Bitcoin送金サービスの起業入門

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本人に代わってプレゼントを選んでくれるキュレーションサービスのSpoil

[筆者: Luis Buenaventura]

編集者注記: Luis Buenaventuraは、bitcoinの送金サービスを行っているRebit.phのファウンダでプロダクト担当。同社のオーナー企業はフィリピンのSatoshi Citadel Industriesだ。

国際的な送金業務の扱い額の総額は年間4300億ドルと言われているが、bitcoinがこの産業に与える影響についてはさまざまな議論がある。しかし暗号通貨の最大のメリットは、言うまでもなく、お金を送ることをメールと同じぐらい簡単にできることにある。

そのことが新興市場にもたらす効果は、とてつもなく大きい。たとえば、この市場を構成する国々がbitcoinの利用で実現する送金手数料の節約額は、それらの国の教育予算の額よりも多い。しかし、こんな大言壮語以上に重要なのは、まだほとんど未整備に近いbitcoin送金サービスの、実践的な実装だ。

数字

弊社はフィリピンで操業しているローカルな零細企業だが、フィリピンそのものは送金の額が世界で三番目に大きい国だ*。その額は2013年が260億ドル、2014年の推計が275億ドルで、毎年着実に10億から20億ドルぐらいずつ増加している。フィリピンに次ぐメキシコは2013年に230億ドルを送金したが、最近は合衆国の住宅市場の低迷により減少している。〔*: フィリピンは国外への出稼ぎ労働者がとても多く、出稼ぎ先から本国の家族など宛てに送金される。〕

メキシコとフィリピンは共に、アメリカ合衆国が最大の送金元国だが、全送金額の98%が合衆国からというメキシコに対し、フィリピンでは合衆国からの比率が30%強にすぎない。

詳しく言うと、合衆国からとされている送金額のうち10億ドル近くは、実際に合衆国からの送金ではなく、中東からの送金が合衆国にあるフィリピンのノストロ銀行勘定を経由して送られてきたものだ。250万あまりのフィリピン人が、そのための口座を保有している。さらに今では、カナダ、マレーシア、オーストラリア、日本、イギリスなど世界のおよそ40か国に、それぞれ1万人あまりのフィリピン人の銀行口座がある。

そこで、正確に言うと、メキシコはメキシコ合衆国間という単一の送金回廊に依存しているのに対し、フィリピン人は複数の国の複数の回廊に依存している。送金総額三位、四位のフィリピン、メキシコに対し、一位、二位はそれぞれインド(710億ドル)と中国(640億ドル)だが、この二国の送金状況もフィリピンに似ている。

前提

弊社のような小さなbitcoinスタートアップが、Western UnionやMoneyGram、あるいはRemitlyをすら打ち負かすことは不可能だが、市場の小さな特定部分に対して魅力的なサービスを提供していくことはできる。よく言われるようにスタートアップは、“問題を自分が解決できる最小の問題に絞り込む”ことが重要だ。

また、現時点では通貨としてのbitcoinは市場性があまり良くないため(Bitreserveは別として)、短時間決済というその利点にのみ注目すべきだ。多くのスタートアップは、複数の国に支社支店を持ったり、複数の国で事業を展開するために必要な法的要件や規制へのコンプライアンスを達成することが困難だ。しかしbitcoinが、そんな状況を飛び越えさせてくれる。

そして、送金を頻繁に行う移民〜出稼ぎ労働者などは、暗号通貨にもブロックチェーンにも、そして未来の金融革命にも無関心な人が多いと思われるが、簡単に迅速、安価に送金ができるサービスには関心を示すだろう。

以上を前提とした場合、どんなbitcoin送金ビジネスを構築すべきだろうか?

レシピ

フィリピンのRebit(弊社)やインドネシアのArtaBit、アフリカのBitPesaなどを、“ラストマイルの”*bitcoin送金サービスと呼ぼう。これらのサービスは海外からbitcoinを受け取って、ペソやディナールやシリングに換え、それを国内のさまざまな送金方法を使ってサービスの受益者に引き渡す。受益者は、そのお金がbitcoinで送られてきたことを知る必要はない。でも送金者が安い送金方法を使ったことは、察するだろう。お金を受け取る人はbitcoinの市場価格の変動リスクとは無縁だ。リスクにはサービス側が完全に対応する。〔*: ラストマイル, last-mile, エンドユーザに至近、エンドユーザに接している部分。エンドユーザまでの最後の1マイル。〕

こっちはラストマイルに特化しているので、ほかの国々のbitcoin起業家たちを招待することによって、非公式の回廊が築かれる。香港の顧客は香港ドルをbitcoinに変換してラストマイルサービスへ送りたい、と考える…香港現地の起業家はそのためのサービスを提供することによって、ほどほどの利益を得ることができる。

実は、こういうことはすでに、自然に起こりつつある。香港のBitsparkや合衆国のAlign Commerceなどを初期の例とする“オンランプ”(入り口)企業は、その国の法定通貨を窓口で受け取り、そのキャッシュをバックエンドでbitcoinに変換、そしてそれをフィリピンやインドネシななどなどのオフランプ(出口)〜ラストマイルへ送金する。

こんな地味なサービスのどこが“金融革命”だ?!、と思われるかもしれない。でも、ここで起きていることをよーく見てみよう。世界各国の小企業には、海外との正式なパートナーシップもないし、相互契約も信用関係もない。しかしそんな企業でも、自分たちの顧客のために、国境をまたぐ決済をリアルタイムでできるのだ。これまでそれは、ACH、SWIFT、PayPalといった中央集権的な仲介サービス(コストの高いサービス)がなければ不可能だった。

しかしこのように説明してしまうと、あまりにも単純な過程に見えるだろう。銀行の人ならすぐに、“HKD -> BTC -> PHP”(フィリピンペソ)を理解する。それは現在の標準である“HKD -> USD -> PHP”と何ら変わらない。ドルが、もっと身軽で現代的な通貨に変わっただけだ。

しかし実際には、ここにはもっといろいろな側面がある。

仕組み

基本的には、bitcoin送金スタートアップは要するにブローカーだ。

オンランプ(on-ramps)の事業では、大量のbitcoinにアクセスしてそれらを買わなければならない。bitcoinをオンデマンドで買うことが、変動リスクを避けるための唯一の方法だ。過去12か月の動向が実証しているのは、暗号通貨を備蓄することは健全な金融戦略ではない、ということだ。

ローカルに預金もできて手数料の安い取引所の存在が重要だ。合衆国ではCoinbaseとCircleが筆頭、ヨーロッパではBitstampとKraken、オーストラリアではCoinjarとIndependent Reserve、シンガポールはItbit、中東にはIgot、などなどがある。

オフランプ〜ラストマイルでは、bitcoinを法定通貨で買ってくれるバイヤーが、十分な数必要だ。bitcoinの相場が右上がりならそれは簡単に実現するが、ここ数年は逆方向に動いている。

毎日の送金額が数百BTC(500以下)ぐらいで、顧客に恵まれているブローカーなら、手早い店頭売りで、小さな利益をあげられる。あるいは、とんとんぐらいにはなる。しかしもっと大きな額を扱うようになると、自動化売買ボットで国際的な取引所と対話し、変動リスクを避ける必要がある。

多くの場合、オフランプの方がずっと難しい。オンランプは、良い銀行があり、bitcoinの流動性も良い先進国で営まれることが多いが、オフランプは往々にして、bitcoinのコミュニティが成熟していない国で必要とされる。でも根性のある人にとっては、これは問題というよりも機会だろう。なぜなら、ラストマイルの送金サービスは今後最大の成長が望める分野だからだ。今すでにフィリピンとインドネシアだけでも、50以上の司法単位(≒国)から送金を受け取っている。そういう個々の内向き回廊がオンライン化されるたびに、bitcoinの流入量も急増する。

またオフランプサービスは、その国のさまざまな送金方法に接続する必要がある。たとえばフィリピンは、ATMよりも質屋の数が多い。だから質屋の方が銀行よりも換金の場所として頻繁に利用される。インドネシアでは、銀行と郵便局の組み合わせが、人びとの好む方法のようだ。

インドには、地方の隅々にまで浸透しているハワラ(hawala)という非公式の送金システムがあるので、現金化は宝石店でも旅行代理店でもどこでもできる。インドのbitcoin送金ビジネスが今後、ハワラのブローカー的になるのか、それとも銀行や郵便局のようなフォーマルな形になるのか、見守っていたい。

法律

送金ビジネスは“Money Transfer Operator”(送金–または振替–事業者)に分類され、免許制になっている国が多い。免許取得の費用は国によってまちまちで、合衆国では州別の免許制なので50州全部取ろうと思ったらおよそ50万ドルの出費を覚悟しなければならない。CoinXは、自社の免許取得の現状を誇らしげにホームページのトップに置いている。そのほかの国を見ると、安いのは一部のASEAN諸国の数万ドル、対して中東は100〜200万ドルだ。

マネーロンダリング対策や顧客確認要件は国によって少しずつ違い、またそういう法律に適合するためのコンプライアンス費用が、エンドユーザが払う料金を左右することもある。顧客確認(KYC, Know-Your-Customer)を、クラウドサービスとして提供しているところもあり、それらの料金はかなりリーズナブルだから、コスト的に使いやすい(IdentityMindはbitcoinスタートアップにも力を入れている)。KYCの要件は、厳しい国、緩い国、いろいろだから、担当のお役所に相談するのがいちばんだ。

私たちは今、マラソンのスタートラインに立っている。そしてそのゴールには、全世界で420億ドルの送金手数料の節約がある。

どの国にも、お互いゆるやかに結びついて、互いにあらゆる面で相互運用性のあるbitcoin送金ブローカーたちがいることを、想像してみよう。そのそれぞれが、グローバルなネットワークの上でオンランプとオフランプ両方のサービスを提供しているなら、それはまさに、大型化して完全にリブートしたハワラだ。

そのために、これまでのような中央集権的な仲介業は要らない。各企業が自律的で、bitcoinによる決済をリアルタイムで行う。それでもWestern Unionはなくならないだろうが、bitcoinが無視できない存在になることは確実だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))