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TechCrunchへの掲載は100万円――スタートアップがこんなPR会社と付き合う必要はない

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少し前の話だが、とあるPR会社の営業マンが成長中のスタートアップ企業に以下のような提案を持ってやってきたそうだ。

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こういった営業の提案自体はよくある話。ただその提案資料には成果報酬(媒体で放送されたり、記事が掲載されたりすることで報酬を支払う)で日本経済新聞とワールドビジネスサテライト(WBS)が180万円、日経ビジネス、ダイヤモンド・オンライン、東洋経済オンラインなどが150万円、ITmedia、CNET Japan、ITProなどが100万円と、具体的な金額が並んでいた。TechCrunchも100万円なのだそうだ。380万円で4社掲載のパッケージプランもある。

お金を払えばあなたの手掛けるサービスが記事になります!お手軽!素晴らしい!――そんなわけがない。PRノウハウのないスタートアップがこんな提案を受け入れるのはやめたほうがいい。

複数のPR会社が「高い」と答える価格設定

そう思う理由は大きく2つあるのだけれど、まずは価格だ。複数のPR・広報関係者にこれらのプランについて聞きまわったのだけれども、誰もが一様に「高い」と声を揃えた。中には「この価格でやれるなら、今頃大金持ちですよ」なんて笑って語るPRの会社のスタッフもいた。

もう1つ、やめたほうがいいと思った理由がある。この提案書にロゴが掲載されている媒体数社の「中の人」に話を聞いてみたのだけれど、そもそもこの提案を持ってきたPR会社のことを知っているという人がいなかったのだ。

ちなみに提案書に名前のあったテレビ番組、ワールドビジネスサテライトのサイトには次のような注意書きが掲載されている。

最近、「ワールドビジネスサテライト」の制作会社を名乗り、番組に取り上げるよう計らうので一定の費用を払え、という売り込みをする会社がある、との情報が寄せられました。「ワールドビジネスサテライト」を始めとする報道番組は、あくまで報道番組の視点から番組が独自に取材対象の選定にあたっており、当社や番組制作会社が取材対象者から金銭を受け取って番組を制作することはありません。

まずはプロダクトへ注力すべき

僕はPR会社も広告代理店も否定しているつもりはないし、そもそもメディアビジネスとは切っても切れないものだと思っている。ただスタートアップが冒頭のようなPR会社を使うべきでないと言いたいのだ。

成果報酬ということだし、いくら関係者が高いと言おうがこれが「スタートアップを対象にした詐欺である」なんてことはないだろう。だからといって、媒体と接点のないPR会社に対して言われるままに数百万円を払い、1回限りになるかもしれない掲載実績を作ろうなんて思わないで欲しい。例えばTechCrunchにアプローチしてくれるのならば、サイト上のタレコミ欄からコンタクトを取ってくれればいい。タレコミは1円もかからない。

そんなことよりもまずスタートアップが注力すべきなのは、世の中に求められるいい企画、いいプロダクトを作ることだ。まずはプロダクトありき。そうすればうんざりするほど取材依頼も来るだろうし、ユーザーだって就職希望者だって集まってくる。

定量的な成果を求められるPR会社の悩み

この記事を書くまでに、提案書の内容をもとにかなりのPR・広報関係者に話を聞いてきた。その中では、今PR会社(特にオンラインメディアをカバーしている部隊だ)が抱えている悩みも知ることになった。

実はここ最近、クライアントがPR会社に対して、掲載媒体数やその数字をもとにした「広告費換算でいくら」というような定量的な成果を求める傾向が以前にも増して強くなっているのだそうだ。ようはPR会社も、「関係性を作るがどうかよりも、媒体に掲載されてナンボ」。そんな注文が来るのだという。特にマーケティング部門がお金を出す場合にこの傾向が強いのだとか。そりゃあ部署の役割としても、PRと広告とを同じように考えるのだろう。「広告費換算」なんて言葉でPRを語る人もいるのだけれど、さまざまな媒体のさまざまな枠が広告としてどれくらいの価値があるかで考えられていたりする。

こういうクライアントのニーズに対して、あるPR会社の役員は「特定の媒体に出すことだけを求められる場合、『PRとは何か』という話をし、特定の媒体だけに露出することが価値になるかよく話してからでないと案件を引き受けない」と語る。また別のPR会社のスタッフは、「記事広告やネイティブアドを発注するような、広告代理店的な動きを求められることがあるのは事実。だが結局はクライアントのニーズありき。ビジネスとしては正しいかも知れない」なんていう愚痴をこぼした。ほかには「あの媒体の○○という枠は、いくら払えば大体出せますよ」なんて生々しい話も聞いた。また別の関係者は「PR会社もクライアントも、パブリシティとパブリックリレーションズの違いを理解していないのではないか」と嘆いた。そんな背景もあって、冒頭のような提案が出てきたのかも知れない。

スタートアップのPRはどうすべきか

では優れたプロダクトを作り、いよいよ大々的にPRをする、という必要性が出てきたときにはどういうことをすればいいのか?「いいやり方」のヒントが見つかるコンテンツをいくつか紹介しておく。

まずは米国TechCrunchの記事だ。紹介しているサービスは日本ではまず関わりがないが、この中で筆者のRomain Dilletは「スタートアップについて誰なら興味をもってくれそうか、それをまず見つける。そして、短い、おいしそうなメールを送るのだ」なんて言っている。これはまさにそのとおりだと思う。TechCrunch Japanでもサイト上から投稿できる「タレコミ募集」のメールはチェックしているし、僕はソーシャルメディアでも声をかけてもらうのも歓迎だ(とはいえ最近はメッセージの洪水に流されそうになっていることもある)。

また、Impress Watchの編集記者を経て現在CerevoでPRを担当している甲斐祐樹氏のブログも非常に参考になると思う。これはプレスリリースを出す際のコミュニケーションについて書いたものだが、オンラインメディアとPRの両方を経験している同氏のエントリーは非常に具体的だ。参考にできるスタートアップも多いと思う。僕もスタートアップ向けに何度かPRの話をしたことがある。

工数はもちろんかかるが、タダでできる施策だっていくらでもある。スタートアップでPRを考えるなら、まずそんなところから始めればいい。そしていよいよPR会社などに依頼するときは、掲載実績ばかりをうたうようなところでなく、長いスパンでの戦略を共に考えられる文字どおりの「パートナー」を見つけて欲しい。

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