殆どのテレビCMはターゲティングが貧弱で、絶対買わない商品を見せている。しかし、遠からず変わるかもしれない。Gracenoteの新しい広告入替えシステムは、視聴傾向と個人情報を組み合わせることによって、より関連性の高いCMを表示する。GracenoteはCESでデモを行い、2013年に試行を開始する予定だ。収益分配については検討中だが、高いCPMによって、700億ドルのテレビCM市場が拡大し、Gracenoteにもパートナーにも大きな見返りがあるかもしれない。
FacebookやGoogleによる個人情報やクッキーを使った再ターゲット広告の時代にあって、テレビCMは絶望的に分断されている。私はテレビを見るたびに、広告主は何百万ドルも使って誤った相手にアピールしているのではないかと困惑せずにいられない。オンライン広告の投資見返りに関してあれだけ騒いでいる中で、広告主は受像機の中でお金を燃やすことを恐れていないように見える。
伝統的に、テレビCMはマスマーケットおよびどの番組の間に流れるかによってターゲットされている。これは、ある都市で同じ番組を見ている人々は、たとえ異なる層であっても同じ広告を見ることを意味している。エコノミーカーのCMが、若すぎて買えない人々や、裕福でもっと高いモデルを買う人々にも届けられる。ペットフードの広告がペットのいない人たちにも表示される。個人ターゲット広告がない、ということはブランドが膨大なROIを逃がしているという意味だ。

Gracenoteは、多くの人が音楽会社だと思うだろうが、テレビのこの問題に対する解を持っている。1998年創立のこの会社は、2008年にソニーに買収され現在350人以上の従業員がいる。Gracenoteは以前、Compact Disc Data Base(CDDB)として知られていた。iTunesやGoogle、Amazon、Spotify、Winampなどのサービスが、歌やストリームのアーティスト名などの正確なメタデータをマッチングするためのしくみを提供している。
今年6月、GracenoteはBulldog Unitedを買収し、同様のビデオ識別技術を導入した。これを利用したEntourage自動コンテンツ識別システムは、タブレットなどの第2画面をユーザーが見ている番組と同期させ、関連性の高いコンテンツを表示する。
これらも重要なビジネスだが、同社がテレビCM置換でやろうとしていることは、実に楽しみで興味深い。これはビジネスとしてだけでなく、無関係のCMにあきれている人たち全員にとってだ。私はこの会社とのミーティングの後、その可能性の大きさに文字通り目まいがした。しくみはこうだ。
Gracenoteの広告置換技術を備えたスマートテレビまたはセットトップボックスは、ビデオ識別システムを使って、視聴者が何を見ていて、いつ番組がCMに入るかを調べる。そこでは利用者の視聴傾向データを、利用者に関する年齢、性別、収入、賃貸か持ち家か、車のリースがあるか、その他信用情報などに関する公開情報を収集するINVIDIなどの広告決定エンジンと統合する。そのデータを広告決定エンジンのアルゴリズムが分析し、どの広告が最も視聴者に合っているかを判定する。
次にGracenoteは、IPベースの広告配信エンジン、BlackArrowやmDialogなどに接続して最適な広告を要求する。Operaブラウザーが、置換広告を標準の広告の上に被せ、元の番組に戻る時には表示を終える。

Gracenoteの社長、Stephen Whiteが2台のテレビで同じチャンネルを映している場面でこのシステムを動作させて見せた。例えばシチュエーションコメディーの合間に、40代男性、年収5~7.5万ドルをターゲットにしたホンダ車のCMが標準だとすると、Gracenoteはこれを18~35歳女性、年収3.5~5万ドル向けの若い女性によるLevi’sのCMに置き換える。Levi’sのCMはホンダのCMの上にスムーズに重ねられ、CMが終ってドラマが再開すると同時に消えた。
Whiteは私にこう言った。「これは、700億ドルビジネスにおける非常に大きな革新だ。これが人々にもたらす意味に関して、多くの不安や懸念がある。収益モデルには多くの可能性があるが、楽しみなのは放送局、テレビメーカー、そして技術提供者のみんなが非常に密に協力し合って、収益機会を最大にするための最良の方法を見つけようとしていることだ」
無関係なCMを除去するという同じ夢を追うスタートアップは、Cognitive Networksをはじめ他にもいくつかある。しかし、彼らはGracenoteが毎月音楽・ビデオ情報を100億件照合するために作りあげたスケールを持っていない。
新年のCESでのデモの後、Gracenoteは大手テレビメーカー数社と共にライブ試行を開始し、2013年中に製品版の出荷を目指している。このテクノロジーは、テレビCMの勢力均衡を変え、テレビメーカーに放送局や広告主と同じテーブルに付く機会を与えるものだ。
Gracenoteの広告置換システムは、広告効果に関する今よりはるかに正確な指標の前兆でもある。例えば、視聴者が実際にCMを見たのか飛ばしたのかもわかるようになる。Whiteは、いずれ消費者がどのCMを見るかあるいは全く見ないかを選択できるようになる可能性にも言及した。「利用者は自分の関心に基づいてプロフィールを設定できるようになるかもしれない。もし、ハワイへ旅行に行く直前なら、ハワイに関する広告だけが表示されるように設定できる」
最終的にテレビは、広告のない有料人気ウェブサービスに似てくるのかもしれない。Whiteがこう空想する「私なら20ドル払って広告をなくし、CMタイムに子供の写真を見たい」
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(翻訳:Nob Takahashi)
