとし始めている。マーケティングの有名なジョークに「マーケティング予算の半分はムダだけれど、どの半分を指しているのかよく解らないよね」といったものがあるけれど、これはもはや僕らを悩ませるような一般的な感覚ではないのだ。今となっては、そんなジョークを単純には受け入れるわけにはいかない。500 Startupsのグロースハッカー・イン・レジデンスであり、Circle of Momsの共同創業者であるMike Greenfieldによれば、「マーケティングは計測と反復が可能なものになりつつある。そうなるってくると、データと技術的なスキルがより重要な意味を持ってグロースに効いてくる。グロースハッキングが流行っているのは、マーケティングのこうした変化によって、新しく可能になることへの認識が進んだってことなんじゃないかな」という。 リーンスタートアップ運動が一般的に定着するにつれて、マーケティングもグロースハッカー達によってリーンにイメージチェンジをしているのだ。

この連載の次回の記事では、グロースにとっての製品の重要性とグロースハッカーが製品をどうとらえているのかについて探っていく。

Matt HumphreyJesse Farmer、Sean Ellis、David Bower、そしてZak Holdsworthにはグロースハッカーについての整理、インタビュー、この連載の構成について助けてもらった。この場を借りて御礼を言いたい。

[原文へ]
(翻訳:高橋雄介

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