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Facebook10億人の成長を率いた人物が語る–口コミに頼る前に製品の真の価値を見出すことが重要

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編集部注:この原稿は高橋雄介氏による寄稿である。高橋氏はデータサイエンティストとして大学で研究教育に従事した後、Individual Companyを創業している。現在は彼はシリコンバレーおよび東京を行き来して米国でのビジネスの立ち上げの準備をする傍ら、米国滞在で得た生の情報を執筆してくれている。

少し前の話になってしまうが、10月26日に初めてのGrowth Hacker Conferenceがベイエリアのメンローパーク市で開催された。数百人にも満たない少人数での開催となり、チケットは早々に売り切れてしまっていたようだ。グロースハッカーという言葉を最初に用いたことで知られるQualarooのSean Ellisがスピーチの中で「SimplyHired上に662もの”グロースハッカー”への求人が出ているよね」と語ったことにも象徴されるように、いま、グロースハッカーはベイエリアで最もホットなキーワードとなっている。

イベントの登壇者は、Sean Ellisに加えて、グロースハッカーの概念が普及するきっかけを作ったAndrew Chen、Facebookのグロースチームを率いていたことで知られるChamath Palihapitiya、KISSmetricsのHiten Shah、TechCrunchでグロースハッカーについて一連の記事を書き、大統領選ではMitt Romney候補のグロースハッカーとして闘ったAaron Ginnなど、いまベイエリアを中心にグロースハッカーのコミュニティーの中心にいるメンバーが一堂に会した(なお、このイベントに登壇したAaron GinnとY Combinatorを卒業してHome Runを売却したMatt Humpheryは11月15日開催のTechCrunch Tokyoにも登壇した)。

すべての話が経験と具体的な数字と結果としての成果に裏付けされた素晴らしいものばかりだった。しかし、そのすべてを紹介するのは難しいので、ここでは冒頭のChamathによるキーノート「Facebookを10億人に育てた方法」について紹介しようと思う。

3つの行動規範と4つの指標

Chamathはproduct market fit(よい市場でかつその市場を満足されらる製品を持っていること)後の製品を成長させようと考えたときに重要な話を沢山してくれた。

まず、グロースチームというものは新しい役割だ。だから、グロースチームのメンバーとして働く状況は多くの人にとって分かりにくい。このためFacebookでは、チームのメンバーに、係数“K”(あるいは「ヴァイラル係数」――既存ユーザ一人当たり新規ユーザを何人連れてきてもらえるかについての指標)などの抽象的な数字ではなくて、誰でも理解できるような3つのシンプルな行動規範を示した上で、4つの目標だけを追いかけるようにしたという。

Chamathnのチームがやってきて「実際に成果につながった」3つの行動規範とは、シンプルなたったこれだけのことだ。

  • 計測する(measure things)
  • テストする(test things)
  • 試しにやってみる(try things)

いろいろなことを試しにやってみて、様々なテストをして、結果を計測して、上手く行かないものはすぐに取りやめて、よかったことをさらに継続していくというシンプルな流れだ。

そして、この行動規範の上で、実際に何を目標にテストや計測や試行を実行してきたかというと、具体的には次の4つだ。

  1. 製品の前に客を連れてくる(ユーザー獲得)
  2. サインアップして実際に利用してもらう(アクティベーション)
  3. 継続して利用してもらう(エンゲージメント)
  4. 口コミで他人に薦めてもらう(ヴァイラリティー)

まず、1. 人々をあなたの製品の前に連れてくる(ユーザー獲得)。その上で、2. 初めてあなたの製品を訪れた人々に素晴らしい体験を提供して、できる限り早く「なるほど!」と思ってもらい、ユーザーになってもらう(アクティベーション)。そして、3. ユーザーとなった人々には、製品の価値をできる限り何度も何度も繰り返し伝え続けながら、製品に関わり続けてもらう(エンゲージメント)。4. こうして製品を継続して使い続け、製品の価値も理解してくれたユーザーには、製品を他の人に薦めてもらうのだ(ヴァイラリティー)。

これらのシンプルなフレームワークが重要な理由は、重要だと思われている抽象的な数字をみんなが理解できないからだ。「ほとんどの人は自分が話している内容が何なのか分かっていない」のだという。具体的なことにフォーカスしないと「チームのメンバーが、自分たちの製品の真の価値が何なのかが見えなくなってしまう」。Facebookを10億人規模にまで育てたChamathのチームは、たったこれだけのシンプルな行動規範と目標のみを追いかけていたのだ。

勝利をもたらすのは常に社内文化

次にChamathは「社内文化がすべてに優先して重要だ」と語った。そして、社内文化が大事であるということは、すなわち「グロースチームのための人の選び方が重要」だという。ChamathはFacebookのグロースチームを率いるにあたり、「正しいメンバー」を選ぶのに細心の注意を払った。Facebookの彼のチームの人材採用基準は次のとおり。

  • IQが非常に高い
  • 目的意識が非常に強い
  • 成功に対する飽くなきフォーカス
  • 挑戦的で競争心が強い
  • 完全主義者と言って良いほど品質に対する高い基準を持っている
  • 変化と破壊を好む
  • 物事を改善するための新しいアイデアを考えられる
  • 誠実で信頼がおける
  • 周囲を素晴らしい人に囲まれている
  • 周囲にどう思われようと実際の価値を作り出すことのみを気にする
  • 完璧で簡潔なフレームワークを打ち立てられる

Chamathによると、これらの基準を満たすメンバーのチームを構成した上で、チーム内の社内文化としては「エゴを捨てる」「神話を疑う」2つが重要だという。

グロースチームの中で素晴らしい人材は、成功体験を持ったエンジニアやマーケターにありがちな自分自身のエゴを主張しない。「エゴを捨てて感情を切り離して、短期的に賞賛されないとしても、偉大な製品を作るために長期的に必要なことを理解できていることが大事」なのだ。

また、経験的に、慣習的に、あるいはそれまで社内で正しいとされてきたような成功体験の神話を疑い続けることが必要だ。グロースチームにおける最高の人材は、冷静になって、実際に何が起こっていて、それがなぜ起こっているのかをデータを収集して理解することで、そういった種類の(しばしば間違った)情報を疑って無効にできる。「直感や経験だけでは、何も正確には予測できない」のだ。

Chamathによれば「当時、Facebookは上手く行っているんだというエゴを捨て、社内の神話を無効にしたことでよかったことは、まず彼らは口を閉じて、次に言葉を発したときには自分たち自身が何を話しているのか、それが本当に正しいのかどうかを理解しようと努力するようになったこと」だという。

「どんなときでも、社内文化が勝利を呼び込むのに最も重要だ。あなたが価値があると思うものが、あなたが達成できるものそのものなんだよ。」

“K”ばかり見るのをやめて、製品の価値を見極めよう

係数“K”は”K”単体では最大限に機能させられない。”K”は「実際の製品そのものとは完全に分離したもの」だからだ。”K”は知るべき価値がある数字であり、それをトラッキングすることは重要だけれど、それだけを考えているとすれば、それは「まったく意味がない。」Chamathによれば、「ユーザー獲得、アクティベーション、エンゲージメントについての理解という前提がないままに、長期的な製品価値をダメにしてしまうような抽象的な評価指標ばかりを追い求めてはいけない」のだという。「製品の真の価値は見付けにくいもので、ほとんどの製品はそれをまったく持っていない」のだ。

Facebookでは不思議にも「口コミで製品を広めること」がチーム内の最重要トピックになったことはないという。ユーザー獲得、アクティベーション、エンゲージメントができて初めて、製品の真の価値がユーザーにとってもチームにとっても明確になり、口コミが初めて意味を持つ。「偉大な製品は最初の3つの目標に集中している。口コミ単体では持続的に成長できない。投資効果が素早く得られるとしてもね。だから、最初に口コミで広げることに無駄な時間を使うのは止めた方がいい」という。

大切なことは製品を鍛え上げること。入り口に連れてきて、入ってもらって納得してもらって、そして、何度も何度も製品の価値をを伝え続けるということだ。これによって、自分たちが実際に何をしているのかについてもよく理解できる。

Facebookでは試行錯誤の結果、自分たちの製品の価値が友達と自分の活動をつなげる”ソーシャル・アクション」”が重要だということが分かった。ソーシャルアクションとはあるユーザーとその友達である別のユーザとの関係に関するアクションのことで、たとえば「あなたの友達のYusukeが、あなたをFacebook上でタグ付けしました」といったようなことである。その価値を提供できる方法を模索していった結果、「写真を扱う機能を提供するようになった」という。

Chamathによれば「グロースは製品の価値とユーザーの行動を簡潔にかつ明確に理解することに終始する」という。つまり、製品の価値を理解できたこと自体が重要であり、それによって、その後の製品についての軸足のあり方を定めたり、どのようにピボットをすべきかについての指標も得たりすることができたのだ。Facebookの場合では写真を扱う機能で表現される”ソーシャル・アクション”がユーザにとっての価値があったということだ。

今日の成功のほとんどの人が自社の製品についての真の価値を理解できていない中、「それを本当に理解できたとしたら、実際に勝つ前にすでに勝負はついている」(Chamath)。

正しいと信じることをしよう

Facebookでは例えば異なる地域や文化ごとにも様々な方法を試してきた。そして、「失敗したときにも、成功したときと同じくらいに祝福した」という。失敗したこと自体ではなく、失敗によって違う文化や市場に違う人がいるということを学んだということが大事だからだ。それらのことは、自分たちで検証し、テストし、試しにやってみて初めて分かったことなのだ。どこかで読んだことをそのまま実行するとしばしば失敗してしまうし、製品を壊してしまうことにもつながる。「正しいと信じることを実行しよう。」

カンファレンスは初めての開催ではあったが、経験のあるグロースハッカーばかりが集結し、また、様々な場所での実践者が集まった非常に密度の濃いものだった。ここに掲載することができなかった話や、イベントのより詳細なレポートについてはGrowthHacker.jpの方で順次紹介してく予定だ。

最後に、素晴らしいカンファレンスを企画し主催してくれたErinGaganAaronありがとう!

(写真クレジット:Philip Chao)

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