コラム

「○○の死」は、殆どが過大評価

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編集部注: Raghav Sharmaは、消費者とファイナンシャルアドバイザーを結びつけるサービス、GuideVineの共同ファウンダー・CEO。彼は起業家、コンサルタント、銀行家でもあった。

テクノロジーの世界では誰もが何かの「死」を熱望する。

少なくとも、それがメディアを見てわかることだ。ゲーミフィケーションの「死」、ケーブルの「死」、ビデオゲームの「死」、デトロイト自動車産業の「死」。不動産業、自動車ディーラー、現金、紙 ― すべてがビジネス殺人の被害者だ。いくら気取ってみても、人は殺戮が好きだ。

人はカオスも好きだ。他に、あの「破壊」妄想をどう説明できようか?TechCrunch自身、毎月30以上の新しいスタートアップを紹介しており、その多くが既存業界を「破壊」したいと考えている。TechCrunch Disruptイベントは言うに及ばず。誰かに「あなたはその分野を破壊している」と言うことは、今や最大級の賞賛だ。

それはどうもありがとう、もちろん私は既存の企業を破壊します!ぶち壊すのを手伝ってくれますか?

しかし困ったことがある。CEOとして、私は何かを死に追いやることを目的としていない。たしかに、優れたスタートアップは人に汗をかかせる。非効率と時代遅れと自己満足の中で、山ほどの混乱と反省を生みだす。

しかし最終的には、もうかる業界を破壊して作り直すのではなく、成功するスタートアップは業界を近代化し、既存企業を向上させつつ顧客体験を根本的に改善することを目指す。私は、犠牲者が出ないと言っているのではないが、何かを殺すことより、人々にとって物事を良くすることに集中したいだけだ。そして、最終消費者に良い情報とその情報を使う力を与えることは、現行の業界を根本的に改善する結果につながる。

われわれが「破壊」と言う時に、何を本当に言いたいかを考えてみるとよい。1995年にClayton Christensenがこの用語を提唱した時、彼が意味したのは、全く新しい市場を創造し、最終的に従来のテクノロジーに取って代わるイノベーションを意味していた。旧来の企業は顧客と売上を失い、フェードアウトする。

しかし、昨年New Yorker誌でJill LeporeがChristensenの理論に反論した。彼女は、Christensenのフレームワークは、後に誤りであることが証明される事例のいいとこ取りをした結果だと指摘した。Leporeによると、イノベーションを起こせないとされる企業は、テクノロジーに遅れないために自社製品を漸進的に変化させることに何の問題もないという。

何を信じるにせよ、真の破壊は驚くほど稀である。Netflix(Blockbusterの冥福を祈る)、Craiglist(三行広告お疲れさま)、WhatsAppとSkype(さらば国際通話カードと「長距離電話」)等、実際に従来品を置き換えたものの隠には、消えていったあるいは伝統的業界と共に走っている何百というスタートアップがいる。現行プレーヤーたちは、死んでいく代わりに、あらゆるリスクをスタートアップにとらせた後、彼らのアイデアを使って自分たちの製品を近代化するために、リバースエンジニアリングをしたりスタートアップを丸ごと買収して生き延びる。

では、現在最も魅力的で最も評判が高く世界を変えているスタートアップについて話そう。Twitterはジャーナリストに取って代わらなかった。情報を従来と異なる補完的な形で流布しただけだ。TruliaとZillowは不動産屋に取って代わらなかった。人々が既に絞られた候補リストを持って不動産屋へ行き、その先を専門家に任せるようになっただけだ。誰も自動車ディーラーを「破壊」しなかった。TrueCarとAutoTraderは、消費者が車を比較しやすくし、ディーラーは車に適切な価格をつけ在効庫を管理するのが楽になった。

殆どのウェブサイトで、PayPalは従来のクレジットカードと共に選択肢の一つとして置かれている。ClassPassは消費者がフィットネスクライブを試せるようにしただけだ。ZocDocは人々を認定医師とつなぐ。そして、Seamlessが唯一破壊した物は、玄関ドアの下に差し込まれるテイクアウトメニューのチラシだ(私はこれを永遠に感謝している)。

Elon Muskでさえ、Teslaでデトロイトに取って代ろうとしていないと言っている。彼は電気自動車を標準化して遍在化させるためにデトロイトの助けを必要とすることになる、だから特許をオープン化した。おそらく彼はよくわかっている。

苦闘しているのは、本気で業界全体をぶち壊そうとしている会社のようだ。金融サービスほどそれが真実であるところはない。昨年Accentureは伝統的銀行に対して、若い顧客の10人に4人は無店舗銀行に切り換えるつもりだと緊急警告を発したが、それはネットに強く流行に敏感な顧客10人のうち6人は乗り換えないことを意味している。

あらゆる顧客にとって本当に必要なのは、シームレスなテクノロジーであり、銀行はそれを自分で作ることもパートナーから手に入れることもできる。そのパートナーはDwollaかもしれない。Dwollaは規制のハードルを越えて今月BBVAと提携し、 Simpleの後に続いた。

あるいはLearnVestは、資産運用業界を破壊する大計画を持っていた。同社は先月、LearnVestのテクノロジーを活用したいNorthwestern Mutualに買収された(ただし私は彼らがNorthwestern Mutualの現在インフラをオーバーホールするつもりはないと思う)。

Andy Rachleffは、昨年彼のロボアドバイザー会社、Wealthfrontに「破壊」の御旗を掲げ、思いを語る文章の中で40回以上この単語を使った。現在ロボアドバイザー上位10社で90億ドル以上を管理しているのはすばらしい成果だ。しかし残念ながら、2012年に全世界で管理されていた64兆ドルには、まだほど遠い ― 1%の100分の1である。
造反するロボ・アドバイザーたちの管理パーセンテージが伸びるのを見る機会はおそらくないだろう。なぜなら先月Schwabは、驚くほどWealthfrontそっくりのサービスを提供開始したからだ。WealthfrontのCEO Adam NashはSchwabを非難し、彼らの料金体系は倫理にもとると主張した。しかし、それは真の問題から目をそらしているように思える。SchwabはWealthfrontを「破壊」し返しただけだ。

ロボアドバイザーの死という声が聞こえてくるのも当然だ。

こと重要な、熟練を要する仕事、例えば家探し、信用管理、健康管理、薬の処方、そしてもちろん資産管理については、生きていて息をしている専門家の役割が必ず存在する。

スタートアップが社会に大きな価値をもたらさない、と言っているのではない。新たなテクノロジーは足手まとい ― 顧客サービスが悪く、水準以下の商品を提供し、効率の悪い会社 ― を廃業に追いやり、最も価値があり有用な会社を残す。重要なのは破壊ではなく、消費者のために業界を近代化して価値を高めることだ。

これを業界再構築の機会と促え、無邪気に業界をぶち壊そうなどと考えないスタートアップは、長い目で見て可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook