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「日本でうまくいったことは、ぜんぶ外れた」、ネット企業海外進出の成功と挫折

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12月3日〜4日に京都にて開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Fall Kyoto(IVS)」。1つ目のセッションは「グローバルで活躍するプロフェッショナルの条件」がテーマ。インフィニティ・ベンチャーズ共同代表パートナーの小林雅氏がモデレーターを務める中、indeed CEO&Presidentの出木場久征氏、グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長 青柳直樹氏、PARTY Creative Director/Founder 川村真司氏がそれぞれの海外進出の状況について語った。

日本でうまくいったことはことごとく外れた

グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長 青柳直樹氏

グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長 青柳直樹氏

小林氏がまず3人に尋ねたのは海外進出での苦労話。青柳氏は「まず、日本でうまくいったから米国でもワークすると思ったことは、ことごとく外れた」と振り返る。ソーシャルゲームが好調だったグリー。だが同社が日本で手がけてきたゲームやそのマーケティングノウハウといった成功の体験やパターンというのがほとんど通用しなかったという。同社が米国進出した2011年といえばグリーが強かったブラウザゲームからスマートフォンにプラットフォームが変わる過渡期。さらにはビザの取得や人材採用などのさまざまな課題があり、ビジネスの違いを学ぶまで1、2年かかったそうだ。

indeed,Inc. CEO&Presidentの出木場久征氏

indeed,Inc. CEO&Presidentの出木場久征氏

出木場氏はリクルートの出身で現在は同社が買収したindeedのCEOを務めている。当初indeedのファウンダー2人に出会ったのが「まるで恋だった」と、振り返る。そこで、本来(買収元である)リクルートという会社を紹介するというよりも、自身がどんなことをやってきたか、またどんなことをやりたいか。さらにファウンダーらが何をやりたいのかを話したのだそうだ。

そういった会話からはじめた結果、(ロックアップの外れる)買収後2年でファウンダーも従業員もやめることなく共に働いている状況なのだという。「『お前はどんなマジックを使ったんだ』なんて周囲に聞かれる」(出木場氏)

事業面だけでなく、そんな人材面での成功もあった一方で苦労したのは英語。出木場氏は、本人曰く「『オマエコレタベルカ』というレベル」の英語だったのだそうだ。そこで英語のレベルを上げるための勉強をするのではなく、現状の英語でどう経営できるかを考えるようになったそうだ。「『お前とはこの数字でこれをやって』と任せた(コミットメントを求めた)」(出木場氏)。

出木場氏は米国は日本以上にレポートラインを重視するとも語ったが、青柳氏もこれに同意し、さらに「部下とのワンオンワンでの会話や、『握り』が重要」と語る。ただ一方で青柳氏は、日本的なマネジメントにもチャレンジしたそうだ。買収先の会社では、約200人の社員全員との個別面談をしたこともあるという。「半年かかった。最初は非効率だとも言われたが、それによって徐々に味方が増えて、『いろいろ教えてやるよ』という人が出てきた」(青柳氏)。そして何より、成果が出ることで会社の状況が変わったそうだ。「成果が出ると(社員は)ついてくる。逆に出ないということ聞いてくれない。成果が出てからの2年は比較的楽だった」(青柳)

PARTY Creative Director/Founder 川村真司氏

PARTY Creative Director/Founder 川村真司氏

川村氏のPARTYはニューヨークと日本に少数精鋭のチームを置いているが、「みんなで決めていく」ということを重視しているそうだ。特にニューヨークの拠点は設立して1年未満。マネージングパートナーといった立場でなくとも、ある程度の判断に参加してもらい「オーナーシップを作り、DNAを育てているところ」(川村氏)だそうだ。ただ川村氏本人はデザイナーであり、マネジメントに向いていないのでビジネスディレクターが必要だという意識があるとした。

リーガル、HR、バックオフィスの重要性

ここで小林氏が「仁義やリーガルといった点で何か問題があったのか」と尋ねる。

出木場氏と青柳氏は、パテントトロール(特許やライセンスを持ち、権利を侵害する企業から賠償金やライセンス料を得ようとする企業の蔑称)について触れた。出木場氏曰く「ハイパーリンクをクリックすればウェブサイトが遷移する」というネットの仕組みとしては「当たり前」なレベルのパテントを持った会社を法律事務所が買収し、訴訟を起こすというようなケースも有るという。

実際に両氏も裁判を経験し、ほぼ勝ってきたという状況だそうだが、この経験を踏まえて、「うまく行ったのはHR(人材)とリーガル、バックオフィスを雇えるようになってから。それらのバイスプレジデントが揃って、やっと組織と数字に集中できるようになった」(青柳氏)そうだ。indeedについても、「7月にHRのヘッドを雇えた。CxOを採用するには、CEOが口説かないといけない。そうなるとカタコトのCEOだとめちゃくちゃ不安になるじゃないですか。それがやっとちゃんと出来るようになってきた」(出木場氏)と語る。

ピカピカ人材を獲得するコツは?

ここで会場とのQ&Aとなったが、その一部を紹介する。会場からの質問は「ピカピカの人材を採用するコツは」というもの。これに関して青柳氏は、進出した地域にコミットしていると伝えることだという。

社員数人でサンフランシスコに拠点を立ち上げたグリー。青柳氏は採用の際に「今サンフランシスコに住んでいる。成功するまで帰らないし、失敗したらクビだろう」と語って、自身が現地で「ハシゴをはずさない」ということをアピールしたそうだ。また後任となった現地のマネージャーについても出会ってから1年半かけて関係を構築したこと、周囲から「グリーに行くことがいいオポチュニティになる」と思ってもらうようにするということも重要と語った。出木場氏もローカルへのコミット、またミッションの共有なども重要だと語る。

川村氏も創業者が現地にコミットしていることは大事だとしながら、PARTYはクリエイティブエージェンシーという特殊性もあって「面白いものを作れているかどうかしか評価されない」と語った。クリエイティブ系の人材は自らが作ったものを見てPARTYに来るので、何よりもアウトプットが大事だとした。

青柳氏の折り返し地点は「2年前のサンクスギビング」

最後に小林氏は3人に世界に出る人たちへのメッセージを求めた。川村氏は「とりあえず出てから考えよう」と語る。目的があって、ノウハウも持っているからなんでやらないのかとなる。失敗したら失敗したで日本があるのだから、何よりまず飛び込んでみるべきだという。

青柳氏は、ちょうど2年前に米国で事業をいくつかやめて、社員にも辞めてもらうことになった時期を振り返る。その時期はサンクスギビングということもあり、街で先週まで社員だった人間が家族と歩いていた時に表現できない気持ちになったという。「そこが折り返し地点。そこから絶対成功してやろうとなった。最初は『まず行ってみる』ということで良かったが、買収では300億円くらい使って、社員を雇っている。そんな責任をもって今がある」。そう青柳氏は語った。

そして新ためて世界に出る意味について「マーケットは凄く大きい。こんな僕でも出来ましたというのがメッセージだ。日本の調達環境は良い、バブルとも言われるがこれをどう使うか。ここで出たアドバンテージ、キャピタルを是非グローバルに使ってもらいたい。いちボランティアとしてアドバイス、サポートしたい」(青柳氏)

出木場氏は「心意気というのは世界共通言語。『これがしたいんだ!』というのは分かり合える。『日本の良い物を世界に出す』という考え方もあるが、やっぱりネットビジネスやってるなら世界で勝負することはこの先10年考えると避けて通れない。だからやるなら早くやった方がいい」と語った。