編集部注:この原稿はIndividual Companyの高橋雄介氏による寄稿。現在は彼はシリコンバレーおよび東京を行き来して米国でのビジネスの立ち上げの準備をする傍ら、米国滞在で得た生の情報を執筆してくれている。
もう1カ月も経ってしまったが、500 Startupsが2012年10月から始めているバッチプログラムで採択した33チームを発表しているので紹介しておこう。この中には日本からの参加となるCinemacraftや日本から出資を受けた台湾のCubieが含まれている。
採択されたチームは、アルゼンチン、オーストリア、オーストラリア、ブラジル、インド、クロアチア、デンマーク、イタリア、日本、ラトビア、エストニアといった、世界各国から選ばれており、米国内のチームについてもシリコンバレー以外のニューヨーク市やロサンジェルス、ハワイ、ボストン、デンバー、テネシーから採択をしている。また、33チーム中7チームが女性の創業者を含んでいる。
今回初の試みとしてAngelListを用いた募集も併用した結果、CinemacraftとCubieを含む、以下の33チームが選ばれている。なお、Angel Listからの採択は8チームのとのこと。
Cinemacraftは、VideogramというプロダクトでTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルの最終審査にも登壇していた(余談だが、登壇した8チーム中、CinemacfartとLanguage Cloudの2チームが500 Startupsの投資先だった。日本とシリコンバレーの垣根も取り払われつつあるのかもしれない)。
Videogramは動画コンテンツのインタラクティブなサムネイルを自動生成してくれるサービスだ。写真のアルバムなどを見るときにサムネイル表示機能があると便利だが、動画コンテンツの場合は、動画の最初の1コマや途中の一部の1コマをその動画を代表する一枚の画像として表示しても、動画全体の内容をイメージすることは難しい。Videogramは時間軸を持った動画コンテンツを二次元の静止画でインタラクティブに可視化するプロダクトで、特徴的なシーンを自動的に抽出して、漫画のように複数枚の画像をサムネイルとして自動生成してくれる。
創業者のSandeep Casi氏はかつてLucasfilmでシステムグループを率いていたこともあり、エンターテイメント業界でのディストリビューションにも明るい。
日本以外にもこの500 startupsのバッチにアジアから参加しているチームとして台湾出身のCubie Messengerがある。Cubieは、ちょうどLINEやKakao Talk、What’s Appのようなメッセンジャーアプリで、写真やスタンプ、音声や動画のみならず、手書きの画像を送ることもできる。Cubieは最近になって日本のB Dash VenturesやBIGLOBE Capital、NTTインベストメントパートナーズ、Gumiベンチャーズから資金を調達したことを発表しているので、日本には近い存在かもしれない。
その共同創業者のCjin Chengによれば、Cubieは「iPhoneとAndroid向けに2012年の12月にリリースをして、その後6カ月以内に約400万ダウンロードを成し遂げた」のだという。アジアや中東のAppStoreでトップに輝き、20カ国でソーシャルカテゴリーの1位を記録している(米国では13位、日本では10位)。
こういったプロダクトの成長については、共同創業者のYenwen Fengによると「何が一番グロースに寄与したのかは分からないけれど、少なくとも、テストと計測とその反復を高速で行ってきている。モバイルで素早くアプリをグロースハックをすることは難しいので、僕らはまず、Androidアプリ向けに検証用に新機能のリリースをしてはユーザーの反応を細かく計測して、ユーザーの好む機能のみをiPhoneにも移植してアップデートするということの繰り返しを、週に1回以上のペースで実行してきた」という。
「今回の500 Startupsのバッチプログラムは、かつてないほどに、グロースおよびディストリビューションに強くフォーカスをしてるのよ」と500 StartupsのパートナーであるChristine Tsai氏が語ってくれた。「プログラム期間中に、投資先に対して、グロースやディストリビューションにフォーカスした1対1のレビューセッションを何度も実施したり、この分野の専門家を招待してレクチャーを開催したりする予定」とのことだ。メンターのリストを見ても、見る人が観れば分かる、経験と実績が豊富な、蒼々たるグロースハッカー達が名を連ねている。
「スタートアップにとって、他の多くの必要なものを取り除いたとしても、それでも最も必要なものとして残るものは、間違いなくグロース」(今夏のバッチプログラムに参加したTokyo Otaku Modeの共同創業者でCTOのアタカハジメ氏)である一方で、グロースについてのノウハウがいまだ確立しているとは言いがたい。主にグロースハッキングのノウハウは「インターネットやソーシャルメディアが一般化した最近のノウハウであり、一部の成功したスタートアップのグロースチームの元メンバーか、グロースに成功したスタートアップの創業者のどちらかの経験知、暗黙知としてしか蓄積されていないのが現状」(Homerunの創業者でありTechCrunch Tokyoにもグロースハッカーとして登壇してくれたMatt Humphery氏)だ。そのため、彼らの多くをメンターとして揃えていることは、他のアクセラレーター比較しても傑出した支援体制ということができる。
実際に、僕が500 Startupsを訪問していた10月(バッチプログラム開始後)には、今年の7月末に3000万ドルでの売却に成功したばかりのZencoderの創業メンバーであるJohn Dahl氏らが訪問していて、初期の頃から事業の売却に至るまでのグロース戦略を、プログラム参加チームに対して詳細に共有していたし、その翌週にはQuoraのグロースチームを率いているAndy Johns氏がレクチャーに来ていた(彼はOpen Network Labのメンターでもある)。さらに、11月20日には、Twitterのグロースチームの創業者であるGreylockのJosh Elman氏がTwitterの初期のグロース戦略や急成長するFacebookに対してどのような戦略をとっていたかなどのレクチャーをしに来ていた。元SimplyHired CTOで500のメンターでもあるJames Levine氏は、「特にFacebookをグロースチームで主要メンバーだったAndyのトークは、メンターである僕らにとっても本当に貴重な内容ばかりで、全てのアドバイスを吸収しようと必死でメモを採ったよ」とのことだ。
前出のCinemacraftのCasi氏は言う。
「Cinemacraftがビジネズディベロップメントに強いとはいえ、僕らにとってはスタートアップとしてソフトウェアを提供していくときのグロースについては未知の部分も多い。そういう状況の中で、500のバッチプログラムが素晴らしいサポートをしてくれていて、経験あるメンター達に気軽に相談できたり、様々な戦略を持って異なる市場を対象としている他のチームと情報交換をしたりすることで、自分たちにとって最適なグロース戦略を見つけられつつある。」
