iPhone 5cは「廉価版」にあらず。Jony IveがiOS 7搭載用としての理想を追求したデバイスだ

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color_green_none_ipad_l_2xご存知だろうか。iPhone 5cの「C」は「cheap」(安い)の「C」ではない。実は「clueless」(何も分かっちゃいない)という単語の頭文字なのだ。

部外者の誰もが、Appleがこのデバイスにこめた思いを見損じている。Appleはそれを見越して「clueless」を名前に組み込んだのだ。

(本当は「color」の「C」。記事を派手に始めてみたかっただけだ)。

新iPhoneの発表イベントを見て、さらにiPhone 5cのビデオを見てみれば、AppleがiPhone 5cに込めた思いを理解できるはずだ。その「思い」とは、すなわちJony Iveによるものだ。

これまでにJony Iveのビデオは数多く見てきた。その中で、iPhone 5cの説明をしているIveこそ(iPhone 5sに比べても)エキサイトしているように見える。もちろんIve(そしてApple)は認めないだろう。これまでのビデオも含め、Iveはすべて自分の子(Appleのプロダクト)について語ってきたわけだ。しかしiPhone 5sのビデオなどとも比較して、何度も見てみて欲しい。

双方のビデオにおける態度が対照的であると感じないだろうか。Appleが投入した次世代の主役はiPhone 5sだ。しかしiPhone 5sはiPhone 5とほぼ同じデザインを踏襲している。すなわち、Iveがハードウェアのみに関わり、ソフトウェアのデザイン面に関わるようになる前に生み出されたものであるのだ。

つまり、IveがiPhone 5を生み出す時点からiOSのデザインに関わっていたのなら、きっとiPhone 5をこのようにデザインしただろうというものが、まさにiPhone 5cであると思うのだ。昨年冬の組織改編から、より広い範囲でのデザインを担当するようになり、それでIveは思うままのデザインを実現してきたのではないだろうか。

「iPhoneというのは“エクスペリエンス”を提供するものです。そして“エクスペリエンス”は、ハードウェアとソフトウェアの生み出すハーモニーにより提供されるものです。ハードウェアとソフトウェアをより一体化することにより、さらに素晴らしい“エクスペリエンス”を提供していきたいと考えているのです」と、Iveはビデオ中で語っている。ハードウェアおよびソフトウェアのデザインを一手に引き受ける責任者としての発言であり、その責任者がiPhone 5cを世に問うているわけだ。

今年の夏、WWDCにてiOS 7がはじめてお目見えしたとき、そのカラフルなパレットUIに皆が驚いたものだった。しかし、長くApple製品を使っている人(あるいは長くAppleおよびIveに注目している人)は、初代iMacを思い出し、確かにこれもAppleないしIveのやり方だと納得したのだった。13種類のカラーバリエーションを用意して、Apple再生に大いに役立った。まさにカラーこそAppleのウリとなっていたのだ。

確かにIveはそれからしばらく、プラスチックからユニボディのアルミニウム(Iveの口調で言えばアリュミナムのように聞こえるだろうか)へと路線を変更していった。しかしそういう時代を経て、Iveは原点に戻ってきたのではないかと思うのだ。芸術家が、異なる時代を過ごすようなものとも言えるだろう。

ソフトウェア面にも関与できる立場となり、今ならば、色彩を一層活用できると判断したのだろう。ますます思いのままの「エクスペリエンス」を提供できるようになるからだ。

「一貫性のあるデザインとは、形状、素材、そして色合いなどのミックスによって生まれるものです。それぞれが関係しあって、お互いを求める関わりあいの中でプロダクトが成立するのです」とIveは言っている。Iveの上司でありまた仕事仲間でもあったスティーブ・ジョブス曰く、デザインというものは表面的なものではなく、あるいは見かけだけのものでもなく、実は機能面に強く関わっているのだとのことだった。そしてこうしたデザインを行うためにはハードウェアとソフトウェアの双方に関わる必要がある。IveはiPhone 5cにおいて、その地位を獲得し、そして理想を実現したわけだ。

しかし、果たしてこのiPhone 5cは中国やインドといった、普及途上国での売り上げを伸ばすのに役立つのだろうか。おそらくさほど役に立たないに違いない。実は、廉価なiPhoneを途上国に売り込むのが目的だというのは、何もわかっていないレポートによるミスリードなのだ。プラスチック素材であることを見て、なるほど新興国用の廉価版iPhoneだと騒ぎ立てたのだが、実はAppleの目的はそこにはない。

iPhone 5cは、iPhone 5に代わるものとして登場してきているのだ。Appleは、4Sの販売は続けるものの、iPhone 5は店頭から引き上げることになっている。Iveは、自分でデザインしたソフトウェアの入れ物としてのハードウェアをデザインし、iPhone 5にとってかわるiPhone 5cに自分の思いのたけを詰め込んだのだ。

iPhone 5cを投入したことで、Appleは「前年モデル」などよりもはるかに魅力的な(販売助成値引きして99ドルという、手に入れやすい価格)モデルを提供できるようになった。また、デザイン面でほとんど変更のないiPhone 5とiPhone 5sが(色こそ違うものの)混乱を招くような自体も避けることができる。すなわちiPhone 5cの投入はまさに良いことずくめな話なわけだ。

但し、テック系の「専門家」や、ウォール・ストリート方面には、Appleの選択を「良いことずくめ」とはみない人も大勢いる。そうした人はともかく「安いiPhone」を期待していたのだ。また、キーボードを登載したiPhoneの登場を待ち続けている人もいるらしい。

Appleは、ライバルに強いられて何らかの行動をとるといったことのほとんどない企業だ。周りの動向を気にしてばかりいては、戦略を見失うことになる。Appleは常に自らの戦略を大事に育んできた。もしAppleが「安い」iPhoneを出せば、Appleが収支報告で利益率の低下をアナウンスするまではAppleを「評価」するのだろう。そうした「評価」を受ける「イノベーション」は、実のところ誰も得をしない選択であるのだ。

もちろんAppleも、中国などの新興市場を無視しているわけではない。Tim Cookはなんども繰り返して新興市場に言及している。しかしAppleは、自分たちがここぞと思ったタイミングで、自分たちが良いと思うプロダクトを投入するだけだ。もしかするとそれは新興市場の獲得という面でみれば遅すぎる行動になるかもしれない。しかしそれはまだ評価すべき時ではないだろう。ともかく、iPhone 5cが新興市場向けの安価なデバイスというわけではないことは明らかだと思うのだ。

iPhone 5cは「Jony IveのiPhone」とでも言うべきデバイスだ。色彩豊かで、そして美しく、何らかの代替物としてではなく、プラスチックの魅力を前面に押し出したデバイスだと言える。

「ハードウェアとソフトウェアがお互いに高め合ってひとつのデバイスとして結晶しているのです」。

原文へ

(翻訳:Maeda, H)

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