宅配クリーニングのバスケット、アパレルのクロスカンパニー子会社に—非IT企業による買収は「スタートアップの1つの道になる」

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インターネットを利用した宅配クリーニングサービス「BASKET」を運営するバスケットは、4月28日付けでアパレルブランド「earth music&ecology」などを展開するクロスカンパニーの100%子会社となった。クロスカンパニーによる取得価格は非公開。バスケット代表取締役社長の松村映子氏はBASKETの事業を継続すると同時に、クロスカンパニー執行役員として、同社のECやネット関連の新規事業にも携わる。

一度目の起業は2年以上サービスを続けても鳴かず飛ばずだったという女性起業家。二度目のチャレンジでは、元オプト代表取締役CEOの海老根智仁氏、元enish代表取締役社長の杉山全功氏、DeNA共同創業者で投資家の川田尚吾氏、Genuine Startupsが支援。創業わずか1年で、年商1000億円超のアパレル会社が買収するに至った。

 14歳で起業を決意、最初の起業で苦い経験

BASKETはネットを利用した宅配クリーニングサービスを展開。ネットで注文をして宅配業者が専用のボックスで衣類を引き取り。提携する工場でクリーニングを行い、最短5日でユーザーの元に届ける仕組み。料金はワイシャツで240円から。競合にはYJキャピタルやジャフコが出資するホワイトプラスの「リネット」などがある。

サービスを提供するバスケットの創業は2014年4月。それだけ見ればわずか1年だが、現在32歳の松村氏にとってこれは二度目の起業となる。BASKETはメディア等に露出せず事業を続けていたこともあって、僕も聞いてはいたもののサービスを紹介したことはなく、いきなり買収に関する取材をすることになるというちょっと珍しいパターンだった。

「中学生の頃から友人に頼まれたりして、服を自分でアレンジしたり、作ったりして売っていた」という松村氏。中高生のお小遣い稼ぎにこそなれど、当時はすべての作業を自分で行っていたためその規模は小さい。ものづくりはやはり組織で行わないといけない、と14歳で起業を決意したのだそう。

そして大学で情報工学を学び(そこでTaskRabbit風のクラウドソーシングサービスを立ち上げたがうまくいかなかったそう)、一部上場のコンサルティング会社に入社。IT関連企業のコンサルを4年ほど経験した上で退社。インキュベーションプログラム(松村氏は明言しなかったが、デジタルガレージグループのOpen Network Labだ)に参加したのち、2011年5月に元同僚など4人で女性向けサブスクリプションコマース(定期購入)を展開するスタートアップを立ち上げた。

当時は雨後の竹の子のごとくサブスクリプションコマースが登場し、消えていったのだけれども、松村氏の会社もその1つ。冒頭でも触れたとおり鳴かず飛ばずで「全然うまくいかなかった」(松村氏)のだそう。

「サブスクリプションコマースの仕組みは、事業者がテーマに合った商品をキュレーションし、それを仕入れて送るというもの。だが知名度のないスタートアップでは仕入れにも苦戦した。そうなると結局、仕入れ元にもユーザーにもバリューを提供できるような仕組みを作ることができなかった。同時に私もCTOも開発ができるのだが、そのせいで『作ること』に専念しすぎて、苦手だったことに手が回っていなかった」(松村氏)。3年目には事業は休止状態となりコンサルティングや受託で収益をあげていたが、その会社をいったんクローズ。CTOと2人でバスケットを設立するに至った。

ネットとリアルの融合に期待—著名起業家らが支援

最初にバスケットの創業時に出資したのは、前回の起業でも資金を提供していたGenuine Capital(当時はMOVIDA JAPANのインキュベーション・シード投資部門だった。その後投資部門が独立したかたちになっている)と川田氏。Genuine Capitalの伊藤健吾氏は「MOVIDAの頃からシード投資をしてきたが、数を打って起業家をあおるだけでなく、失敗しても二度目のチャレンジをするのであればその支援をしたいと思っていた。バスケットはその1社だった」と語る。

前回の起業でも投資を検討したという川田氏は、「(ネットで完結するのではなく)リアルに寄ったサービスが伸びると考えていた。そして大きな会社がそのポータルになりたがっている状況。ITが分かるチームが生活関連向けのサービスを手がけるのであれば、いいモノが作れるのではないかと思った」とした。2人の投資から数カ月して杉山氏、海老根氏からも資金を調達をした(金額に関しては非公開だが、「2人のチームで1年ほど事業を回せる程度」(伊藤氏)とのこと)。

杉山氏もザッパラス、enishの前にはリアルビジネスも経験しており「ネットとリアルの融合というのは絶対出てくると思っていたがそこで求められるのは泥臭さ。それをやってのけるチームだと思った」と語る。実際提携するクリーニング工場は電話で問い合わせたり、ネットに情報がないので松村氏が直接出向いたりして口説いていったのだそう。

海老根氏は「経営者と支援者で投資を決めた」と語る。投資メンバーはそれぞれ旧知の仲だが、「杉山氏、川田氏の能力、そして伊藤氏のアドバイスセンスも優秀。さらになにより自分を含めて異能であること」と評価。またバスケットについては、「経営者チームに技術があり、素直でひたむき。すでに競合は1社いるが、市場を築ける可能性が十分にある」(海老根氏)と語った。

クロスカンパニーでは、今年度からアパレルに加えてインターネット・ライフスタイル事業へ参入し、生活周辺サービスのプラットフォームを作るとしている。BASKETもそのプラットフォームの一翼を担うことになると同時に、クリーニングにとどまらないビジネスを展開するとしている。

非IT企業の買収は「スタートアップの1つの道」

今後も継続して事業に携わるだけでなく、クロスカンパニーグループのIT部門を統括する立場になるという松村氏。子会社化という選択肢について、次のように語った。

「黒字化はまだこれからだったが、ユーザー数やリピート数は伸びているし、起業経験もある投資家陣にはいつも学ばせてもらっている。正直言うとこのままでも伸ばせた自信はある。でも二度目の起業、それも1年でお声がけ頂いたというのは、スタートアップとしては1つの道になると思う。今後はITではない会社がITスタートアップを買収することもあると思う」(松村氏)