間近に迫ったCrunchies。ステージを支えるのはHyperCardとAppleTalk

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canopyもし来月の2012年Crunchies Awardsにいらっしゃるのであれば(チケットは現在発売中!)、ぜひステージの上方にも注目して欲しい。59枚のプレキシグラスで作られた音響用天井パネルシステムがあり、これは最新テクノロジーでコントロールされているのだ。と言うのは正しくない。実は、1991年当時に最新であったテクノロジーを使っているのだ(つまりは20年以上前の技術だ)。Crunchiesでは最新技術を持つスタートアップを称えるイベントなわけだが、彼らの頭上に20年も前の技術が、その存在をアピールすることになる。

場所はサンフランシスコのデービス・シンフォニーホールだ。ふた昔前の最先端技術が未だに利用されているのだ。システムは既に生産ラインから消えたApple Power Mac G4とハイパーカード(HyperCard)上で動作しており、ネットワークはなんとAppleTalkを利用している。このシステムがプレキシグラス・パネルの高さ、縦横の角度などを調整しているのだ。パネルは上下に70フィート移動することができ、移動単位は0.1インチであるとのこと。安全性を考えて、システムには3段構えの冗長性を持たせているのだそうだ。

操作コンソールとなるPower Mac G4はJim Jacobsのデスクに鎮座している。デービスのステージ技師で、システム構築メンバーのひとりだ。パネルを動かす際には、Macで操作を行い、複数台のTVモニタで動作の様子を確認して行う。パネルの移動速度は分速16フィートだそうだ。1度に動かすことのできるパネルは16枚のみだ。59枚全てを動かして同時に止めると50,000ポンドの重みがかかって、建物自体が揺れてしまうらしい。

mac and monitors

ちなみにG4は、本システムの中で第三世代のマシンということになるそうだ。Jimによれば最初はMac OS 6を搭載したLC IIで動いていたのだそうだ。そこからMac OS 7搭載のCentris 610になり、そしてMac OS 9.1のG4で動いているのだ。もしものときに備えて、予備のG4も手配してあるそうだ。

システムの動作プラットフォームは、先にも記したようにハイパーカードだ。コードの行数は数千にもなるのだそうだ。今はなきRadiant Enterprisesにて本システムの開発監督および回路設計を行ったTed Chavalas曰く、「ハイパーカードは十分なパフォーマンスを発揮するプラットフォームでした」とのこと。ちなみにプログラムは1988年以来、改造を加えられていない。それぞれのパネルは個別に位置などを指定する。パネルは個別に操作することもできるが、全パネルの情報をプリセットとして登録しておき、ハイパーカード上の「Go」ボタンで一気に動かしていくこともできる。Crunchiesでは「PA Lighting」という事前設定を使おうと思う。

ハイパーカード

G4で動作するハイパーカード上で指定した情報は、AppleTalk経由でステージ上にある59台のウィンチに伝えられるようになっている。Chavalas曰く、当時において、安価に活用できるネットワークプロトコルがあまりなかったのだとのこと。Ethernetが流行り始める前の80年代および90年代、安価なネットワークとしてAppleTalkがしばしば利用されていた。

ところでAppleのOSは9.2からOS-Xとなり、ハイパーカードをAppleTalk経由で通信させるためのドライバーがサポートされなくなってしまった。おかげでシステムのリニューアルも行われなくなり、コンピュータを新しいものにリプレイスすることもできなくなった。

Jacobsはウィンチのある場所を案内してくれた(下の写真にも写っている)。それぞれにモーターやリレーがついていて、制御用のPIC16C57プロセッサも備わっている。4本のケーブルが天井の穴を通ってそれぞれのパネルに繋がっているのだ。ウィンチはパネルを操作するだけではなく、Mac G4に対して位置情報をフィードバックする役目も担っている。
winches

Winch5

ちなみにこのパネルが設置されているのには3つの理由がある。ひとつ目の理由は観客のためのものではないらしい。ステージ上のミュージシャンたちが、パネルからの反射音をステージ上で聞いて、きちんと全体を把握するというのが最初の目的なのだそうだ。オーケストラの構成などにもよりパネルの傾きを変更し、それによってステージ上のミュージシャンたちが周囲の音も聞けるようになる。まあこれは演奏の質を高めることにも役立つわけで、あながち観客のためではないとも言えないかもしれない。

あとは、ステージ側の音響的なデッドスポットに座っている観客に音を届けるという理由だったり、あるいはビジュアル効果もp意識したものなのだそうだ。

ところで、当時の開発プラットフォームがサポートされなくなったのであれば、すべてを作りなおせば良いのではないかと考える人もあるだろう。しかしシステムは今のところ完璧に動作しているのだ。動作しているものを全て捨てて新しいものを入れるという判断はしにくいものだ。また、ハードウェア的な障害に関してはいくつも予備を用意しており、まだしばらくは大丈夫なのだそうだ。このシステムの開発費は約50万ドルほどだったそうだ。システムを更新するとなると、設備などのハードウェアを除いて300万ドル程度もかかるそうで、これもシステム更新を妨げている理由だ。

こちらで採用している天井板システムについてはこちらにより詳しい情報がある。Ted Chavalasの写真も掲載されている。

第6回を迎える年間Crunchies Awardsは間もなく開催される。テック界のオスカーだと言ってくれる人もいる。ノミネートはすでに終了し、ファイナリストの選別が進んでいるところだ。当日が面白い日になることは間違いのないところだ。今回は1月31日に開催されることとなっている。チケットは発売中だ。お忘れなくお求めいただきたい。

いつものようにCrunchiesのサポートをしようと思ってくださる方は、こちらまでご連絡頂きたく存じます。

Photos by Ted Chavalas and Jon Orlin

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(翻訳:Maeda, H)