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モナーコインは暗号通貨のiモードとなるか? 新Bitcoin取引所「Zaif Exchange」がオープン

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Bitcoinと国産暗号通貨のモナーコインを扱う日本向けBitcoin取引所の「Zaif Exchange」(ザイフ)が今日オープンした。一般的な取引所で0.1〜0.5%の手数料が発生するのに対して、手数料ゼロをうたう。日本円を入金すると暗号通貨との取引が行えるほか、暗号通貨と日本円での両方で引き出しができる。

サービス自体は2014年7月にBitcoinウォレットサービスとしてテックビューロで生まれたが、2014年4月からBitcoin取引所として稼働していたEtwingsを買収してリブランドしたのが今回のZaifだ。再スタートにあたってロゴとシステムを刷新。暗号通貨管理の強化や、単位時間当たりの取引キャパシティを10倍に強化するなどしたという。

管理強化の面では、顧客が持つ暗号通貨残高のうち流動しないものについてはシステム内からは完全に隔離された状態で複数箇所に分けてオフライン保管したり、その再移動には権限を持った複数管理者の電子署名が複数段階に渡り必要となる内部統制制度を導入するなどした。また、取引所システムを複数層に渡って外部から遮断し、内部への侵入を防ぐセキュリティ環境を構築したという。

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運営元のテックビューロは、創業期のDeNAへの投資で知られる独立系VCの日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)を引受先とする総額1億円の第三者割り当て増資を実施したこともオープンと同時に明らかにした。NTVP代表の村口和孝氏といえば、日本の独立系VCの草分け的存在として広く知られているが、その村口氏はBitcoinのような暗号通貨の将来性について、次のように述べている。

「15年以上前から大きな地殻変化が起こるだろうと思っていた領域だが、暗号通貨が21世紀の通貨革命としての歴史的な役割を果たすことの重要性は明らかだ。今回投資したテックビューロは、暗号通貨に関する技術力サービス力が国際的で、グローバルな暗号通貨サービス領域で重要な役割を果たすことが出来る有力な一社と判断した」。

NTVPとしてサービス立ち上げを支援し、今後追加投資もするという。

テックビューロは2014年6月創業で、先端技術を研究開発する企業としてスタートしていた。これまでに、肉眼からは見えずにスマートフォンカメラから見える印刷技術のライセンス供与などを行ってきたが、今回の増資にともなって暗号通貨関連サービスの提供を開始した形だ。今後はZaifブランドで取引所のほかにも、ウォレットサービスや決済サービスなどを順次公開予定という。

開発やコンサルティング、ビジネスは周辺領域で

Zaifは日本での暗号通貨普及促進のために、手数料無料を少なくとも1、2年は続けるとしているが、収益モデルを何に据えているのだろうか? テックビューロ創業者で代表の朝山貴生氏がTechCrunch Japanに語ったところによれば、いま見えている方向性は2つあるという。

1つはBitcoin関連ビジネス、中でもシステム開発やコンサルティングの事業だ。もともと朝山氏はシリコンバレーで技術者チームを率いてクレジット決済サービスを提供していた経験があり、金融システムやセキュリティに明るい。数理モデルによる不正検知導入や、日本の金融事情に特化した不正対策も施し、国際的なマネーロンダリング対策、KYC(顧客確認)基準にも対応していくとしている。

Bitcoinのような暗号通貨を扱う上で出てくるセキュリティ上の課題は、従来と異なってくる。このためシステム開発、コンサルティングのニーズが大きくなると見ているという。例えば、暗号通貨では「盗む」といっても、実体に触れずに盗むということが起こっている。以前、Bitcoinで個人口座情報が漏洩するというセキュリティ事故があったが、これは初回の個人口座情報(楕円曲線による公開鍵・秘密鍵のペア)生成時に使われていた乱数発生アルゴリズムに欠陥があったためだった。この欠陥自体はBitcoinそのものの欠陥ではなく、実装依存のセキュリティ問題だが、現実問題としては多くのサービスで利用されているBitcoinデーモンに入っていたものだったので広く問題となった。

というような話を常時把握しておき顧客の資産を守る、その専門技術者集団とプラットフォームというのがテックビューロとZaifの役割ということだ。だから、手数料無料といってもAPIベースでのシステム利用以外が対象となっている。

システム開発ニーズとしては、Bitcoin 2.0と呼ばれる周辺領域の拡大も見込む。

Bitcoin 2.0は、Web 2.0に似た総称で、暗号通貨方式そのものの革新も含まれるものの、どちらかというと、Bitcoinのブロックチェーン技術の上に築かれつつある各種応用技術のことを指す。たとえばCounterpartyというサービスは、Bitcoinを通貨として企業が「上場」できる暗号通貨を使った株式資本市場だ。市場参加者は「暗号債権」の売買ができる。SmartContractは電子署名と暗号通貨を結び付ける試みで、たとえばBitcoinの所有者移動と物品の所有権の移動を紐付けるようなことをデジタルで行う枠組みを提供している。Bitcoinのような暗号通貨の普及の先には、これまでと違った金融テクノロジーや関連ビジネスが生まれる余地がある。

海外からの送金ゲートウェイとしてのニーズも

現在、日本向けのBitcoin販売所/取引所としてはbitFlyerQoinKrakenCoincheckBtcBoxなどがあるが、朝山氏によれば、まだ取引額は1日30001000BTC(現在のレートで約3000万円)程度にすぎない。仮に手数料が0.2%としても6万円で、これではビジネスの見通しは立たない。

日本ではMt.Gox破綻によるネガティブイメージや、そもそもの需要不足からBitcoinの普及は始まってすらいない。朝山氏によれば、米国でBitcoinユーザーの6割は非白人層で、これは出身国へ個人間国際送金する需要に応じて利用が伸びていることを示しているのだという。

Zaifでも直近では海外から日本への送金ニーズに一定の需要があるのではないかと見ているという。日本の金融機関とのつなぎ込みといったことは海外事業者や個人消費者には難しく、そのゲートウェイとしてBitcoinや取引所を使うというニーズだ。朝山氏は「2020年の東京オリンピックまでには、Bitcoinしか持たずに来日する外国人もいるかもしれませんよね」と、こうした可能性に言及する。

モナーコインは暗号通貨のiモードとなるか?

Bitcoinはインフレ懸念や財政政策の失敗から一国の通貨をBitcoinに切り替える、というような議論が出てくることもあるなど新興国で注目を集めている。一方で、日本のように通貨の安定性が比較的高い先進国では暗号通貨の利用は進んでいない。Mt.Gox破綻の背景にはBitcoinや暗号通貨と関係がないセキュリティ上の問題があったとされているが、Mt.Gox事件によって、特に日本ではBitcoin自体にネガティブイメージが付いたのは間違いない。

ボラティリティの高いBitcoin相場をTechCrunchでも一時期良くお伝えしていたし、暴落を伝えるたびに、それ見たことかという鬼クビ的ツッコミも多くあった。しかし一方では、初期Bitcoin賛同者が資産を1000倍とした例など「Bitcoin長者」も生まれていた。日本でBitcoinが広く紹介されるようになった2014年には、いわば祭りのあとだったので、こうした狂乱騒ぎを経験した日本人ユーザーはほとんどいないはずだ。

こうした状況から、朝山氏はモナーコインが一定の役割を果たすのではないかと見ているという。

モナーコインは日本で生まれた国産暗号通貨の1つだ。ほかにも国産暗号通貨は複数あるものの、海外の取引所で継続的に扱われていて、かつマーケットキャップが1億円を超えている唯一の暗号通貨だという。これを書いている間にも相場は上がっていて、ここ数日で3億円を超えたという。

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コミケのような特定領域で利用されることがあるなど、現在のモナーコインには4、5年前のBitcoinに似たところがある、というのが朝山氏の指摘だ。「モナーコインが今後たどるプロセスが、過去のBitcoin黎明期の成長フェイズを日本人ユーザーに体験して頂ける良い機会であると考え、それが世界で最も流通しているBitcoinの日本での普及につながる」と考えているという。

インターネットや外界とは隔絶した環境で、2000年代前半にiモードが普及し、産業として発展したのと同様に、モナーコインという独自通貨が日本で広まる可能性もある。iモード同様に、恐らくモナーコインも今さらBitcoinを超えることはないだろうが、多地域で複数暗号通貨が併存した状態となるのか、その比率がどういうものになるのかなどは誰にも分からない。iモードがスマホの波に飲み込まれて消え去ったのと同じようにモナーコインが一時の徒花となるのかも分からない。朝山氏は「iモードのように寄り道してグッと戻ってくるという動きになるのかもしれない」と話している。

(Ken Nishimura / @knsmr