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Huffington Post日本版の編集長はネットニュース出身者

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アプリは重要である

先日、日本でのローンチを発表したHuffington Post。朝日新聞と組んで日本での事業を開始するというが、その体制についてはこれまで明らかにされていなかった。春のローンチを控えてどうなるのかと心配していたが(なにせHuffington Postのために準備されたオフィスはTechCrunch JapanのあるAOLの隣の部屋だ)、漸くその姿が見えてきた。

海外ではフランスのLe MondeやスペインのEl País、イタリアのGruppo Espressoなどの新聞社と組んだり有名編集長が就任したりして立ち上げられてきたが、日本は少しその様相が違うようにも思える。その編集長に就任したのは、ライブドアのポータル事業や直近ではGREEニュースやMagalryなどのゲームではないグリーの事業に携わっていた人物である。

その人、松浦茂樹氏のバックグラウンドはいわゆる旧来型のメディアの編集に携わってきた編集者というわけではない。彼はシステムエンジニアを経てライブドアに入社し、いくつかの事業に関わった後にライブドのポータルの全体の統轄をしている。このとき、初めてニュースの運営に触れたという。編集者ではないが、BLOGOSTechWaveの立ち上げも携わっているから、インターネットでのニュースサイトを運営するという意味ではその経験はある。その松浦氏に話を訊く機会があったので(なにせ隣人だから)、いくつかコメントしておこう。

松浦氏が考えるのはHuffington Postは「言論空間」としてのオンラインメディアだという。よく知られるように、米国ではHuffington Postは3万人のブロガーを抱えていて、記者や通信社のニュース以外にブロガーからの投稿も受け付けている。中には500人もの有名人ブロガーもいる。これ以外にも月間何十万にも及ぶコメントが各記事に付けられていたり、ソーシャルメディアとの連携によって拡散されることで、いまではナンバーワンのニュースサイトとして成長している。米国と同じプラットフォームを利用することで、読むためだけのニュースサイトではなく、言論のための空間を作り上げていきたいのだという。

先日来日したHuffington PostのCEOのJimmy Maymanは新サイトは「3年間で日本のオンラインニュース大手の5位までに食い込みたい。大手の一角に入るため、月間800万~1000万人の獲得を狙いたい」と日経新聞の取材に答えている。Yahoo!ニュースを頂点とする日本のニュースサイトのランクがある中で、この高い目標に対して、どう実現していくのかは見ものだ。

これに対して、松浦氏が考えるアプローチで興味深かったのはコメントの編集だった。

米国ではおおよそ30万件ものコメントを読者が投稿するが、そのうち10万件は機械的にあるいは人的にカットされて、表に見えるのは20万件程度だそうだ。意図的に表示するしないをコメントに対して操作しているわけだ。

彼は食べログのようなユーザー参加型のサイトを例に出しながら、投稿に対して1つ1つそのコメントをどう扱うかをサイト運営の編集チームの業務としたいと考えている。食べログではレストランに誹謗中傷を加えるコメントに対して、ユーザーに修正するように返していると言われている。それによって独特の空間を作っている。さすがに投稿されたコメントに対して意見を変えるようなお願いをユーザーにすることはないだろうが、いいコメントを前面に出したり、積極的に編集スタッフもコメントによる議論に加わったりと、いわゆるCGMのサイト的な運営には注力していきたいということだった。

ライター陣を集めてコンテンツの質だけを追求するというよりも、ユーザーがコメントなどを投稿し会える空間を演出していくのも編集の役割と感じているようだった。それは従来のニュースメディアの運営とは異なっていて、よりユーザー向けのサービスに近いものではある。

ところで、Huffington Postはインターネット業界の一部では米国での成功からその名前を知る人はいなくもないが、日本ではまったく無名のサイトではある。米国では有名ブロガーや創始者のAriana Huffingtonのような有名人が関わっているからこそ、一般への認知が早かったのかもしれないが、日本はどうするのか。

その隠し玉は日本でも用意しているという。松浦氏曰く、彼がHuffington Postに入社する際の面接で答えたときの象徴的な編集長にしたかった人物は小泉純一郎元首相だという。人気の高かった首相がHuffington Postの運営に携わったら大手マスコミも含めて話題にならないことはないと考えていたようだ。

この夢は諦めていないようで、サービスをスタートさせるときには「ある大物」がサイトの象徴的な存在になるという。その人物は最後まで明かしてくれなかったが、Huffington Postが目指すのは、現在オンラインで活躍している人たちよりも、オフラインの世界で影響力を持つ人たちを巻き込むことだそうだ。なので、ブログなども我々に対して「おっ」と思わせる人たちがやってくるのだろう。それには朝日新聞のパワーも利用しているという。

さて、気になるHuffington Postのローンチ日だが、現在、5月7日をターゲットとしているという。もう何年もニュースサイトに新しい波はなかったが、彼らが米国で成し得たことを日本で実現できるかはこれからである。

(TechCrunch JapanはAOLの日本の子会社によって運営されている。一方でHuffington Postの日本語版はAOLと朝日新聞との合弁会社によって運営されるため運営会社は異なる)