途上国の近代化と合衆国の社会安定の両方にとってファイナンシャル・インクルージョンがきわめて重要…両者の‘学び合い’も

次の記事

Appleが新設した「Chief Design Officer」にJony Iveが就任

[筆者: Matt Homer]
編集者注記: Matt HomerはDigital Financeのチームでポリシーとパートナーシップ関連の業務を指揮し、USAIDの、インドにおけるファイナンシャル・インクルージョン投資を手がけた。その前には連邦預金保険公社(FDIC)の政策スタッフとして、モバイルの金融サービスの、ファイナンシャル・インクルージョンへの貢献について評価する、などの業務を担当した。

ファイナンシャル・インクルージョン(financial inclusion, 制度的に安全な金融サービスの大衆的可利用性を世界中の人びとに提供すること)は、途上国のための最優先の政策課題と見なされることが多い。そして、それは正しい: それは、経済的なセキュリティを、それをもっとも必要としている人びとに提供し、それらの人びとが住む地域の経済的な発展を増進するからだ。

しかし、ファイナンシャル・インクルージョンは途上国だけの課題ではない。たしかに、途上国における問題の深刻さは、合衆国国内の問題の比ではない。世界銀行のGlobal Findex Databaseの最新アップデートによれば、このところ大きな進歩が見られるものの、途上国では未だに、成人の46%が銀行などの金融機関や、モバイルのそれらサービスの、口座を持っていない。

これを、連邦預金保険公社(FDIC)の推計と比べてみよう。合衆国では、この国家的な保険に加入している‘安全な’金融機関の口座を持っていない世帯は、全世帯のわずか7.7%だ。しかし、出自別に見れば、黒人世帯の約20%、ヒスパニックの18%が‘無銀行’(unbanked)の人たちだから、国内の問題も決して小さいとは言えない。

所得別に見れば、年収15000ドル未満の世帯では27%以上が無銀行だ。これらの人たちは、金融サービスから排除されていることが、大きな負担になっている。正規の安全な銀行等ではない闇金に、高い利息や手数料を払ったりしているからだ。

世界中の銀行が、ガーナでもインドでも合衆国でも、貧困層にサービスを提供しても利益につながらない、と見なしている。しかし、今およびこれからの時代は、モバイルフォーンが、ファイナンシャル・インクルージョンを全世界的に拡大する費用を大幅に下げるための、武器になりうるのだ。Bill GatesのGates Foundationの最近の研究によると、デジタル決済は途上国における金融サービスの取引費用を最大90%減縮する(従来の1/10になる)。合衆国のDieboldの推計では、銀行の支店で4ドル25セントかかった取引費用が、オンランではわずか20セントになる(約1/20)。

世界各地の、金融システムから疎外されている人たちも、同じように感じている。FDICの調査と世界銀行のGlobal Findex Databaseは共に、金融サービスの可利用性と信頼性、それらの所在や資金量に関する、彼らの懸念を強調している。

国によって状況はさまざまだが、合衆国と途上国が互いに学び合える部分はとても大きい。

金融サービス/金融機関を利用できない途上国の人たちも、機能もデザインもベーシックな携帯電話は一般的に持っている。これらの電話機によるお金のやりとりは、通常、5つ以上のステップを要する。しかも、ぶざまなUSSDシステムは、突然タイムアウトになることが多い。しかしこれらの国々でも今はスマートフォンが普及途上にあり、GSMの業界団体GSMAは、2020年までにスマートフォンによるインターネット接続が新たに29億増える、と予測している。

合衆国のフィンテック(fintech, financial+technology)企業たちは、スマートフォンのカメラや位置機能、P2P通信、リッチなインタフェイスなどを利用したイノベーションにより、金融サービスを利用できる人びとを全世界的に拡大しようとしている。

また開発途上国は、モバイルによる金融サービスを展開していくとき、金融システムに対する一般的社会的な信頼や、その信頼に見合うだけのリスクの低さに関して、合衆国の歴史や現状から学ぶべきかもしれない。合衆国ではたとえば、銀行〜金融機関の経営危機に際しての、多面的な消費者保護策が法律で定められている。だから合衆国の一般消費者は、安心して銀行を利用できる。新しい銀行に新しい口座を開くときにも、不安がない。

一方、合衆国側が学ぶべきは、インドやガーナなどで進められている新しいタイプの銀行への、営業許可の交付だ。それをよく理解することは、合衆国の利益にもつながる。それらの、“決済銀行(payments banks”とも呼ばれる金融機関は、消費者のお金を預かって、基本的な取引サービスを提供する。銀行サービスとしての内容は限られているし、クレジットも発行しないが、そのぶん、新規参入やコンプライアンスの遵守が容易だ。そこで、これらの国では短期間で、金融業が新たなサービス業として栄えることになる。

さらにまた、合衆国が着目すべきは、決済システムをより速くしようとする、これらの国々の取り組みだ。料金〜代金の支払や家族への送金などがリアルタイムで迅速にできれば、その電子的な金融サービスのエコシステムに加わる消費者も増える。途上国は家計に余裕のない人びとが圧倒的に多く、諸請求の済度もきわめて短いから、スピーディーなトランザクションが非常に重要だ。豊かな国のように、決済が数日遅れてももいいや、という業者や消費者は、とても少ないのだ。

今の合衆国には、国としてのファイナンシャル・インクルージョン政策がない(オバマ氏は健康保険の大衆化では頑張ったが)。でも、そのほかの多くの国には、すでに国の施策がある。ファイナンシャル・インクルージョンを国の政策プライオリティの上位に置くことによって、政府機関と独立の監視機関と民間部門との協力体制が強化される。世界銀行のFindexのデータは、ファイナンシャル・インクルージョンが国の施策になっている国では、無銀行の人たちの解消のペースが、そうでない国の2倍速い、と指摘している。上述のように、合衆国にもそれを必要としている人びとが多くいることを、忘れてはならない。

国によって状況の差はあるものの、デジタル技術は、これまで疎外されていた何十億もの人たちに、金融サービスの門戸を開く可能性を持っている。国による違いを超えたグローバルな課題としての、ファイナンシャル・インクルージョンに取り組むことによって、私たちはお互いから学んでいけるための道を、見つけることができる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa